片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
上 下
431 / 882
エルアーラ遺跡編

episode412

しおりを挟む
「だったら早く中枢部を見つけて、ソレル国王たちを始末しないと、いつになったらリッキーさんと合流できるんだか……。私は彼女の身が心配で心配でならないのです」

 はぁ…とアルカネットは切なげに息をつく。

「俺のほうがお前より、もっともっともっともーーーっと心配している!」

 こっから、このくらーいと走り出しそうなベルトルドの胸ぐらを掴んで、アルカネットはグイッと自分のほうへ引っ張り寄せた。

「とっととサイ《超能力》を使って探せや、こら」

 凄みを増す表情を間近に突きつけられて、ベルトルドはぴくぴく眉をひきつらせた。

 その時――

「そのようなところでお戯れか? 皇国副宰相……名はなんといったかな。下賤の者の名前は覚えにくいゆえ」

 見下すような男の声が投げかけられ、ベルトルドとアルカネットは揃って声のほうへ顔を向けた。

 天井付近のそこには、小さな銀の球体が浮かんでいる。男の声はその球体から聞こえてきていた。

 中心に小型レンズがついていることから、おそらく遠隔操作による偵察機だろう。

 2人はしばし沈黙していたが、アルカネットに胸ぐらを掴まれたまま、ベルトルドはニヤリと口の端を歪めて球体を見据えた。

「いいタイミングで見つけてくれたな、ソレル国王」

 その瞬間、ベルトルドとアルカネットの姿が消えた。



「なんだと?」

 モニターに映し出されていたベルトルドとアルカネットの姿が忽然と消えて、ソレル国王は驚いて目を見開いた。

「別に手品じゃないぞ。本当に助かった、見つけてもらえて。実は思いっきり迷子になっていたんだ」

 背後から聞こえる明るいその声に、ソレル国王はゆっくりと首を巡らせた。

「俺は空間転移が出来るからな、そちらの居場所を辿って飛んできただけだ」

 いつの間にかソレル国王の背後に、皮肉な笑みを浮かべるベルトルドとアルカネットが立っていた。

 小型偵察機を通じてカメラの向こう側にいるソレル国王を透視し、ベルトルドはそこへ空間転移したのだ。

 サイ《超能力》を持つベルトルドの優秀さは、世界でもよく知られている。しかし空間転移についてはあまり知られていないようで、サイ《超能力》を持つソレル国王も初めて目にした。

(しかしこの男……)

 ソレル国王は不愉快そうに顎を引いた。

 王を前にして跪かず、尊大な態度で睥睨するようなベルトルドを、ソレル国王は忌々しげに睨みつけた。無礼にも程がある。

「下郎ども……」

「そんなに褒めてくれるな、照れるじゃないか」

「別に褒めてなんていませんよ?」

「いちいちツッコむな! ちっとも決まらんだろうが」

「はいはい」

 アルカネットは肩で息をついてみせた。

 どんな時でも、どんな場所でも、2人の会話はボケとツッコミを忘れない。忘れたくともほとんど条件反射でそうなってしまうことは、ソレル国王は知らない。というより、当人たちが気づいていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?

翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。 「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」 ご都合主義な創作作品です。 異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。 恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...