441 / 882
エルアーラ遺跡編
episode422
しおりを挟む
ソレル国王の身柄を抑えたことを、ベルトルドから念話で知らされたリュリュとシ・アティウスは、処刑放送の準備のためにエルアーラ遺跡に問答無用で転送された。
ベルトルドとアルカネットでは操作が手に余るのもあったが、リュリュからは外の諸々報告説明が、シ・アティウスは遺跡の無事が気になってしょうがなかったとのことで、呼ばれた2人から文句はない。
「俺はな」
足元の首なし死体をつま先でつつきながら、ベルトルドは腕を組んだ。
「世界なんてものは、統一する必要はないと思う」
唐突に語りだしたベルトルドに、3人は怪訝そうな顔を向けた。
「すでに種族で惑星の住み分けは出来ているだろ」
この惑星ヒイシはヴィプネン族の惑星(ほし)と、いにしえから決められているという。
誰が決めたのかは知らないが、神話では神々がそうして他のアイオン族、トゥーリ族にそれぞれ別々の惑星(ほし)を住処として与えたらしい。それを裏付けるように、各惑星は種族に合うような地形などをしている。
「千年前に種族統一国家の樹立を目指して奔走したワイズキュール家は、当時惑星全土に複数あった国々が巻き起こす戦争に終止符を打ち、平和な世を築く目的があったからこそハワドウレ皇国が誕生した。多大な犠牲を払いはしたが、国を統一したからこそ、国家間戦争というものが根絶された。しかし世界が平和になると、それに飽いて自分の国を目指す輩が続出し始め、現在の有様だ」
ハワドウレ皇国と17の小国。3年前は18の小国だったが、反旗を翻して戦争を起こしたため、現在は皇国に併呑され抹消されている。
他にも自由都市というものも存在している。どの国にも属さず、完全な独立自治権を有している。その代償に、何があっても近隣諸国などの援助も救助も受けられない。そしてエグザイル・システムもない。
ベルトルドは自由都市で生まれ育った。都市の代表というものは存在したが、それは便宜上必要なだけで、都市の運営は専門機関が行い、住人たちはヴィプネン族、アイオン族、トゥーリ族と3種族が共存していた。
何事かあれば皆が助け合い、協力して解決していく。格差などなく平等だった。種族で他人を差別することはない。そんな環境にいたベルトルドにとって、何故種族を分け隔ててまで統一しなければならないのか理解できなかった。
一万年前に存在したという神王国ソレル。一体どのように統治していたのだろう。
ベルトルドは現代の種族統一国家ハワドウレ皇国の副宰相職を務めている。役職は宰相職そのものであり、政に軍に一部司法にと、細かくするとかなり広い範囲を抱えている。更にはアルケラ研究機関ケレヴィルの所長も務めているのだ。
その立場から訴えると「たいへん」の一言につきた。
国の頂点には皇王が鎮座しているが、実際国を動かしているのはベルトルドら臣下であり、国民である。新しいことを決めるにしても、今在るものを見直すにしても、様々な見解や意見が飛び交い、それらをひとつにまとめるだけでも大変な時間を労する。
そこには役職に就いている人々の考えがあり、それは常に皆と同じというわけではない。押さえつけたり無視すれば、無用な感情をそこに生んでしまう。かといって自由にさせれば、新たな問題が起きる。そういうのをなるべく穏便にすませるための方法を新たに考え、納得させ、受け入れてもらう。
日常的にそういう環境に身を置いていると、一体どうやれば惑星全土を統一できるのか不思議でならないのだ。独裁政治は長くは続かない。神王国ソレルは、どんな方法を使ったのだろうか。そして、足元に転がる老人は、仮に種族の頂点に立てたとして、どのようにこの惑星全土を治める気でいたのだろうか。
ベルトルドとアルカネットでは操作が手に余るのもあったが、リュリュからは外の諸々報告説明が、シ・アティウスは遺跡の無事が気になってしょうがなかったとのことで、呼ばれた2人から文句はない。
「俺はな」
足元の首なし死体をつま先でつつきながら、ベルトルドは腕を組んだ。
「世界なんてものは、統一する必要はないと思う」
唐突に語りだしたベルトルドに、3人は怪訝そうな顔を向けた。
「すでに種族で惑星の住み分けは出来ているだろ」
この惑星ヒイシはヴィプネン族の惑星(ほし)と、いにしえから決められているという。
誰が決めたのかは知らないが、神話では神々がそうして他のアイオン族、トゥーリ族にそれぞれ別々の惑星(ほし)を住処として与えたらしい。それを裏付けるように、各惑星は種族に合うような地形などをしている。
「千年前に種族統一国家の樹立を目指して奔走したワイズキュール家は、当時惑星全土に複数あった国々が巻き起こす戦争に終止符を打ち、平和な世を築く目的があったからこそハワドウレ皇国が誕生した。多大な犠牲を払いはしたが、国を統一したからこそ、国家間戦争というものが根絶された。しかし世界が平和になると、それに飽いて自分の国を目指す輩が続出し始め、現在の有様だ」
ハワドウレ皇国と17の小国。3年前は18の小国だったが、反旗を翻して戦争を起こしたため、現在は皇国に併呑され抹消されている。
他にも自由都市というものも存在している。どの国にも属さず、完全な独立自治権を有している。その代償に、何があっても近隣諸国などの援助も救助も受けられない。そしてエグザイル・システムもない。
ベルトルドは自由都市で生まれ育った。都市の代表というものは存在したが、それは便宜上必要なだけで、都市の運営は専門機関が行い、住人たちはヴィプネン族、アイオン族、トゥーリ族と3種族が共存していた。
何事かあれば皆が助け合い、協力して解決していく。格差などなく平等だった。種族で他人を差別することはない。そんな環境にいたベルトルドにとって、何故種族を分け隔ててまで統一しなければならないのか理解できなかった。
一万年前に存在したという神王国ソレル。一体どのように統治していたのだろう。
ベルトルドは現代の種族統一国家ハワドウレ皇国の副宰相職を務めている。役職は宰相職そのものであり、政に軍に一部司法にと、細かくするとかなり広い範囲を抱えている。更にはアルケラ研究機関ケレヴィルの所長も務めているのだ。
その立場から訴えると「たいへん」の一言につきた。
国の頂点には皇王が鎮座しているが、実際国を動かしているのはベルトルドら臣下であり、国民である。新しいことを決めるにしても、今在るものを見直すにしても、様々な見解や意見が飛び交い、それらをひとつにまとめるだけでも大変な時間を労する。
そこには役職に就いている人々の考えがあり、それは常に皆と同じというわけではない。押さえつけたり無視すれば、無用な感情をそこに生んでしまう。かといって自由にさせれば、新たな問題が起きる。そういうのをなるべく穏便にすませるための方法を新たに考え、納得させ、受け入れてもらう。
日常的にそういう環境に身を置いていると、一体どうやれば惑星全土を統一できるのか不思議でならないのだ。独裁政治は長くは続かない。神王国ソレルは、どんな方法を使ったのだろうか。そして、足元に転がる老人は、仮に種族の頂点に立てたとして、どのようにこの惑星全土を治める気でいたのだろうか。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


貧乏秀才令嬢がヤサグレ天才少年と、世界の理を揺るがします。
凜
恋愛
貧乏貴族のダリアは、国一番の魔法学校の副首席。首席になりたいのに、その壁はとんでもなくぶあつく…。
ある日謎多き少年シアンと出会い、彼が首席とわかるやいなや強烈な興味を持ち粘着するようになった。
クセの多い登場人物が織りなす、身分、才能、美醜が絡み、陰謀渦巻く魔法学校でのスクールストーリー。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる