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エルアーラ遺跡編
episode436
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「ザカリーさんが見つけられないなら、そうするしかないようですね」
同意するようにメルヴィンは頷くと、胸のペンダントヘッドを握って目を閉じ、意識を凝らした。
アサシンの気配すら見抜ける爪竜刀の持つ力を借りて、見えない気配を探る。
(気配は……二つ、だけ)
悪意や敵意といったものはない。けれど、明確な目的をもって自分たちを攻撃する、強い意思のようなものは感じられた。
「床の外に投げ出されると大変ですから、この部屋を出たほうがいいですね」
「けどよ、階段を登ってる最中に襲われたら、やっぱ危ねえぞ」
「全員で登ったら危険ですから、手間だけど、一人一人行きましょう。オレが護衛します」
「そうしてもらったほうがよさそう。目で捉えられないほど早い物体なら、サイ《超能力》の防御も吹っ飛ばされそうなかんじに」
ルーファスは情けなさそうに眉を寄せた。魔法の防御も同様かとカーティスも肩をすくめた。
「お願いしますメルヴィン」
「任せてください。まずはカーティスさんから」
2人が階段へ向かおうとしたその瞬間、
「リッキーさん!」
「えっ」
血相を変えたメルヴィンが、フェンリルに乗るキュッリッキの傍らに駆け寄った瞬間、メルヴィンの身体がくの字に曲がり、勢いよく後方へ吹っ飛んだ。そして宙に浮いたまま身体が床を離れ、外に投げ出された。
「メルヴィン!!」
その時、ライオン傭兵団の皆は、信じられないものを見た。
メルヴィンを追いかけるようにフェンリルの背から飛び降り、そのまま宙に身体を踊らせたキュッリッキの、その背に大きく広がったものを。
「バカっ!!」
舌打ちしながらヴァルトは翼を広げると、落下していく2人を追って、床を蹴ってダイブした。
みぞおちに喰い込むようにして激突してきた見えない敵。あまりの衝撃にメルヴィンは目の前が暗転し、一瞬意識が飛んだ。
鈍い重みがゆっくりと去って、詰まっていた息が吐き出されると、ようやく意識を取り戻してメルヴィンはハッとなった。
足が床から離れ、宙に身体が浮いている。そして背中から落下していることに気づいた。
(このままじゃ…)
底に吸い込まれるように落ちる恐怖と焦りに、全身に冷たい感触が駆け抜けていった。
これまで何度か死に直面する場面に見舞われたことはあるが、諦めることは絶対にしなかった。諦めなければ、切り抜け打開できるという自信と希望が、そこには必ず見えていたからだ。しかしこの状況では、さすがに希望を抱く気がおきそうもない。
似合わぬ覚悟を決め、目を閉じかけたその時。
「えっ?」
宙に投げ出すように力の抜けた手をしっかりと握られて、再び目を見開いた。
「リッキーさん!?」
泣きそうな、それでいて必死な面持ちのキュッリッキが、小さな手で右手をしっかりと握り締めているのだ。
(まさか彼女まで落とされたのか?)
見えない敵の気配二つ、自分が身体で受け止めたはずだった。それなのに何故。
メルヴィンはもう片方の手でキュッリッキの腕を掴み、自分に抱き寄せ、ほっそりとした背中に手を回して抱きしめた。そしてこの時ようやく、それが目に飛び込んできて驚愕した。
少し落下スピードが緩まったように感じられたが。
「翼……?」
同意するようにメルヴィンは頷くと、胸のペンダントヘッドを握って目を閉じ、意識を凝らした。
アサシンの気配すら見抜ける爪竜刀の持つ力を借りて、見えない気配を探る。
(気配は……二つ、だけ)
悪意や敵意といったものはない。けれど、明確な目的をもって自分たちを攻撃する、強い意思のようなものは感じられた。
「床の外に投げ出されると大変ですから、この部屋を出たほうがいいですね」
「けどよ、階段を登ってる最中に襲われたら、やっぱ危ねえぞ」
「全員で登ったら危険ですから、手間だけど、一人一人行きましょう。オレが護衛します」
「そうしてもらったほうがよさそう。目で捉えられないほど早い物体なら、サイ《超能力》の防御も吹っ飛ばされそうなかんじに」
ルーファスは情けなさそうに眉を寄せた。魔法の防御も同様かとカーティスも肩をすくめた。
「お願いしますメルヴィン」
「任せてください。まずはカーティスさんから」
2人が階段へ向かおうとしたその瞬間、
「リッキーさん!」
「えっ」
血相を変えたメルヴィンが、フェンリルに乗るキュッリッキの傍らに駆け寄った瞬間、メルヴィンの身体がくの字に曲がり、勢いよく後方へ吹っ飛んだ。そして宙に浮いたまま身体が床を離れ、外に投げ出された。
「メルヴィン!!」
その時、ライオン傭兵団の皆は、信じられないものを見た。
メルヴィンを追いかけるようにフェンリルの背から飛び降り、そのまま宙に身体を踊らせたキュッリッキの、その背に大きく広がったものを。
「バカっ!!」
舌打ちしながらヴァルトは翼を広げると、落下していく2人を追って、床を蹴ってダイブした。
みぞおちに喰い込むようにして激突してきた見えない敵。あまりの衝撃にメルヴィンは目の前が暗転し、一瞬意識が飛んだ。
鈍い重みがゆっくりと去って、詰まっていた息が吐き出されると、ようやく意識を取り戻してメルヴィンはハッとなった。
足が床から離れ、宙に身体が浮いている。そして背中から落下していることに気づいた。
(このままじゃ…)
底に吸い込まれるように落ちる恐怖と焦りに、全身に冷たい感触が駆け抜けていった。
これまで何度か死に直面する場面に見舞われたことはあるが、諦めることは絶対にしなかった。諦めなければ、切り抜け打開できるという自信と希望が、そこには必ず見えていたからだ。しかしこの状況では、さすがに希望を抱く気がおきそうもない。
似合わぬ覚悟を決め、目を閉じかけたその時。
「えっ?」
宙に投げ出すように力の抜けた手をしっかりと握られて、再び目を見開いた。
「リッキーさん!?」
泣きそうな、それでいて必死な面持ちのキュッリッキが、小さな手で右手をしっかりと握り締めているのだ。
(まさか彼女まで落とされたのか?)
見えない敵の気配二つ、自分が身体で受け止めたはずだった。それなのに何故。
メルヴィンはもう片方の手でキュッリッキの腕を掴み、自分に抱き寄せ、ほっそりとした背中に手を回して抱きしめた。そしてこの時ようやく、それが目に飛び込んできて驚愕した。
少し落下スピードが緩まったように感じられたが。
「翼……?」
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