片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
443 / 882
エルアーラ遺跡編

episode424

しおりを挟む
ぐっちゅぐっちゅと激しい後ろと前の同時攻撃にもう頭の中はぐっちゃぐちゃ。

今日のクライスはやけに色々聞いてくるから頑張って答えるのだけど、イきすぎてもぅ眠い。自分が何を言ってるのか、ちょっとわかんなくなってきた。

「俺も一番キルナが好きなんだ。お前だけを愛している」
「ふあっ……ぼ…くも…くらいしゅ…らけ。くらいしゅらけあいしてう…んぅ」

顎をつかんで振り向かされ、唇ににまたキスが落とされる。

与えられた唾液をごくんと飲み込んだら、彼の魔力がまた体に広がって染み渡っていく。身体にいっぱいの彼の魔力とキスマークによって、僕は物理的なかんじで彼のものになっていく気がした。

「なのに、お前は俺をユジンにくれてやるつもりなのか?」
「ふぁああん。ちょ、…ああ…っ」
「どうなんだ?」

室内が冷蔵庫みたいにひえっひえになっている。ゴリゴリと内壁を擦られ「ひぁああ」とまた中だけで盛大にイった。

「だってだって」

ああ、言っちゃダメ。これはナイショの話でしょ。とちょこっとだけ残った理性が止めようとするのに、口が勝手に気持ちを言葉にしていく。

「ぼく…だとクライスを…しあわせに…できないから」


「そんなはずがない!!」

クライスが怒っている。
ああ違う、泣いている?
彼の表情は見えないけど、辛そうな声に僕まで悲しくなってくる。

「くらいしゅ、なかないれ……んぁあ!?」

彼は(入れたまま)くるんと僕の向きを変え、向かい合わせになると僕の体を抱きしめた。

「俺は、お前以外の他の誰と結婚しても幸せになんてなれない。俺はお前を愛している。お前と一緒に生きていきたい。それがお前の信じる運命じゃなくても」

「……うんめいじゃ…なくても?」

彼の言葉の意味を考える。

(僕の信じる運命って、クライスとそんな話したことあったかな?)

「ひああちょっと、とまって…。いま、かんがえてぅとこだからあ!」

揺さぶる彼の動きが止まると、思い浮かんだ言葉があった。

ああ、もしかしてあれかな。ファーストキスにびっくりして、うっかりゲームの未来を喋っちゃったやつ。

、えぐえぐっ、のにぃ』

ーークライスとユジンが結婚する。

それが二人のハッピーエンドで、絶対正しい未来なのだと僕は信じていた。優斗から彼らの愛の素晴らしさを聞いていたし、ゲームの二人は結ばれて、真実幸せそうだったから。

悪役令息ぼくはそれを実現するための駒にすぎない。二人の邪魔をして恋をいいかんじに燃え上がらせ、卒業パーティーで断罪され、婚約破棄されて役目を終える。

それでいいのだと思っていた。
それが僕の運命なのだから。
クライスとユジンが幸せになれるなら構わない。むしろ、そうなるべきだと思っていたのに。

「俺はユジンではなく、お前と結婚する」

僕の信じる未来をひっくり返す彼の言葉。
抱きしめる腕の力は強い。アイスブルーの瞳は真っ直ぐに僕の瞳を見つめている。



「ぼくと、くらいすが、けっこん……」

そうすることができたらどんなにいいだろ。
だけど、

「ぼくは…くらいすに、しあわせになってほしぃの……」
「ああ。俺はキルナと結婚したら間違いなく幸せになれる」
「でも…ぼく、やみぞくせいだし」
「知ってる、黒い髪が綺麗だものな。見せてくれ」

え?  

左手のフィンガーブレスレットはお父様の指示でずっとつけっぱなしにしている。それを外すと、魔法で藍色に染まっていた髪が黒色へと変わる。自分でもこの色になった髪をみるのは久しぶりだ。

僕はこの髪色が全然好きじゃない。闇属性って一発でバレるし、バケモノとか悪魔だと言われてきた。なのにクライスはこの髪を一房掬い、キスをした。

「綺麗な漆黒の髪だな」
「きもちわるくない?」
「綺麗だ。お前の金の瞳によく合う」
「めのいろも、やっぱへんじゃない?」

最初は青かったのに途中で金に変わった変な瞳。使用人たちにキモチワルイと言われ続けたそれ。

「変じゃない。好きだと言ったろう? 月の光を集めたような、美しい瞳だ」

ちゅっと瞳にもキスをされる。こんな見た目を好きと言ってくれるなんて。でも中身は? 外見だけでなく、中身もしっかり悪役令息な僕。こんなに性格が悪いと嫌なんじゃ。

「えと、ぼく…わがままでたかびしゃで、てのつけられないわるいこらしいのだけど、いい?」

「その噂は間違っていると思うが、お前の我儘ならいくらでも聞いてやる。もっと我儘になってほしいくらいだ」

クライスったら。優しすぎるよ。ああ、胸がぽかぽかする。自分が否定してきた何もかもを、彼は受け入れてくれる。



でも本当にいいの?

「僕は、」

『あなたはいらないのーー』
『七海なんていなければーー』

「いらないこだけど……」

言いかけた口が彼の唇に塞がれた。


「いらない子なんかじゃない。俺にはお前が必要だ、キルナ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

処理中です...