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エルアーラ遺跡編
episode429
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「ルー、お前、守備範囲広くなったな」
「巨大デブ専もイケるようになったのか」
ギャリーとザカリーが、硬直しているルーファスの両肩をそっと掴んだ。
「お前好みの巨乳だしな」
その言葉にハッと意識を取り戻したルーファスが、大慌てで首を横に振った。
「確かにオレは巨乳が大好きだ! 爆乳もバッチコイだけど、あれはすでに乳と他の部位の脂肪の境が判んないじゃないか~~~」
ルーファスは四つん這いになると、悔しそうに床を拳で叩いて泣き叫んだ。
「おっぱいがデカけりゃいいってもんじゃないんだ! オレの理想とするのはあんなのじゃないんだ! 選ぶ権利はオレにだってあるっ!!」
魂の叫びを吐き出して、ルーファスはメソメソと泣き出した。
その様子に皆が揃って溜息を吐き出し、床に座っていた者は立ち上がった。ガエルが無理矢理ルーファスを立たせる。
「まあ、心は一つですね」
カーティスが一言呟くと、皆床を蹴って肥満女とは逆の方向へ走り出した。
過去を振り返りながら、ルーファスはしみじみと語る。
女好きと言われるルーファスは、スレンダー美人だけが好みというわけではない。多少ぽっちゃりしていても、美人で可愛かったらオッケーだ。更に胸の大きさにもこだわりがあり、形と張りの良さにもこだわりがある。大きいだけじゃだめなのだ。
端正なルックスと愛嬌ある笑顔に優しい人柄で、少年期からモテなかったことはないほどモテた。おブスに対して邪険にしたりはしないし、好みじゃないからといって偏見はしない。その姿勢が女性全般から、好感的に受け取られているのだ。
女に不自由しない人生を歩いているが、望みもしない女から思いを寄せられることも多々あった。とくにハーメンリンナの宮殿騎士を勤めていた時代。身分の高い妙齢から高齢までの御婦人方からしょっちゅう誘われ、お手軽な恋愛ごっこを楽しむことができた。その中には美人もいれば、可愛らしい婦人もいた。そして、醜女も肥満もいた。
心を鬼にして断っても良かったが、醜女や肥満なご婦人に限って、断りにくすぎるご身分の高い人ばかり。
一夜のお相手をするのに、ルーファスは拷問される以上に最悪な気分で、だがいくら見た目がアレでも女性である。恥をかかせるわけにはいかないと、心を粉砕しながらしっかりと務めを果たした。
その時の経験上、もっとも最悪だった女性、ロヴィーサ・イルタ・エテラマキ男爵夫人に、迫り来るアノ肥満女はそっくりなのだ。
「いや、いくらなんでもデカすぎ!」
ルーファスの自画自賛を含む回想話に、ザカリーが裏手ツッコミを入れる。しかしルーファスは、走りながらゆるゆると首を横に振り続けた。
「確かに倍に膨れ上がっているが、アレはエテラマキ男爵夫人だ絶対……。ああ、思い出す……。勃たないところを気合で奮い勃たせて、ナントカ頑張ったんだオレっ」
握り拳にグッと力が入る。その時のことを思い出し、涙がとめどなく溢れた。
「お前の女性遍歴は、御大とタメ張れるぜ……」
「いやいや……ベルトルド様には及ばない」
「ルーさんフケツ」
キュッリッキの無垢でジトーっとした目に、ルーファスは焦って手を振る。
「そんなこと言わないでキューリちゃん! 昔の、若気の至りだからっ」
色んな事に疎いキュッリッキでも、ルーファスの話はなんとなく理解しているのだ。
「それにしても飽きずに追いかけてきますねえ」
シビルが困ったように言うと、キュッリッキは頷いてルーファスを振り返った。
「アレも燃やしちゃう?」
「そんな素っ気なく言わないでっ」
ルーファスはビックリして否定した。脂たっぷりでよく燃えそうだなあ、とこっそり思ったが。
「ルーを追いかけてきてるように見えるぞ。なんとかしろ色男」
さっきの仕返しとばかりに、ガエルがニヤリと言った。
「なんとかって言われてもなあ」
「巨大デブ専もイケるようになったのか」
ギャリーとザカリーが、硬直しているルーファスの両肩をそっと掴んだ。
「お前好みの巨乳だしな」
その言葉にハッと意識を取り戻したルーファスが、大慌てで首を横に振った。
「確かにオレは巨乳が大好きだ! 爆乳もバッチコイだけど、あれはすでに乳と他の部位の脂肪の境が判んないじゃないか~~~」
ルーファスは四つん這いになると、悔しそうに床を拳で叩いて泣き叫んだ。
「おっぱいがデカけりゃいいってもんじゃないんだ! オレの理想とするのはあんなのじゃないんだ! 選ぶ権利はオレにだってあるっ!!」
魂の叫びを吐き出して、ルーファスはメソメソと泣き出した。
その様子に皆が揃って溜息を吐き出し、床に座っていた者は立ち上がった。ガエルが無理矢理ルーファスを立たせる。
「まあ、心は一つですね」
カーティスが一言呟くと、皆床を蹴って肥満女とは逆の方向へ走り出した。
過去を振り返りながら、ルーファスはしみじみと語る。
女好きと言われるルーファスは、スレンダー美人だけが好みというわけではない。多少ぽっちゃりしていても、美人で可愛かったらオッケーだ。更に胸の大きさにもこだわりがあり、形と張りの良さにもこだわりがある。大きいだけじゃだめなのだ。
端正なルックスと愛嬌ある笑顔に優しい人柄で、少年期からモテなかったことはないほどモテた。おブスに対して邪険にしたりはしないし、好みじゃないからといって偏見はしない。その姿勢が女性全般から、好感的に受け取られているのだ。
女に不自由しない人生を歩いているが、望みもしない女から思いを寄せられることも多々あった。とくにハーメンリンナの宮殿騎士を勤めていた時代。身分の高い妙齢から高齢までの御婦人方からしょっちゅう誘われ、お手軽な恋愛ごっこを楽しむことができた。その中には美人もいれば、可愛らしい婦人もいた。そして、醜女も肥満もいた。
心を鬼にして断っても良かったが、醜女や肥満なご婦人に限って、断りにくすぎるご身分の高い人ばかり。
一夜のお相手をするのに、ルーファスは拷問される以上に最悪な気分で、だがいくら見た目がアレでも女性である。恥をかかせるわけにはいかないと、心を粉砕しながらしっかりと務めを果たした。
その時の経験上、もっとも最悪だった女性、ロヴィーサ・イルタ・エテラマキ男爵夫人に、迫り来るアノ肥満女はそっくりなのだ。
「いや、いくらなんでもデカすぎ!」
ルーファスの自画自賛を含む回想話に、ザカリーが裏手ツッコミを入れる。しかしルーファスは、走りながらゆるゆると首を横に振り続けた。
「確かに倍に膨れ上がっているが、アレはエテラマキ男爵夫人だ絶対……。ああ、思い出す……。勃たないところを気合で奮い勃たせて、ナントカ頑張ったんだオレっ」
握り拳にグッと力が入る。その時のことを思い出し、涙がとめどなく溢れた。
「お前の女性遍歴は、御大とタメ張れるぜ……」
「いやいや……ベルトルド様には及ばない」
「ルーさんフケツ」
キュッリッキの無垢でジトーっとした目に、ルーファスは焦って手を振る。
「そんなこと言わないでキューリちゃん! 昔の、若気の至りだからっ」
色んな事に疎いキュッリッキでも、ルーファスの話はなんとなく理解しているのだ。
「それにしても飽きずに追いかけてきますねえ」
シビルが困ったように言うと、キュッリッキは頷いてルーファスを振り返った。
「アレも燃やしちゃう?」
「そんな素っ気なく言わないでっ」
ルーファスはビックリして否定した。脂たっぷりでよく燃えそうだなあ、とこっそり思ったが。
「ルーを追いかけてきてるように見えるぞ。なんとかしろ色男」
さっきの仕返しとばかりに、ガエルがニヤリと言った。
「なんとかって言われてもなあ」
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