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エルアーラ遺跡編
episode411
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「なあ、アルカネット」
「なんです?」
「お前にだから、俺は正直に言う」
「はい、どうぞ」
「迷子になった!!」
両手を腰に当てふんぞり返って威張りながら、ベルトルドは「ふふん」と得意げに胸を張る。
41歳にもなる主を、つくづくと見つめながら、アルカネットは露骨に嫌味な溜息を吐きだした。
(迷子になって、なぜ威張る…)
キュッリッキたちライオン傭兵団より先行してエルアーラ遺跡に降り立ち、襲いかかってくるソレル王国兵たちを、適当に始末しながら進んでいるがこの有様だ。派手なパフォーマンスで先に出たというのに、これで出遅れていたら恥ずかしさこの上ない。
「だから地図を持っていきなさいと、あれほど言ったんです」
「だってー、お前が一緒だから大丈夫だと思ったんだ」
「あいにく私は、あなたほどここへは来ていませんから、内部は判らないんです」
額を軽く指先で抑えながら、アルカネットは疲れたように首をゆるゆると振った。
「えー……」
拗ね口調でぶつぶつ呟きながら、顔をしかめてベルトルドは辺りをキョロキョロと見回した。
ベルトルドとアルカネットは、遺跡の中枢部を目指していた。しかし広大な遺跡の中は迷路のようで、目的地に着くことができない。
周囲は皇都イララクスのハーメンリンナ地下にそっくりな風景で、更に標識もなく時々ソレル兵と出くわす程度だから、現在位置がさっぱり掴めない。ソレル王国兵を殺す前に問いただしても記憶を読んでも、彼らもよくわかっていないようだったから困ってしまう。観光施設でもないので随所に案内書など当然置いてない。
いつもケレヴィルの職員と共に中へ入っていたので、ベルトルドは道を覚える必要がなかったし覚える気もなかった。入口のエントランスでふんぞり返っていれば、誰かが迎えに来て丁寧に案内してくれたからだ。
その怠慢のツケがこうして巡ってきたので、こめかみに青筋を浮き出させながら、中枢部を探して闇雲に歩き回っているのである。
「埓があかーーーーーーーーーーん!!」
ついにベルトルドは両手を上にあげて、子供のように大きな声を張り上げた。
「誰だこんな複雑構造なんぞに作った馬鹿野郎は!!」
「1万年前のヤルヴィレフト王家です」
「ケシカランぞ!!」
的確にツッコむ天使のような微笑みを向けるアルカネットを、ベルトルドは鬼の形相で睨みつけた。そしてふと真顔に戻ると、なにか閃いた表情(かお)で、片手をポンッと掌に打ち付けコクコクと頷く。
「よし、シ・アティウスをここに転送しよう。やつに案内させればいいだけの話じゃないか」
名案だぞ俺! とご満悦の表情を浮かべてグッと握り拳を作るベルトルドに、アルカネットはきっぱりと首を横に振った。
「およしなさい。彼にはナルバ山の遺跡の方を任せてあるんですよ。作業を中断させたら、計画が遅延してしまいます」
「……俺たちも遅延してるじゃないか」
「一体、誰のせいなんでしょうね~?」
「ぐっ……」
的を射すぎていて、喉元に文句が詰まる。
「だったら、ここへリュリュを呼べばいいでしょう。彼なら問題なく中枢部に案内してくれますよ。多少、”小言”付きで」
ベルトルドは腕をバッテンに交差させ、首を激しく横に振った。
「アイツの小言はお前の比じゃないんだぞ!! ずえったい断る!!」
「なんです?」
「お前にだから、俺は正直に言う」
「はい、どうぞ」
「迷子になった!!」
両手を腰に当てふんぞり返って威張りながら、ベルトルドは「ふふん」と得意げに胸を張る。
41歳にもなる主を、つくづくと見つめながら、アルカネットは露骨に嫌味な溜息を吐きだした。
(迷子になって、なぜ威張る…)
キュッリッキたちライオン傭兵団より先行してエルアーラ遺跡に降り立ち、襲いかかってくるソレル王国兵たちを、適当に始末しながら進んでいるがこの有様だ。派手なパフォーマンスで先に出たというのに、これで出遅れていたら恥ずかしさこの上ない。
「だから地図を持っていきなさいと、あれほど言ったんです」
「だってー、お前が一緒だから大丈夫だと思ったんだ」
「あいにく私は、あなたほどここへは来ていませんから、内部は判らないんです」
額を軽く指先で抑えながら、アルカネットは疲れたように首をゆるゆると振った。
「えー……」
拗ね口調でぶつぶつ呟きながら、顔をしかめてベルトルドは辺りをキョロキョロと見回した。
ベルトルドとアルカネットは、遺跡の中枢部を目指していた。しかし広大な遺跡の中は迷路のようで、目的地に着くことができない。
周囲は皇都イララクスのハーメンリンナ地下にそっくりな風景で、更に標識もなく時々ソレル兵と出くわす程度だから、現在位置がさっぱり掴めない。ソレル王国兵を殺す前に問いただしても記憶を読んでも、彼らもよくわかっていないようだったから困ってしまう。観光施設でもないので随所に案内書など当然置いてない。
いつもケレヴィルの職員と共に中へ入っていたので、ベルトルドは道を覚える必要がなかったし覚える気もなかった。入口のエントランスでふんぞり返っていれば、誰かが迎えに来て丁寧に案内してくれたからだ。
その怠慢のツケがこうして巡ってきたので、こめかみに青筋を浮き出させながら、中枢部を探して闇雲に歩き回っているのである。
「埓があかーーーーーーーーーーん!!」
ついにベルトルドは両手を上にあげて、子供のように大きな声を張り上げた。
「誰だこんな複雑構造なんぞに作った馬鹿野郎は!!」
「1万年前のヤルヴィレフト王家です」
「ケシカランぞ!!」
的確にツッコむ天使のような微笑みを向けるアルカネットを、ベルトルドは鬼の形相で睨みつけた。そしてふと真顔に戻ると、なにか閃いた表情(かお)で、片手をポンッと掌に打ち付けコクコクと頷く。
「よし、シ・アティウスをここに転送しよう。やつに案内させればいいだけの話じゃないか」
名案だぞ俺! とご満悦の表情を浮かべてグッと握り拳を作るベルトルドに、アルカネットはきっぱりと首を横に振った。
「およしなさい。彼にはナルバ山の遺跡の方を任せてあるんですよ。作業を中断させたら、計画が遅延してしまいます」
「……俺たちも遅延してるじゃないか」
「一体、誰のせいなんでしょうね~?」
「ぐっ……」
的を射すぎていて、喉元に文句が詰まる。
「だったら、ここへリュリュを呼べばいいでしょう。彼なら問題なく中枢部に案内してくれますよ。多少、”小言”付きで」
ベルトルドは腕をバッテンに交差させ、首を激しく横に振った。
「アイツの小言はお前の比じゃないんだぞ!! ずえったい断る!!」
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