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エルアーラ遺跡編
episode408
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エルアーラ遺跡の中の入口付近で、ライオン傭兵団は未曾有の危機に直面し、右往左往していた。
一緒にいたキュッリッキが、忽然と姿を消してしまったのだ。
彼女に付き従うフェンリルとフローズヴィトニルの仔犬2匹は取り残されたまま、2匹を置いてキュッリッキが黙って姿を消す道理がない。
「あ~~~ん、わずかな時間でドコいっちゃったのよぉおおお」
頭を両手で押さえながら、フロア内をうろうろ歩くマリオンが喚く。
「地上にもいねえ、先に遺跡の中に駆け込んでいったわけでもなさそうだし、困ったなおい」
そんなマリオンに同意の頷きを返しながら、タバコを忙しなくふかしてギャリーは腕を組んだ。
キュッリッキがいないことに気づいたメルヴィンが声を上げてから、すでに30分は経過している。
魔法を使ってシビルがキュッリッキを探索したが、遺跡の中にキュッリッキの気配を感じただけで、位置の特定には至ってない。気配は曖昧だし、遺跡の構造がよくわからないうえ、与えられている簡素な地図では二次災害を招きかねない。それにルーファスとマリオンの念話にも応じる気配がなかった。
フェンリルとフローズヴィトニルがじっと動かないところを見ると、生命の危険に見舞われているようではないと推察した。それに万が一行き違いがあったら困るので、フロアを動かず待機している。
「あんときみたいなコトに、なってなきゃいいんだが……」
降りてきた時の仮設階段に腰を下ろしていたザカリーが、落ち込んだ様子で俯きながらボソリと言った。
「もしそんな状況だったら、このちび助たちが真っ先に動いてるだろう」
ギャリーは組んだ腕から人差し指だけ出して、足元の2匹を指す。そして心中を察したように、拳でコツンとザカリーの頭を軽く小突いた。
ザカリーの言うあんときとは、数ヶ月前にソレル王国ナルバ山の遺跡で起こった事件のことだ。あの事件はいまだ、ライオン傭兵団の皆の心に重くのしかかっている。
冷たい石畳の上で血まみれになり、息も絶え絶えのキュッリッキの姿を見たとき、皆愕然としたのだ。
凄い力を持つという召喚士でありながら、何故あんなことになったのだろうか。僅かな時間で様々な奇跡を見せてくれた少女が、怪物相手になす術もなかったのかと。
力が封じられていたことは後日知ったことだが、力を封じられれば何もできない、非力な少女でしかない。召喚士とはそのようなものなのかと、痛烈に思い知らされた。
実際召喚士など目にし、接したのは初めてのことである。
スキル〈才能〉が判明すれば即座に国の保護下に置かれ、ハワドウレ皇国ならばハーメンリンナの中に隠され、一般の目に晒されることなどないからだ。希に軍事演習の時にチラリと姿を見る機会があった者は幾人かいたが、キュッリッキのように傭兵として一般人の中をうろうろする召喚士など前例がない。
神の世界アルケラから、そこに住むモノたちを招いて行使できるのが召喚士である、と一般的には知らされている。なので、”凄い”とか”強い”などという思い込みがあったのは否定できない。
神の力を操れるということは、すでに人間離れしている。できないことは何もなく、その身を危険にさらされるなどありえないと。だが、力を封じられれば、ただの人間なのだ。
一緒にいたキュッリッキが、忽然と姿を消してしまったのだ。
彼女に付き従うフェンリルとフローズヴィトニルの仔犬2匹は取り残されたまま、2匹を置いてキュッリッキが黙って姿を消す道理がない。
「あ~~~ん、わずかな時間でドコいっちゃったのよぉおおお」
頭を両手で押さえながら、フロア内をうろうろ歩くマリオンが喚く。
「地上にもいねえ、先に遺跡の中に駆け込んでいったわけでもなさそうだし、困ったなおい」
そんなマリオンに同意の頷きを返しながら、タバコを忙しなくふかしてギャリーは腕を組んだ。
キュッリッキがいないことに気づいたメルヴィンが声を上げてから、すでに30分は経過している。
魔法を使ってシビルがキュッリッキを探索したが、遺跡の中にキュッリッキの気配を感じただけで、位置の特定には至ってない。気配は曖昧だし、遺跡の構造がよくわからないうえ、与えられている簡素な地図では二次災害を招きかねない。それにルーファスとマリオンの念話にも応じる気配がなかった。
フェンリルとフローズヴィトニルがじっと動かないところを見ると、生命の危険に見舞われているようではないと推察した。それに万が一行き違いがあったら困るので、フロアを動かず待機している。
「あんときみたいなコトに、なってなきゃいいんだが……」
降りてきた時の仮設階段に腰を下ろしていたザカリーが、落ち込んだ様子で俯きながらボソリと言った。
「もしそんな状況だったら、このちび助たちが真っ先に動いてるだろう」
ギャリーは組んだ腕から人差し指だけ出して、足元の2匹を指す。そして心中を察したように、拳でコツンとザカリーの頭を軽く小突いた。
ザカリーの言うあんときとは、数ヶ月前にソレル王国ナルバ山の遺跡で起こった事件のことだ。あの事件はいまだ、ライオン傭兵団の皆の心に重くのしかかっている。
冷たい石畳の上で血まみれになり、息も絶え絶えのキュッリッキの姿を見たとき、皆愕然としたのだ。
凄い力を持つという召喚士でありながら、何故あんなことになったのだろうか。僅かな時間で様々な奇跡を見せてくれた少女が、怪物相手になす術もなかったのかと。
力が封じられていたことは後日知ったことだが、力を封じられれば何もできない、非力な少女でしかない。召喚士とはそのようなものなのかと、痛烈に思い知らされた。
実際召喚士など目にし、接したのは初めてのことである。
スキル〈才能〉が判明すれば即座に国の保護下に置かれ、ハワドウレ皇国ならばハーメンリンナの中に隠され、一般の目に晒されることなどないからだ。希に軍事演習の時にチラリと姿を見る機会があった者は幾人かいたが、キュッリッキのように傭兵として一般人の中をうろうろする召喚士など前例がない。
神の世界アルケラから、そこに住むモノたちを招いて行使できるのが召喚士である、と一般的には知らされている。なので、”凄い”とか”強い”などという思い込みがあったのは否定できない。
神の力を操れるということは、すでに人間離れしている。できないことは何もなく、その身を危険にさらされるなどありえないと。だが、力を封じられれば、ただの人間なのだ。
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