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エルアーラ遺跡編
episode404
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狼狽えたようなメルヴィンの声に「え?」と皆振り向いた。そして辺りを見回してみると、確かにキュッリッキがいない。
「まだ上にいんのか? 降りてきてない?」
「えー、アタシぃ一緒に降りてきたよ~??」
「白黒犬はココにいんぞ」
ザカリーがフェンリルとフローズヴィトニルを指差す。
皆の視線が二匹に集中する。
どこか気まずそうな雰囲気を貼り付けた顔のフェンリルと、能天気さを貼り付けた顔のフローズヴィトニルが、揃って明後日の方向を向いていた。
たっぷりと沈黙の間を空けたあと、
「キューリが消えただとおおおお!!??」
絶叫がフロアに鳴り響いた。
「あ……あれ?」
キュッリッキは目をぱちくりさせながら、自分が置かれている場に驚きを隠せなかった。
みんなと一緒に暗い簡易階段を降りていったはずなのに、気がついたらみんなが居ない。そして周りは白い雲の浮かぶ青空と、新緑の綺麗な平原に変わっている。
「えっと…、どこなんだろう……」
遺跡の中へ入っていったはずなのに、どう見ても遺跡の中とは思えない。
明らかにみんなとはぐれていた。
しかしこれがベルトルドやアルカネットにバレたら、自分ではなく、ライオン傭兵団のみんなが責められることになるのだ。それは物凄く嫌だし、とても困る。
「やあ」
困り果てたキュッリッキの背後から、陽気な声がかけられた。
びっくりして振り向くと、黄色い光に包まれ輪郭のはっきりしない、なにかが立っていた。
「だ、誰?」
「ボクはヒューゴ、初めまして」
にっこりと笑ったような声が名乗る。
たっぷりと間を空けたあと、キュッリッキはごくりと生唾を飲み込んで、黄色い何かを睨みつけた。
「ここドコなの? あなたのせいなの? アタシみんなのところに戻らなくちゃ」
「ボクの心象風景を投影しているだけさ、遺跡の中だよ。そんなに怖がらなくていい、害する気はないから」
そう言われても、こんな訳のわからないところへ連れてこられて、みんなとはぐれて、怖いというよりとても困るのだ。
「フェ…」
フェンリルを呼ぼうとして足元にいないことに気づく。
その瞬間、ナルバ山の遺跡でのことを思い出し、足元から冷えた感覚が這い上ってきて顔が強ばった。あの時フェンリルは、強制的にアルケラに帰還させられてしまったのだ。そして今度は、側にいないなんて。
召喚することができなければ無力で非力な、逃げ回ることしかできなかった自分を思い出しゾッとする。
そんなキュッリッキの様子を見て、ヒューゴは困ったような声を上げた。
「ごめん、本当に何もしないから。用事がすんだら、必ずみんなのところへ戻してあげる。だからちょっとだけ付き合ってほしい」
強ばった表情でヒューゴを見ると、キュッリッキは口を引き結んで小さく頷いた。この何かに帰してもらわない限り、何も出来そうもなかった。
「キミがここへ足を踏み入れた瞬間、キミのことが判った。懐かしい力の波動を感じたからね」
ヒューゴは草の上を僅かに浮かんで、滑るようにキュッリッキの周りをくるくる回った。
「キミはユリディスじゃないけど、彼女と同じ力を持っているんだね」
「ユリディス?」
訝しみながら名を呟くと、光に包まれ曖昧にしか見えないヒューゴの顔が、にっこりと笑った気がした。
「そう。優しくて、おとなしくて、控えめで。でも芯が強くて、素敵な女の子だった」
「だった……」
「彼女は、死んでしまったよ」
ひどく無念そうにヒューゴは言った。
「ボクは彼女を守る騎士(アピストリ)だったのに、彼女から引き離され、反逆者どもに殺された」
「え、じゃあ、あなたユーレイ!?」
「まだ上にいんのか? 降りてきてない?」
「えー、アタシぃ一緒に降りてきたよ~??」
「白黒犬はココにいんぞ」
ザカリーがフェンリルとフローズヴィトニルを指差す。
皆の視線が二匹に集中する。
どこか気まずそうな雰囲気を貼り付けた顔のフェンリルと、能天気さを貼り付けた顔のフローズヴィトニルが、揃って明後日の方向を向いていた。
たっぷりと沈黙の間を空けたあと、
「キューリが消えただとおおおお!!??」
絶叫がフロアに鳴り響いた。
「あ……あれ?」
キュッリッキは目をぱちくりさせながら、自分が置かれている場に驚きを隠せなかった。
みんなと一緒に暗い簡易階段を降りていったはずなのに、気がついたらみんなが居ない。そして周りは白い雲の浮かぶ青空と、新緑の綺麗な平原に変わっている。
「えっと…、どこなんだろう……」
遺跡の中へ入っていったはずなのに、どう見ても遺跡の中とは思えない。
明らかにみんなとはぐれていた。
しかしこれがベルトルドやアルカネットにバレたら、自分ではなく、ライオン傭兵団のみんなが責められることになるのだ。それは物凄く嫌だし、とても困る。
「やあ」
困り果てたキュッリッキの背後から、陽気な声がかけられた。
びっくりして振り向くと、黄色い光に包まれ輪郭のはっきりしない、なにかが立っていた。
「だ、誰?」
「ボクはヒューゴ、初めまして」
にっこりと笑ったような声が名乗る。
たっぷりと間を空けたあと、キュッリッキはごくりと生唾を飲み込んで、黄色い何かを睨みつけた。
「ここドコなの? あなたのせいなの? アタシみんなのところに戻らなくちゃ」
「ボクの心象風景を投影しているだけさ、遺跡の中だよ。そんなに怖がらなくていい、害する気はないから」
そう言われても、こんな訳のわからないところへ連れてこられて、みんなとはぐれて、怖いというよりとても困るのだ。
「フェ…」
フェンリルを呼ぼうとして足元にいないことに気づく。
その瞬間、ナルバ山の遺跡でのことを思い出し、足元から冷えた感覚が這い上ってきて顔が強ばった。あの時フェンリルは、強制的にアルケラに帰還させられてしまったのだ。そして今度は、側にいないなんて。
召喚することができなければ無力で非力な、逃げ回ることしかできなかった自分を思い出しゾッとする。
そんなキュッリッキの様子を見て、ヒューゴは困ったような声を上げた。
「ごめん、本当に何もしないから。用事がすんだら、必ずみんなのところへ戻してあげる。だからちょっとだけ付き合ってほしい」
強ばった表情でヒューゴを見ると、キュッリッキは口を引き結んで小さく頷いた。この何かに帰してもらわない限り、何も出来そうもなかった。
「キミがここへ足を踏み入れた瞬間、キミのことが判った。懐かしい力の波動を感じたからね」
ヒューゴは草の上を僅かに浮かんで、滑るようにキュッリッキの周りをくるくる回った。
「キミはユリディスじゃないけど、彼女と同じ力を持っているんだね」
「ユリディス?」
訝しみながら名を呟くと、光に包まれ曖昧にしか見えないヒューゴの顔が、にっこりと笑った気がした。
「そう。優しくて、おとなしくて、控えめで。でも芯が強くて、素敵な女の子だった」
「だった……」
「彼女は、死んでしまったよ」
ひどく無念そうにヒューゴは言った。
「ボクは彼女を守る騎士(アピストリ)だったのに、彼女から引き離され、反逆者どもに殺された」
「え、じゃあ、あなたユーレイ!?」
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