453 / 882
エルアーラ遺跡編
episode434
しおりを挟む
「こんな近未来的な遺跡探検は初めてのことですが、遺跡には侵入者撃退トラップなどがつきものですから、そうした類の何かで合ってると思います」
「巨大な丸い岩が転がってきたり、大量の水が洪水のごとくとか火攻めとか、そういう永遠のワンパターンよりも質の悪い……」
タルコットが肩をすくめ、苦笑があちこちから漏れる。
「キューリさんはまた幻めいたものが追いかけてきたら、躊躇せず撃退してください」
「はい」
「それから、ルーファスはちょっと辛そうなのでマリオン、ベルトルド卿に連絡を」
「もおやってるんだけどぉ、なんか繋がらないの~」
「?」
「取り込み中なのかなぁ……ウンともすんとも言わなくってぇ」
「ソレル国王などを討伐に行っているから、遮断しているんですかねえ。まあ、タイミングを計らいながら続けてください」
「ふぁい」
「この場から離れましょうか」
多少落ち着きを取り戻したルーファスは、ギャリーに手を借りながら歩き出した。
カーティスはもう勘レベルで歩き進んだ。そのうち首謀者やベルトルドたちがいる場所へ出て合流できればと、シビルとランドンに索敵はさせている。そしていつ幻が襲ってきてもいいように、キュッリッキも意識を集中させていた。
自分たちは傭兵だから、普段から鍛錬は怠っていないし体力も蓄えている。長丁場になることもあるし、数日は緊張しっぱなしでも耐えられるように精神面も鍛えていた。だが、先ほどのように明らかに悪意ある幻覚などに追い掛け回されては、体力的にも精神的にも多大な負担を強いられる。サイ《超能力》を使うルーファスですらあの状態だ。
延々白い通路が続くその先に、白く装飾のない巨大な扉が現れた。
「なぁに、これぇ~?」
高さは3メートルほどもある。押して開くのか謎だが、マリオンはヴァルトとガエルに向き直ると、ニヤッと意味ありげに笑った。
「この如何にもってぇ扉、すんごぉ~っく重そうだけどぉ、ヴァルトとガエルのどっちが力持ちなんだろ~?」
ヴァルトの眉とガエルの鼻が、ぴくっと反応した。
「こんなクマヤローに俺様が負けるわけがねえ!!」
拳同士を叩き合わせてヴァルトが吠える。瞬時に闘気が立ち上った。
「口先だけのひょろいヴァルトには荷が重い」
不敵な笑みを浮かべ、ガエルが挑発しながら腕を組んだ。
ヴァルトとガエルは扉の前に仁王立ちすると、顔を見合わせ火花を散らした。
たきつけ完了、と表情に書いて、マリオンがみんなにブイサインをする。やれやれと疲れた笑いが静かに漂った。
「さすが女狐……」
とてもか細い声でランドンが呟く。
「まずは俺様からだ!!」
ジャンケンで勝ったヴァルトが扉に両手をつき、両腕に盛りっと力をこめて力強く押した。
「うっわわっ」
その瞬間、扉はカーテンのような軽やかさでするっと開き、勢い余ったヴァルトは顔面から盛大にすっ転んだ。
「………」
腕を組んだままガエルは内心、
(俺じゃなくてよかった………)
と安堵し、胸をなでおろした。
「巨大な丸い岩が転がってきたり、大量の水が洪水のごとくとか火攻めとか、そういう永遠のワンパターンよりも質の悪い……」
タルコットが肩をすくめ、苦笑があちこちから漏れる。
「キューリさんはまた幻めいたものが追いかけてきたら、躊躇せず撃退してください」
「はい」
「それから、ルーファスはちょっと辛そうなのでマリオン、ベルトルド卿に連絡を」
「もおやってるんだけどぉ、なんか繋がらないの~」
「?」
「取り込み中なのかなぁ……ウンともすんとも言わなくってぇ」
「ソレル国王などを討伐に行っているから、遮断しているんですかねえ。まあ、タイミングを計らいながら続けてください」
「ふぁい」
「この場から離れましょうか」
多少落ち着きを取り戻したルーファスは、ギャリーに手を借りながら歩き出した。
カーティスはもう勘レベルで歩き進んだ。そのうち首謀者やベルトルドたちがいる場所へ出て合流できればと、シビルとランドンに索敵はさせている。そしていつ幻が襲ってきてもいいように、キュッリッキも意識を集中させていた。
自分たちは傭兵だから、普段から鍛錬は怠っていないし体力も蓄えている。長丁場になることもあるし、数日は緊張しっぱなしでも耐えられるように精神面も鍛えていた。だが、先ほどのように明らかに悪意ある幻覚などに追い掛け回されては、体力的にも精神的にも多大な負担を強いられる。サイ《超能力》を使うルーファスですらあの状態だ。
延々白い通路が続くその先に、白く装飾のない巨大な扉が現れた。
「なぁに、これぇ~?」
高さは3メートルほどもある。押して開くのか謎だが、マリオンはヴァルトとガエルに向き直ると、ニヤッと意味ありげに笑った。
「この如何にもってぇ扉、すんごぉ~っく重そうだけどぉ、ヴァルトとガエルのどっちが力持ちなんだろ~?」
ヴァルトの眉とガエルの鼻が、ぴくっと反応した。
「こんなクマヤローに俺様が負けるわけがねえ!!」
拳同士を叩き合わせてヴァルトが吠える。瞬時に闘気が立ち上った。
「口先だけのひょろいヴァルトには荷が重い」
不敵な笑みを浮かべ、ガエルが挑発しながら腕を組んだ。
ヴァルトとガエルは扉の前に仁王立ちすると、顔を見合わせ火花を散らした。
たきつけ完了、と表情に書いて、マリオンがみんなにブイサインをする。やれやれと疲れた笑いが静かに漂った。
「さすが女狐……」
とてもか細い声でランドンが呟く。
「まずは俺様からだ!!」
ジャンケンで勝ったヴァルトが扉に両手をつき、両腕に盛りっと力をこめて力強く押した。
「うっわわっ」
その瞬間、扉はカーテンのような軽やかさでするっと開き、勢い余ったヴァルトは顔面から盛大にすっ転んだ。
「………」
腕を組んだままガエルは内心、
(俺じゃなくてよかった………)
と安堵し、胸をなでおろした。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる