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エルアーラ遺跡編
episode426
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「うおおお舌噛むじゃないか!!」
真っ先にリタイアしたヴァルトが、怒りも顕に叫ぶ。
「おるいるけるのるまるわるりるにる~のるばるらるがるさるいるたるよる」
メロディつきでタルコットが歌いだした。
「タルコットすごーい」
拍手付きでキュッリッキがはしゃいだように褒めると、タルコットは得意満面で「フッ」と微笑を浮かべた。ヴァルトが「ケッ」と口の端を歪める。
「お前たち、この状況をちゃんと認識しているのか?」
今にも吠え出しそうなガエルが、噛み付きそうな顔で睨んでいた。
彼らの様子を背後に聞きながら、ギャリーは眉間を寄せて天井をのっそりと睨む。脳内では、ある教訓がぐるぐると巡っているのだ。
「”どんなときも笑顔を忘れない。辛いときだって愉快に行こう。悲しいときだって明るく楽しもう!”っなんて、どこのバカがほざきやがった!!」
「あー……たぶんソレ、ベルトルドのおっさん」
”バカ”の部分をことさら強調しながら言うギャリーの怒鳴り声に、ザカリーが記憶をたどりながらうんざりげっそりと答えた。
ライオン傭兵団が設立されたとき、祝いだと言って、ベルトルドが徹夜で考えたという傭兵団に捧げた教訓だった。
もちろんこんな教訓欲しくもないのだが、当時それはもう自信に満ち溢れるベルトルドが、余計なお世話だと表情に物語るメンバーたちに問答無用で押し付けたものだ。
ありがた迷惑の空気を憚ることなく漂わせ、カーティスは嫌々受け取ったものだ。
金輪際見たくもないので、誰も気にとめないような玄関の壁際に、安い額縁付きで飾られている。直接貼らずに額縁に入れただけでも、最高の礼儀だと皆自負していた。
特大の親切を込めて見ても、その書体は『下手なラクガキ』レベルの、ベルトルドの直筆だ。
ライオン傭兵団へ入ったばかりの頃に、これを見つけたキュッリッキが、
「なにこれ、ちっとも読めなーい」
と大笑いしたほど、黒いミミズが悶絶しているような、恐ろしいまでの筆跡である。
蜂の大群に追い掛け回されながら、ギャリーは何故かそのことを猛烈に思い出し、泣きそうな顔で怒りながらぶちまけていた。そんな教訓を思い出すだけの余裕が、まだあるということなのだろう。
しかしどう考えてもこの状況を、ベルトルドの考え出した教訓のまま実行するのは不可能だ。
蜂の存在に気づいて逃げ始めてから、すでにどのくらい経ったのだろうか。どこまで続くかもわからない通路は、ハーメンリンナの地下にある通路とほぼかわらぬ景色を保ち、白く明るいところをひたすら逃げ回るだけで、時間の感覚が麻痺していた。
ハーメンリンナの地下との違いは、床に赤い絨毯が敷かれているかいないかだけで、エルアーラ遺跡の中は、ひたすら白とも乳白色ともとれる剥き出しの床だ。
モナルダ大陸の3分の1もの規模を誇る遺跡、と教えられているが、まず想像が及ばないほどの広大さだ。そんな中を、今はまだ逃げる体力があるが、それも限界に達したら追いつかれて針攻撃にさらされる。
さすがに呑気に「ぶるんぶるんぶるん」など口ずさむ者もおらず、言いだしっぺのマリオンですら、黙々と走ることに専念していた。
「おいカーティス、あの蜂ども魔法で焼いちまったほうが早いんじゃね」
「そう思いますが、場所が場所なのでどうしたものかと」
真っ先にリタイアしたヴァルトが、怒りも顕に叫ぶ。
「おるいるけるのるまるわるりるにる~のるばるらるがるさるいるたるよる」
メロディつきでタルコットが歌いだした。
「タルコットすごーい」
拍手付きでキュッリッキがはしゃいだように褒めると、タルコットは得意満面で「フッ」と微笑を浮かべた。ヴァルトが「ケッ」と口の端を歪める。
「お前たち、この状況をちゃんと認識しているのか?」
今にも吠え出しそうなガエルが、噛み付きそうな顔で睨んでいた。
彼らの様子を背後に聞きながら、ギャリーは眉間を寄せて天井をのっそりと睨む。脳内では、ある教訓がぐるぐると巡っているのだ。
「”どんなときも笑顔を忘れない。辛いときだって愉快に行こう。悲しいときだって明るく楽しもう!”っなんて、どこのバカがほざきやがった!!」
「あー……たぶんソレ、ベルトルドのおっさん」
”バカ”の部分をことさら強調しながら言うギャリーの怒鳴り声に、ザカリーが記憶をたどりながらうんざりげっそりと答えた。
ライオン傭兵団が設立されたとき、祝いだと言って、ベルトルドが徹夜で考えたという傭兵団に捧げた教訓だった。
もちろんこんな教訓欲しくもないのだが、当時それはもう自信に満ち溢れるベルトルドが、余計なお世話だと表情に物語るメンバーたちに問答無用で押し付けたものだ。
ありがた迷惑の空気を憚ることなく漂わせ、カーティスは嫌々受け取ったものだ。
金輪際見たくもないので、誰も気にとめないような玄関の壁際に、安い額縁付きで飾られている。直接貼らずに額縁に入れただけでも、最高の礼儀だと皆自負していた。
特大の親切を込めて見ても、その書体は『下手なラクガキ』レベルの、ベルトルドの直筆だ。
ライオン傭兵団へ入ったばかりの頃に、これを見つけたキュッリッキが、
「なにこれ、ちっとも読めなーい」
と大笑いしたほど、黒いミミズが悶絶しているような、恐ろしいまでの筆跡である。
蜂の大群に追い掛け回されながら、ギャリーは何故かそのことを猛烈に思い出し、泣きそうな顔で怒りながらぶちまけていた。そんな教訓を思い出すだけの余裕が、まだあるということなのだろう。
しかしどう考えてもこの状況を、ベルトルドの考え出した教訓のまま実行するのは不可能だ。
蜂の存在に気づいて逃げ始めてから、すでにどのくらい経ったのだろうか。どこまで続くかもわからない通路は、ハーメンリンナの地下にある通路とほぼかわらぬ景色を保ち、白く明るいところをひたすら逃げ回るだけで、時間の感覚が麻痺していた。
ハーメンリンナの地下との違いは、床に赤い絨毯が敷かれているかいないかだけで、エルアーラ遺跡の中は、ひたすら白とも乳白色ともとれる剥き出しの床だ。
モナルダ大陸の3分の1もの規模を誇る遺跡、と教えられているが、まず想像が及ばないほどの広大さだ。そんな中を、今はまだ逃げる体力があるが、それも限界に達したら追いつかれて針攻撃にさらされる。
さすがに呑気に「ぶるんぶるんぶるん」など口ずさむ者もおらず、言いだしっぺのマリオンですら、黙々と走ることに専念していた。
「おいカーティス、あの蜂ども魔法で焼いちまったほうが早いんじゃね」
「そう思いますが、場所が場所なのでどうしたものかと」
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