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エルアーラ遺跡編
episode405
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キュッリッキはまじまじとヒューゴを見つめた。
(思えば地面から浮いてるし、光ってて輪郭もぼんやりしているし、心象風景を投影したとか、ユーレイの仕業じゃなくてなんというんだろう!?)
超古代文明の遺跡だって言うから、絶対こういうものはツキモノなんだ、とキュッリッキは空を仰いだ。
別にユーレイ自体は怖くはないが、気色悪いとは思っている。しかも相手は1万年も前のユーレイにチガイナイ。ユーレイとはいえ長生きし過ぎである。
「今、ボクのこと、気色悪いとか思ったでしょ」
「えっ!そ、そんなことないもん!」
明らかに狼狽えながら全力否定する。
「じゃあこれなら、気持ち悪くないかな」
そう言うと、ヒューゴは両手を大きく広げ、僅かに身体を反らせた。すると、全身を覆っていた黄色い光がパッと霧散して、ひとりの青年が姿を現した。
プラチナブロンドに白い肌、金褐色の瞳が印象的の、感じの好い青年だった。世間ではこれをハンサム、というのだろう。
「これでユーレイには見えないよね?」
地に足をつき、キュッリッキを覗き込むように笑う。人懐っこそうな笑顔につられて、キュッリッキは苦笑した。
「ところで、アタシになんの用なの? みんなのところへ戻らないと、アタシじゃなくて仲間が叱られちゃうの」
「なんで叱られちゃうんだい?」
不思議そうに問われ、キュッリッキはバツの悪そうな顔で目線を逸らせた。
「前に別の遺跡の中で、怪物に襲われて大怪我したの。遺跡の中に入ったのはアタシの勝手だったのに、ベルトルドさんもアルカネットさんも、みんなが悪いって怒るの。みんなは悪くないし、アタシのせいなのに……。だからまたこうしてはぐれちゃって、それがバレちゃったらみんなが怒られるんだもん」
「そりゃ、ベルトルドとアルカネットってひとが怒るのは当然だよ。キミが危険な目に遭うのは絶対に阻止し、守らなきゃいけないんだから」
「どうして? アタシ別にお姫様でもなんでもないよ? 仲間の一人ってだけなんだから」
「キミはお姫様以上の存在さ。それを守れず危険な目に遭わせて大怪我をさせたのなら、処刑モンだよ?」
「……言ってる意味が判んない」
何だか噛み合わない、とキュッリッキは困惑した。
「ユリディスと同じ力を持つキミは、特別な存在だ。そのキミを守れないなら、役立たず以上だよ」
どこか自分自身を責めるような言い方だった。
彼は守れなかったのだろうか? ふとキュッリッキは思った。
「守れなかったんだ……。ユリディスも、そして愛するイーダも…。ボクとイーダは反逆者たちに騙され、ユリディスから引き離された。イーダは……ボクの目の前で反逆者たちに、陵辱されて殺されたんだ」
怒りを突き抜けてしまったような、殺伐とした表情でヒューゴは呟くように言った。怒りとやるせなさと、深い悲しみを滲ませた声で。
ヒューゴは目を伏せ、そしてキュッリッキを見た。
「キミは、絶対守られなければならない存在だ。多大な犠牲を払っても、守るべき存在なんだよ」
(思えば地面から浮いてるし、光ってて輪郭もぼんやりしているし、心象風景を投影したとか、ユーレイの仕業じゃなくてなんというんだろう!?)
超古代文明の遺跡だって言うから、絶対こういうものはツキモノなんだ、とキュッリッキは空を仰いだ。
別にユーレイ自体は怖くはないが、気色悪いとは思っている。しかも相手は1万年も前のユーレイにチガイナイ。ユーレイとはいえ長生きし過ぎである。
「今、ボクのこと、気色悪いとか思ったでしょ」
「えっ!そ、そんなことないもん!」
明らかに狼狽えながら全力否定する。
「じゃあこれなら、気持ち悪くないかな」
そう言うと、ヒューゴは両手を大きく広げ、僅かに身体を反らせた。すると、全身を覆っていた黄色い光がパッと霧散して、ひとりの青年が姿を現した。
プラチナブロンドに白い肌、金褐色の瞳が印象的の、感じの好い青年だった。世間ではこれをハンサム、というのだろう。
「これでユーレイには見えないよね?」
地に足をつき、キュッリッキを覗き込むように笑う。人懐っこそうな笑顔につられて、キュッリッキは苦笑した。
「ところで、アタシになんの用なの? みんなのところへ戻らないと、アタシじゃなくて仲間が叱られちゃうの」
「なんで叱られちゃうんだい?」
不思議そうに問われ、キュッリッキはバツの悪そうな顔で目線を逸らせた。
「前に別の遺跡の中で、怪物に襲われて大怪我したの。遺跡の中に入ったのはアタシの勝手だったのに、ベルトルドさんもアルカネットさんも、みんなが悪いって怒るの。みんなは悪くないし、アタシのせいなのに……。だからまたこうしてはぐれちゃって、それがバレちゃったらみんなが怒られるんだもん」
「そりゃ、ベルトルドとアルカネットってひとが怒るのは当然だよ。キミが危険な目に遭うのは絶対に阻止し、守らなきゃいけないんだから」
「どうして? アタシ別にお姫様でもなんでもないよ? 仲間の一人ってだけなんだから」
「キミはお姫様以上の存在さ。それを守れず危険な目に遭わせて大怪我をさせたのなら、処刑モンだよ?」
「……言ってる意味が判んない」
何だか噛み合わない、とキュッリッキは困惑した。
「ユリディスと同じ力を持つキミは、特別な存在だ。そのキミを守れないなら、役立たず以上だよ」
どこか自分自身を責めるような言い方だった。
彼は守れなかったのだろうか? ふとキュッリッキは思った。
「守れなかったんだ……。ユリディスも、そして愛するイーダも…。ボクとイーダは反逆者たちに騙され、ユリディスから引き離された。イーダは……ボクの目の前で反逆者たちに、陵辱されて殺されたんだ」
怒りを突き抜けてしまったような、殺伐とした表情でヒューゴは呟くように言った。怒りとやるせなさと、深い悲しみを滲ませた声で。
ヒューゴは目を伏せ、そしてキュッリッキを見た。
「キミは、絶対守られなければならない存在だ。多大な犠牲を払っても、守るべき存在なんだよ」
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