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エルアーラ遺跡編
episode428
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蜂の猛威も終わり、ライオン傭兵団はその場でしばしの休息をとったあと、動力部へ再び向かうことになった。のだが。
「当然現在地が判るわけがない!!」
握り拳を高らかに掲げて、カーティスはきっぱり迷いなく断言した。
その様子をしらーっと見つめながら「あーうん、そーよねー」といった皆の心の声を反映させた、無言の空気があたりを漂う。
ベルトルドからもらっている、簡素な地図を見ずに走り回っていたのだ。戻るにしても、どのくらい戻ればいいのか判らないし、これ以上時間をかけるとベルトルドとアルカネットが気づいて、容赦ない電撃の一つも降ってきそうだ。
「シビルに探してもらうのは?」
ランドンがぽつりと言うと、指名されたシビルが首を横に振った。
「動力部がどんなものかも判らないですし、生き物じゃないと思うから、ちょっと難しいかもー」
「そうなんだ」
うーん、と皆首をひねるがいい案が浮かばない。
「もーさぁ、素直に迷子になったあ~って言ってぇ、助けに来てもらおーよぉ」
お腹すいたしぃー! とマリオンが喚く。
「遺跡の中で遭難したってことで、それも致し方ないですか…」
あとで説教まみれになりそうですね、とカーティスは吐露した。
「すみませんがルーファス、お願いできますか」
苦笑を浮かべたカーティスに言われて、ルーファスは引きつった笑みを浮かべながら片手を上げて了解した。
「怒られそーになったら、きゅーりが責任をもって、おっさんたちを止めればいーんだ!」
フンッと立ち上がったヴァルトが、尊大に居丈高に吠えた。
「なんでアタシが責任もってなのよ」
「勝手に消えて俺様の背中に落っこちてきた罰だ!!」
盛大なふくれっ面でヴァルトを見上げ、キュッリッキは片眉をヒクつかせた。
確かに勝手に消えて――問答無用でユーレイに拐かされた――迷惑をかけたのは自分だが、落ちた場所にたまたまヴァルトが腕立て伏せなんぞしてたのが悪い。
「いいか! あのジジーどもは、きゅーりが甘えたら鼻の下が全開で伸びて人格が変わるから、キョーリョクしろってんだ!!」
ヴァルトはキュッリッキの両頬をつまむと、勢いよく横に引っ張った。
「いひゃいひゃらひゃひゃひへほ」
キュッリッキの反応が面白く、調子に乗ってヴァルトはぐにぐに両頬をつまんだまま引っ張って笑っている。
「もうそのくらいに……」
メルヴィンが慌てて止めに入った時である。
最初に気づいたのはペルラだった。
普段から寡黙派なので、驚いても悲鳴を上げることがない。大声を出すという行為にはトコトン無縁そうなのだが、そのぶん尻尾に感情が大きく反映される。
スレンダーなシャム猫人間のペルラが、珍しく全身の毛と尻尾をピーンと逆立てて、硬直した姿勢で通路の遠くを凝視していた。その様子に真っ先に気づいたガエルが同じように通路の遠くに目を向け、何とも言えない表情を浮かべて硬直した。
ヴァルトとキュッリッキのやり取りを見て面白がっていた他のメンバーも、ようやく気づいて、何事かと通路をみやった。ヴァルトとキュッリッキもつられて顔を向ける。
「ちょっ、なに……あれ?」
ザカリーがそそけだったように呻く。
ソレをなんと表現するか、といえば、人間の女、だろう。
豊満な四肢は酒樽を繋げたように分厚く、動くたびに肉が波打ち、輪郭が定まらない。
巨体という単語に収めるには倍くらい大きく、もはや人間の肥満サイズをゆうに超えていた。
顔もまた巨大なマシュマロのようにぶよぶよで、真紅に塗りたくった唇は分厚く、テラテラと輝いている。そして振り乱した赤毛はクリクリとパーマがかかっていて、肩のあたりでもつれていた。
その全身を包む衣服は黒いレースの下着上下のみ。垂れた肉に食い込んでパツンパツンだ。
女はゆっくりとした歩みでライオン傭兵団に近づいてきている。ひたと向けるその瞳は赤く情熱的で、視線をたどるとルーファスに向いているのが判った。
「当然現在地が判るわけがない!!」
握り拳を高らかに掲げて、カーティスはきっぱり迷いなく断言した。
その様子をしらーっと見つめながら「あーうん、そーよねー」といった皆の心の声を反映させた、無言の空気があたりを漂う。
ベルトルドからもらっている、簡素な地図を見ずに走り回っていたのだ。戻るにしても、どのくらい戻ればいいのか判らないし、これ以上時間をかけるとベルトルドとアルカネットが気づいて、容赦ない電撃の一つも降ってきそうだ。
「シビルに探してもらうのは?」
ランドンがぽつりと言うと、指名されたシビルが首を横に振った。
「動力部がどんなものかも判らないですし、生き物じゃないと思うから、ちょっと難しいかもー」
「そうなんだ」
うーん、と皆首をひねるがいい案が浮かばない。
「もーさぁ、素直に迷子になったあ~って言ってぇ、助けに来てもらおーよぉ」
お腹すいたしぃー! とマリオンが喚く。
「遺跡の中で遭難したってことで、それも致し方ないですか…」
あとで説教まみれになりそうですね、とカーティスは吐露した。
「すみませんがルーファス、お願いできますか」
苦笑を浮かべたカーティスに言われて、ルーファスは引きつった笑みを浮かべながら片手を上げて了解した。
「怒られそーになったら、きゅーりが責任をもって、おっさんたちを止めればいーんだ!」
フンッと立ち上がったヴァルトが、尊大に居丈高に吠えた。
「なんでアタシが責任もってなのよ」
「勝手に消えて俺様の背中に落っこちてきた罰だ!!」
盛大なふくれっ面でヴァルトを見上げ、キュッリッキは片眉をヒクつかせた。
確かに勝手に消えて――問答無用でユーレイに拐かされた――迷惑をかけたのは自分だが、落ちた場所にたまたまヴァルトが腕立て伏せなんぞしてたのが悪い。
「いいか! あのジジーどもは、きゅーりが甘えたら鼻の下が全開で伸びて人格が変わるから、キョーリョクしろってんだ!!」
ヴァルトはキュッリッキの両頬をつまむと、勢いよく横に引っ張った。
「いひゃいひゃらひゃひゃひへほ」
キュッリッキの反応が面白く、調子に乗ってヴァルトはぐにぐに両頬をつまんだまま引っ張って笑っている。
「もうそのくらいに……」
メルヴィンが慌てて止めに入った時である。
最初に気づいたのはペルラだった。
普段から寡黙派なので、驚いても悲鳴を上げることがない。大声を出すという行為にはトコトン無縁そうなのだが、そのぶん尻尾に感情が大きく反映される。
スレンダーなシャム猫人間のペルラが、珍しく全身の毛と尻尾をピーンと逆立てて、硬直した姿勢で通路の遠くを凝視していた。その様子に真っ先に気づいたガエルが同じように通路の遠くに目を向け、何とも言えない表情を浮かべて硬直した。
ヴァルトとキュッリッキのやり取りを見て面白がっていた他のメンバーも、ようやく気づいて、何事かと通路をみやった。ヴァルトとキュッリッキもつられて顔を向ける。
「ちょっ、なに……あれ?」
ザカリーがそそけだったように呻く。
ソレをなんと表現するか、といえば、人間の女、だろう。
豊満な四肢は酒樽を繋げたように分厚く、動くたびに肉が波打ち、輪郭が定まらない。
巨体という単語に収めるには倍くらい大きく、もはや人間の肥満サイズをゆうに超えていた。
顔もまた巨大なマシュマロのようにぶよぶよで、真紅に塗りたくった唇は分厚く、テラテラと輝いている。そして振り乱した赤毛はクリクリとパーマがかかっていて、肩のあたりでもつれていた。
その全身を包む衣服は黒いレースの下着上下のみ。垂れた肉に食い込んでパツンパツンだ。
女はゆっくりとした歩みでライオン傭兵団に近づいてきている。ひたと向けるその瞳は赤く情熱的で、視線をたどるとルーファスに向いているのが判った。
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