437 / 882
エルアーラ遺跡編
episode418
しおりを挟む
ややうんざり気味に、ベルトルドは嘆息混じりに吐き捨てた。組んだ脚の片方をめんどくさそうにブラブラさせる。ショートブーツなのでブラブラさせたくらいでスポーンと脱げたりはしないが、いっそサイ《超能力》で無理矢理脱がせて、ブーツの踵がソレル国王のデコにヒットしないかな、などと思って、ベルトルドはニヤニヤ頬を緩ませた。
「勝手に記憶を覗いたのか!? この………痴れ者っ!!」
シワの刻まれた顔を紅潮させて、ソレル国王は不遜な態度をとり続けるベルトルドを激しく睨んだ。
その激しい視線を真っ向から受け、ベルトルドはつまらなさそうに、鼻息を「フンッ」と吹き出す。
「陛下もサイ《超能力》をお持ちなら理解出来るでしょうが、想いが強すぎると、勝手に思考や記憶が流れ込んでくるんですよ。正直迷惑も甚だしいんですがね。俺はとくに力が強すぎるから、それはもう遠慮なく流れ込んできます」
本当に嫌そうに肩をすくめてみせる。
「サイ《超能力》を持つ者なら、透視は誰でもできる。相手の心、記憶、その場の残留思念、漂う思念、無機物や有機物などの記憶も視てしまう。視ようとしていないのに情報が勝手に流れ込んでくるんだ。あまり楽しいものじゃないが、今回ばかりは色々と役に立った」
ソレル国王の眼光はやや衰えた。サイ《超能力》のレベルは最低ランク、ベルトルドが言うような、勝手に記憶や心が流れ込んでくることなど経験がない。サイ《超能力》を持たぬ者相手には十分強いのだが、同スキル〈才能〉を持つ相手を前に、己の力の貧弱さをまざまざと見せつけられ、それがより王としての矜持を傷つけた。
「歴史が好きだった、程度でやめておけば良かったものだが、色々首を突っ込みすぎたな。――皇国相手に牙をむいて、国民を無駄に死なせ、捨て駒扱いにした傭兵たちも、多く冥府へ送るようなことになった。趣味の延長線で権力を振り回した結果招いた戦争だ」
ベルトルドは組んでいた脚を解き、ゆっくりと立ち上がった。
「多少は能のある王かと思いきや、世間知らずの貴族の生娘たちと寸分違わない馬鹿だったな。今時世界征服とか、恥ずかしくて考えるだけでもアホくさい」
ソレル国王の前に進み立つと、ベルトルドはその老いた顔を覗き込んだ。美しい顔にゾッとするような、冷たい微笑みを浮かべて。
「強者に喧嘩を売るときはな、負けたときのことも考え、十分用意した上で仕掛ける方がいい。もっとも、この地上に逃げ場などないし、当然アイオン族もトゥーリ族も相手にしないだろう。孤独な老いぼれが哀れに死ぬだけさ」
白い手袋をはめた手が、老人の喉を鷲掴みにした。
「ヒイッ」
ソレル国王は空気の抜けていく風船のような声を上げて、目だけでベルトルドを見おろした。やすやすと身体を高く持ち上げられ、喉を締め上げる圧力に、ソレル国王の頭はパニックに陥った。しかしもがきたくとも手は重たくなって上がらず、足も動かずだらりとしている。
「王たるもの、戦争の尻拭いはきっちりするものだ。そうでないと、前線で命を散らす民が納得するまい」
「勝手に記憶を覗いたのか!? この………痴れ者っ!!」
シワの刻まれた顔を紅潮させて、ソレル国王は不遜な態度をとり続けるベルトルドを激しく睨んだ。
その激しい視線を真っ向から受け、ベルトルドはつまらなさそうに、鼻息を「フンッ」と吹き出す。
「陛下もサイ《超能力》をお持ちなら理解出来るでしょうが、想いが強すぎると、勝手に思考や記憶が流れ込んでくるんですよ。正直迷惑も甚だしいんですがね。俺はとくに力が強すぎるから、それはもう遠慮なく流れ込んできます」
本当に嫌そうに肩をすくめてみせる。
「サイ《超能力》を持つ者なら、透視は誰でもできる。相手の心、記憶、その場の残留思念、漂う思念、無機物や有機物などの記憶も視てしまう。視ようとしていないのに情報が勝手に流れ込んでくるんだ。あまり楽しいものじゃないが、今回ばかりは色々と役に立った」
ソレル国王の眼光はやや衰えた。サイ《超能力》のレベルは最低ランク、ベルトルドが言うような、勝手に記憶や心が流れ込んでくることなど経験がない。サイ《超能力》を持たぬ者相手には十分強いのだが、同スキル〈才能〉を持つ相手を前に、己の力の貧弱さをまざまざと見せつけられ、それがより王としての矜持を傷つけた。
「歴史が好きだった、程度でやめておけば良かったものだが、色々首を突っ込みすぎたな。――皇国相手に牙をむいて、国民を無駄に死なせ、捨て駒扱いにした傭兵たちも、多く冥府へ送るようなことになった。趣味の延長線で権力を振り回した結果招いた戦争だ」
ベルトルドは組んでいた脚を解き、ゆっくりと立ち上がった。
「多少は能のある王かと思いきや、世間知らずの貴族の生娘たちと寸分違わない馬鹿だったな。今時世界征服とか、恥ずかしくて考えるだけでもアホくさい」
ソレル国王の前に進み立つと、ベルトルドはその老いた顔を覗き込んだ。美しい顔にゾッとするような、冷たい微笑みを浮かべて。
「強者に喧嘩を売るときはな、負けたときのことも考え、十分用意した上で仕掛ける方がいい。もっとも、この地上に逃げ場などないし、当然アイオン族もトゥーリ族も相手にしないだろう。孤独な老いぼれが哀れに死ぬだけさ」
白い手袋をはめた手が、老人の喉を鷲掴みにした。
「ヒイッ」
ソレル国王は空気の抜けていく風船のような声を上げて、目だけでベルトルドを見おろした。やすやすと身体を高く持ち上げられ、喉を締め上げる圧力に、ソレル国王の頭はパニックに陥った。しかしもがきたくとも手は重たくなって上がらず、足も動かずだらりとしている。
「王たるもの、戦争の尻拭いはきっちりするものだ。そうでないと、前線で命を散らす民が納得するまい」
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧乏秀才令嬢がヤサグレ天才少年と、世界の理を揺るがします。
凜
恋愛
貧乏貴族のダリアは、国一番の魔法学校の副首席。首席になりたいのに、その壁はとんでもなくぶあつく…。
ある日謎多き少年シアンと出会い、彼が首席とわかるやいなや強烈な興味を持ち粘着するようになった。
クセの多い登場人物が織りなす、身分、才能、美醜が絡み、陰謀渦巻く魔法学校でのスクールストーリー。

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした
あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を
自分の世界へと召喚した。
召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと
願いを託す。
しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、
全く向けられていなかった。
何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、
将来性も期待性もバッチリであったが...
この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。
でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか?
だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし...
周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を
俺に投げてくる始末。
そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と
罵って蔑ろにしてきやがる...。
元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで
最低、一年はかかるとの事だ。
こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から
出ようとした瞬間...
「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」
...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。
※小説家になろう様でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる