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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode396
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なにか会話でもと思ったが、しかし思いつくのは老婆心のような案じ方だけで、メルヴィンは落胆した。気の利いたセリフの一つも、満足に言えない自分に嫌気がさす。
「う、うん…」
キュッリッキはキュッリッキのほうで、ひっくり返りそうな意識を必死につなぎ止めておくので大変だった。
顔はゆでダコのように、赤くなるのが止まらない。薄暗い中でもそばにいればはっきり判ってしまいそうで、それも困る。
チラッと横目でメルヴィンを見ると、月明かりに照らされた横顔がとても綺麗で、うっとりとなった。精悍で男らしい顔つきだが、整っていて凛々しいのだ。
濡れた髪の毛をオールバックに撫で付けていて、乾きだした髪の毛のいく筋がハラリと解け、波打って顔や耳の上にかかっている。
いつも襟元をきっちりとめた服を着ている姿に見慣れているので、バスローブの合わせた襟元から覗く喉元や胸に、ドギマギしてしまう。
散々ベルトルドで同じものを見ているはずなのに、それがメルヴィンの肌だと思うだけで、目眩がしそうなほど頭の芯が痺れた。
(メルヴィンは男の人なんだ)
そう考えただけで、キュッリッキの全身は硬直した。心臓もドキドキしっぱなしで、本当に心臓発作でも起こしそうに思えてならない。
なんとなく2人は黙り込んで、静かな時間がゆっくりと過ぎていった。
「明日は……」
静かな沈黙を破って、メルヴィンは口を開いた。
「いえ、明日もオレ、守りますから」
キュッリッキはドキドキしながらも、期待を込めた顔をメルヴィンに向ける。
「何があっても、あなたを必ず守ります」
誠実と労りのこもった声でゆっくり言い、メルヴィンは真剣な眼差しで少女を見つめた。
月明かりが柔らかく2人を照らすなか、メルヴィンとキュッリッキは見つめ合い、ゆっくりとお互いの顔の距離を縮めていった。そして――
「ちょっと待ったーーー!!!」
「今何時だと思っているんですか!!」
「えっ」
「ほえ?」
宿の中や敷地から、残念そうな舌打ちがなぜか露骨に聞こえてくる。
「不純異性交遊は禁止だ!!」
「不謹慎です!」
鬼の形相のベルトルドとアルカネットが、大股に2人に歩いてきた。
「明日に備えて寝るぞリッキー!」
言うやいなや、ベルトルドはキュッリッキを抱き上げると、入ってきた時と同じように大股でサンルームを出て行った。
「あなたもさっさと部屋へ戻って寝なさい!」
絶句したまま呆気にとられているメルヴィンに、アルカネットは殺意のこもった目と声で言いおくと、やはり大股に出て行った。
「不純……異性交遊……って………」
その場にひとり残されたメルヴィンは、切なすぎる単語を繰り返し呟き、ガックリと項垂れた。
「う、うん…」
キュッリッキはキュッリッキのほうで、ひっくり返りそうな意識を必死につなぎ止めておくので大変だった。
顔はゆでダコのように、赤くなるのが止まらない。薄暗い中でもそばにいればはっきり判ってしまいそうで、それも困る。
チラッと横目でメルヴィンを見ると、月明かりに照らされた横顔がとても綺麗で、うっとりとなった。精悍で男らしい顔つきだが、整っていて凛々しいのだ。
濡れた髪の毛をオールバックに撫で付けていて、乾きだした髪の毛のいく筋がハラリと解け、波打って顔や耳の上にかかっている。
いつも襟元をきっちりとめた服を着ている姿に見慣れているので、バスローブの合わせた襟元から覗く喉元や胸に、ドギマギしてしまう。
散々ベルトルドで同じものを見ているはずなのに、それがメルヴィンの肌だと思うだけで、目眩がしそうなほど頭の芯が痺れた。
(メルヴィンは男の人なんだ)
そう考えただけで、キュッリッキの全身は硬直した。心臓もドキドキしっぱなしで、本当に心臓発作でも起こしそうに思えてならない。
なんとなく2人は黙り込んで、静かな時間がゆっくりと過ぎていった。
「明日は……」
静かな沈黙を破って、メルヴィンは口を開いた。
「いえ、明日もオレ、守りますから」
キュッリッキはドキドキしながらも、期待を込めた顔をメルヴィンに向ける。
「何があっても、あなたを必ず守ります」
誠実と労りのこもった声でゆっくり言い、メルヴィンは真剣な眼差しで少女を見つめた。
月明かりが柔らかく2人を照らすなか、メルヴィンとキュッリッキは見つめ合い、ゆっくりとお互いの顔の距離を縮めていった。そして――
「ちょっと待ったーーー!!!」
「今何時だと思っているんですか!!」
「えっ」
「ほえ?」
宿の中や敷地から、残念そうな舌打ちがなぜか露骨に聞こえてくる。
「不純異性交遊は禁止だ!!」
「不謹慎です!」
鬼の形相のベルトルドとアルカネットが、大股に2人に歩いてきた。
「明日に備えて寝るぞリッキー!」
言うやいなや、ベルトルドはキュッリッキを抱き上げると、入ってきた時と同じように大股でサンルームを出て行った。
「あなたもさっさと部屋へ戻って寝なさい!」
絶句したまま呆気にとられているメルヴィンに、アルカネットは殺意のこもった目と声で言いおくと、やはり大股に出て行った。
「不純……異性交遊……って………」
その場にひとり残されたメルヴィンは、切なすぎる単語を繰り返し呟き、ガックリと項垂れた。
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