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エルアーラ遺跡編
episode427
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ハーメンリンナの地下通路で魔法を使った場合、通路に何か魔法で損傷をあたえると、即座に警報が盛大に鳴る。
もしこの遺跡が生きていたら、きっと同じように警報が鳴ると思われる。そうしたら隠密行動をしている意味が全くない。
眠らせたり、痺れさせたり、凍らせたり、風で飛ばしたりなど色々考えたが、膨大な数の蜂を全て魔法で巻き込めるか自信がなかった。それはシビルもハーマンも同じ意見で、いっそマリオンのサイ《超能力》の音波攻撃はどうかとなったが、遺跡に傷を与えそうだと言って却下である。
カーティスは鋭く目を眇める。
(――かくなるうえは、秘密兵器の投入しかない!)
「キューリさん、あなたの召喚の力でアレをどうにかこうにかお願いします!」
「えー」
丸なげキタコレ!と、ハーマンとシビルがひっそりと薄笑いを浮かべた。
懲りもせずにぶんぶん飛んで追いかけてくる蜂を振り返りながら、キュッリッキは細い顎に人差し指をあてながら、上目遣いで天井を見上げる。
(あれを一網打尽にできるものかあ………)
暫し考え込んだあと、キュッリッキはじっと後方に視線を固定させた。
黄緑色の瞳にまといつく、虹色の光彩が輝きを強める。
「偉大なる炎の巨人スルト、その炎の現身レーヴァテインをもって滅しよ」
蜂の大群に伸べられたキュッリッキの掌から、強く輝く紅蓮の炎が現れ、炎はまっすぐ蜂の大群に襲いかかって群れを飲み込んだ。
アルケラの巨人族のひとり、スルトの力のみを召喚したものである。
炎は漏らすことなく全ての蜂を高熱で焼き尽くす。炎に巻かれて動きが止まった蜂たちを、全員足を止めてまじまじと見入った。するとキュッリッキがふいに「あれ?」と不満そうな声を上げた。
「なんか、ヘン」
「どうしました?」
傍らにいたメルヴィンが、怪訝そうに首をかしげる。
「手応えがないの」
キュッリッキの呟きに、皆が改めて炎の中の蜂に目を向けた。
炎に包まれた蜂は、真っ先に羽根を焼かれて床に落ちるだろう。しかし床の上には焦げた蜂も灰も落ちていない。炎の中で徐々に輪郭を縮めていくだけだ。
「あの蜂、生き物じゃない」
「じゃあなんだよ?」
「アタシが知るわけないでしょ」
じろりと睨まれ、ザカリーは頬をぽりぽり掻いた。
キュッリッキは炎の中の蜂の輪郭が全て消えたのを確認して、スルトの炎をアルケラへ還した。
凄まじいほどの高温だっただろう炎は、微塵も遺跡に影響を与えていない。キュッリッキが対象外には一切威力が及ばないように、コントロールしていたからだ。
あれだけ勢いよく飛んできていた蜂の大群が全て消えてしまうと、安堵感と疲労から、ルーファスはへたりと床に座り込んでしまった。
「ちょーひっさっしぶりに全速で走った……」
それを見てマリオンとザカリーもその場に座り込んだ。静まり返った空間に、みんなのホッとするような吐息が静かに流れる。
「結局なんだったんだ、あの蜂は」
「ガエルがはちみつ食べ過ぎて呼び寄せた、でいんじゃね……」
「だからなんで、俺のせい」
もしこの遺跡が生きていたら、きっと同じように警報が鳴ると思われる。そうしたら隠密行動をしている意味が全くない。
眠らせたり、痺れさせたり、凍らせたり、風で飛ばしたりなど色々考えたが、膨大な数の蜂を全て魔法で巻き込めるか自信がなかった。それはシビルもハーマンも同じ意見で、いっそマリオンのサイ《超能力》の音波攻撃はどうかとなったが、遺跡に傷を与えそうだと言って却下である。
カーティスは鋭く目を眇める。
(――かくなるうえは、秘密兵器の投入しかない!)
「キューリさん、あなたの召喚の力でアレをどうにかこうにかお願いします!」
「えー」
丸なげキタコレ!と、ハーマンとシビルがひっそりと薄笑いを浮かべた。
懲りもせずにぶんぶん飛んで追いかけてくる蜂を振り返りながら、キュッリッキは細い顎に人差し指をあてながら、上目遣いで天井を見上げる。
(あれを一網打尽にできるものかあ………)
暫し考え込んだあと、キュッリッキはじっと後方に視線を固定させた。
黄緑色の瞳にまといつく、虹色の光彩が輝きを強める。
「偉大なる炎の巨人スルト、その炎の現身レーヴァテインをもって滅しよ」
蜂の大群に伸べられたキュッリッキの掌から、強く輝く紅蓮の炎が現れ、炎はまっすぐ蜂の大群に襲いかかって群れを飲み込んだ。
アルケラの巨人族のひとり、スルトの力のみを召喚したものである。
炎は漏らすことなく全ての蜂を高熱で焼き尽くす。炎に巻かれて動きが止まった蜂たちを、全員足を止めてまじまじと見入った。するとキュッリッキがふいに「あれ?」と不満そうな声を上げた。
「なんか、ヘン」
「どうしました?」
傍らにいたメルヴィンが、怪訝そうに首をかしげる。
「手応えがないの」
キュッリッキの呟きに、皆が改めて炎の中の蜂に目を向けた。
炎に包まれた蜂は、真っ先に羽根を焼かれて床に落ちるだろう。しかし床の上には焦げた蜂も灰も落ちていない。炎の中で徐々に輪郭を縮めていくだけだ。
「あの蜂、生き物じゃない」
「じゃあなんだよ?」
「アタシが知るわけないでしょ」
じろりと睨まれ、ザカリーは頬をぽりぽり掻いた。
キュッリッキは炎の中の蜂の輪郭が全て消えたのを確認して、スルトの炎をアルケラへ還した。
凄まじいほどの高温だっただろう炎は、微塵も遺跡に影響を与えていない。キュッリッキが対象外には一切威力が及ばないように、コントロールしていたからだ。
あれだけ勢いよく飛んできていた蜂の大群が全て消えてしまうと、安堵感と疲労から、ルーファスはへたりと床に座り込んでしまった。
「ちょーひっさっしぶりに全速で走った……」
それを見てマリオンとザカリーもその場に座り込んだ。静まり返った空間に、みんなのホッとするような吐息が静かに流れる。
「結局なんだったんだ、あの蜂は」
「ガエルがはちみつ食べ過ぎて呼び寄せた、でいんじゃね……」
「だからなんで、俺のせい」
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