426 / 882
エルアーラ遺跡編
episode407
しおりを挟む
思い出したくないことまで奔流のようになって、目まぐるしく頭の中を駆け抜けていった。
生まれや育ちの不幸は、何も自分だけじゃない。自分だけが特別じゃないことくらい判っているつもりだ。でも、楽しい思い出よりも、辛い思い出の方が勝るのが悔しくてしょうがない。
怒りの中に複雑な感情を浮かべるキュッリッキの顔を見つめ、ヒューゴは苦笑った。
「ごめん、キミのことなにも知らないのに、色々言って。ただ本当に、キミは守られなければならないんだ。フリングホルニに着てしまったから、とても不安なんだよ」
「フリングホルニ?」
「そう、この遺跡の名前さ」
「エルアーラって名前じゃないんだ…?」
「フリングホルニが正式名称、まあ、名前なんてなんでも構わないけど。今はまだ起動装置が運び込まれていないから、全機能は稼働できないけどね」
ヒューゴは悔しげな表情で口元に歪んだ笑みを浮かべると、小さく嘆息した。
「命尽きる寸前、ボクは自分の意識と力をここに封じた。いつかキミのように、ユリディスと同じ力を持つコが訪れた時のために」
「…なぜ?」
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望を止めるため」
するとヒューゴの周りに7つの青い玉が現れた。キュッリッキはびっくりして目を見開く。
「なに、それ?」
「ボクの力を具現化したものだよ。ボクの力は大雑把にわけると、こうして7つになるんだ」
ビー玉より少し大きめの青い玉は、ふよふよとヒューゴの周りに浮いている。
「癒しの力・ラーカリ、召喚の力・ハアステ、魔法の力・ノイタ、戦闘の力・ソトリ、操る力・マニプロイダ、守る力・シントパピン、探る力・ヴァコウヤ」
それぞれ玉を指し名を告げるが、キュッリッキにはチンプンカンプンだった。何故なら玉は全て同じ大きさ、同じ色をしているからだ。
ヒューゴはキュッリッキに振り向くと、にっこりと笑った。
「ボクの力は《ゲームマスター》、この力をキミにあげる…ユリディスと同じ力を持つ少女」
キュッリッキのほうへヒューゴが手を差し伸べるように向けると、7つの玉はゆっくりと飛んで、キュッリッキの身体の周りをくるくると回って浮かんだ。
目をぱちくりさせるキュッリッキに、ヒューゴは更に笑みを深めた。
「キミは必ずヤルヴィレフト王家に狙われるだろう。ユリディスが死に、フェンリルが掟を破って猛威を奮ったけど、ヤルヴィレフト王家の野望は潰えていない。このフリングホルニにヤルヴィレフト王家の血の波動を感じるから」
キュッリッキには、ヤルヴィレフト王家という名前に、心当たりがなかった。
「アタシを狙ってるヒトはいるみたい。でもそれはソレル王国のメリロット王家? の王様だって聞いてる」
「ああ……今は分家筋がソレル王になっているんだ。そのソレル国王というのが、ヤルヴィレフト王家の血筋なんだよ」
あまり馴染みのある王家の名前ではなかったが、ヤルヴィレフトという王家の名前は、知らないはずなのに何だか不快感を感じていた。
「いいかい、絶対にキミの仲間たちに守ってもらうんだよ。そしてヤルヴィレフト王家に捕まったりしないで。ユリディスと同じ運命を辿らせたくない。誰を犠牲にしてでも守ってもらいなさい」
慈愛のこもった眼差しで見つめられ、キュッリッキは何故か寂しさを感じていた。
「引き止めちゃって悪かったね。さあ、みんなのところへお帰り」
ヒューゴは無邪気な表情を浮かべると、片手をあげて「バイバイ」と手を振った。
「あ……」
その瞬間、あたりは眩しく発光し、白い光に包まれた。
生まれや育ちの不幸は、何も自分だけじゃない。自分だけが特別じゃないことくらい判っているつもりだ。でも、楽しい思い出よりも、辛い思い出の方が勝るのが悔しくてしょうがない。
怒りの中に複雑な感情を浮かべるキュッリッキの顔を見つめ、ヒューゴは苦笑った。
「ごめん、キミのことなにも知らないのに、色々言って。ただ本当に、キミは守られなければならないんだ。フリングホルニに着てしまったから、とても不安なんだよ」
「フリングホルニ?」
「そう、この遺跡の名前さ」
「エルアーラって名前じゃないんだ…?」
「フリングホルニが正式名称、まあ、名前なんてなんでも構わないけど。今はまだ起動装置が運び込まれていないから、全機能は稼働できないけどね」
ヒューゴは悔しげな表情で口元に歪んだ笑みを浮かべると、小さく嘆息した。
「命尽きる寸前、ボクは自分の意識と力をここに封じた。いつかキミのように、ユリディスと同じ力を持つコが訪れた時のために」
「…なぜ?」
「ヤルヴィレフト王家の歪んだ野望を止めるため」
するとヒューゴの周りに7つの青い玉が現れた。キュッリッキはびっくりして目を見開く。
「なに、それ?」
「ボクの力を具現化したものだよ。ボクの力は大雑把にわけると、こうして7つになるんだ」
ビー玉より少し大きめの青い玉は、ふよふよとヒューゴの周りに浮いている。
「癒しの力・ラーカリ、召喚の力・ハアステ、魔法の力・ノイタ、戦闘の力・ソトリ、操る力・マニプロイダ、守る力・シントパピン、探る力・ヴァコウヤ」
それぞれ玉を指し名を告げるが、キュッリッキにはチンプンカンプンだった。何故なら玉は全て同じ大きさ、同じ色をしているからだ。
ヒューゴはキュッリッキに振り向くと、にっこりと笑った。
「ボクの力は《ゲームマスター》、この力をキミにあげる…ユリディスと同じ力を持つ少女」
キュッリッキのほうへヒューゴが手を差し伸べるように向けると、7つの玉はゆっくりと飛んで、キュッリッキの身体の周りをくるくると回って浮かんだ。
目をぱちくりさせるキュッリッキに、ヒューゴは更に笑みを深めた。
「キミは必ずヤルヴィレフト王家に狙われるだろう。ユリディスが死に、フェンリルが掟を破って猛威を奮ったけど、ヤルヴィレフト王家の野望は潰えていない。このフリングホルニにヤルヴィレフト王家の血の波動を感じるから」
キュッリッキには、ヤルヴィレフト王家という名前に、心当たりがなかった。
「アタシを狙ってるヒトはいるみたい。でもそれはソレル王国のメリロット王家? の王様だって聞いてる」
「ああ……今は分家筋がソレル王になっているんだ。そのソレル国王というのが、ヤルヴィレフト王家の血筋なんだよ」
あまり馴染みのある王家の名前ではなかったが、ヤルヴィレフトという王家の名前は、知らないはずなのに何だか不快感を感じていた。
「いいかい、絶対にキミの仲間たちに守ってもらうんだよ。そしてヤルヴィレフト王家に捕まったりしないで。ユリディスと同じ運命を辿らせたくない。誰を犠牲にしてでも守ってもらいなさい」
慈愛のこもった眼差しで見つめられ、キュッリッキは何故か寂しさを感じていた。
「引き止めちゃって悪かったね。さあ、みんなのところへお帰り」
ヒューゴは無邪気な表情を浮かべると、片手をあげて「バイバイ」と手を振った。
「あ……」
その瞬間、あたりは眩しく発光し、白い光に包まれた。
0
お気に入りに追加
151
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる