片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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エルアーラ遺跡編

episode432

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 ふうっと疲れたような息を吐き出し、アルカネットは恨みがましいリュリュの文句は黙殺した。そしていまだに眠り続けるベルトルドを見おろし、元気に上を向いている暴れん棒に殺意のこもった目を向けた。

 ――全くこの男はっ!

「さあ、いい加減起きなさい!!」



 顎の無精ひげをさすりながら、シ・アティウスは感心したように頷いた。

「あの3人も、本当にやることなすこと面白いですね」

 大きなモニターには、裸体から煙を噴いて痙攣しているベルトルドと、両手を腰にあてて、ベルトルドを見おろしているアルカネットが映っていた。



「俺を殺す気かお前は!!」

「死ねばいいんですよ」

 本気でキレたベルトルドの怒号に、底冷えするようなアルカネットがピシャリと言った。

「あれだけ弄られていて、よく目が覚めませんね。寝ると本当に中々起きないんですから、その体質どうにかなりませんか」

「何を弄られてたんだ?」

「私の電撃を食らっても、元気に上を向いている粗末なモノですよ」

 指差されて、ベルトルドは「ん?」と下を向く。

「…………………なんで勃ってる?」

 逆に不思議そうに聞かれて、アルカネットは呆れたように首を振った。そして背後でニヤニヤ笑っているリュリュを指差す。それを見たベルトルドの表情(かお)が、瞬時に引きつった。

「こらあああリュー!!」

「アハッ、ンもー、今頃気づいたのン?」

 アルカネットが怖くて浴室の外で中の様子を見ていたリュリュは、ベルトルドの股間に熱っぽい視線を注いで「うふふ」と笑った。途端、ベルトルドの暴れん棒が静かにおさまりだす。

「ああん、勿体無い」

 リュリュが心底惜しそうに見つめているものだから、ベルトルドは手近にあったタオルを急いで腰に巻いた。

「見るなエッチ!!」

 チイッと大きく舌打ちすると、リュリュは「つまんなーい」と言って室内の方へ戻ってソファに座る。あまり座り心地のいいソファではなく、拗ねたように唇を尖らせた。

 広大な生活ブロックの、ケレヴィル職員が寝泊りに使っているスタッフ専用住居区である。そのため簡素な家具が適当に置かれただけの、広さだけは充分ある質素な部屋だった。

「こんだけツマンナイ部屋だから、ケレヴィルの連中はフェルトの高級宿に息抜きに行くのねん」

「減給してやるからそんな贅沢はもうできん」

 むっすりした顔で浴室からベルトルドが出てくると、アルカネットは衣服を並べたテーブルを指した。

 着替えのため腰に巻いたタオルを取ろうとして、ベルトルドは尻に邪な視線を感じて、肩ごしにリュリュを睨む。

「見んなっ!」

「だってぇ」

 すぼめた口で指をくわえながら、リュリュの視線はベルトルドの尻に釘付けにされている。

「さっさと着ればいいだけのことでしょう。仕上げはしますから、とにかく着てしまいなさい」

 アルカネットに促されて、ベルトルドは拗ねた顔のままタオルをはずすと、急いでパンツをはいた。

「ところでリュリュ、今更聞くのも間抜けですが……、一体何しに来たんです?」

 そういえば、といった表情でアルカネットが訊ねる。

「あ、そうそう、ちょっとタイヘンなのよ」

 ベルトルドを弄り倒すほうへ気持ちが集中していて、ここへきた本来の目的をすっかり忘れていたリュリュは、アルカネットに訊かれてようやく気づいた。

「えーっとなんだっけ、Encounter Gullveig System? とやらが、ライオンの連中をロックオンしたらしくって、今すぐ機能を停めて欲しいのよ」

 シャツのボタンをとめていたベルトルドの手が一瞬止まり、

「そういうことは先に言わんか、馬鹿もん!!!!」

 リュリュの脳天に、ベルトルドのゲンコツが落下した。
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