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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode392
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アルカネットが小さく息をつくと、キュッリッキだけが不思議そうに首をかしげた。
「全員揃ってないが、諸々明日からのことを話しておくぞ」
ベルトルドの声に皆背筋を伸ばして、居住まいを正した。
「6月にアルイールで暴れていたソレル王国軍が、各同盟国に潜り込んでいたようで、さきほどボルクンド王国軍の援軍として現れ、第ニ正規部隊と全面衝突したそうだ。こちらの準備がどこもまだ整っていないが、今日明日には正式に開戦となるだろう」
小さく頷いたカーティスは、簾のような前髪の奥で目を眇めた。
「では、他の国にも同様に現れる可能性があるでしょうねえ」
「うん。リューに確認を取ったところ、やはり出てきたようだ。こちらが準備不足なのが判っていて襲って来るから、トコトン可愛げがない」
「現地は意表をつかれて、だいぶ焦っているそうです」
アルカネットが補足すると、カーティスはわざとらしく肩をすくめ、両手で『お手上げ』の形をとった。
「こんなことなら、6月に半壊させておくんでしたね」
「ホントにね~。ここぞとばかりに暴れてやればよかったな」
ルーファスが苦笑気味に同意する。
「救出と大暴れの両立は厳しかったろ」
ちぇっと口を尖らせ、ギャリーが真面目くさった形で不満を漏らした。
食堂に漂う残念ムードに、ベルトルドは小さく笑う。
「雑魚の相手は正規部隊にでも任せておけばいい。それよりお前たち、わざわざ軍に混ぜて、メンドくさい行程で集まってもらったが、頼んでおいたことは調査してきたな?」
キュッリッキ、ルーファス、メルヴィン以外のライオン傭兵団の皆は頷いた。
「報道機関や関係者への情報漏洩はありませんでした。一様に戦争に集中しているようです。エルアーラ遺跡のことに関しては、問題ないと思われます」
一同を代表してカーティスが報告する。
「エルアーラ遺跡の詳細を知る者は殆どおらず、――我々も当然知りません。とくダネ目当てで忍び込んでくる記者も居ませんでしたし、ダエヴァの監視もあったので大丈夫だと判断します」
今回ライオン傭兵団を軍に一時徴兵し、各部隊へ潜り込ませ移動させたのは、重要な仕事を与えたからだ。
軍内部と他国の報道機関についての調査と、場合によっては処理を行い、闇へ屠る役目も担っていた。
エルアーラ遺跡については、世界中でその存在自体は知られているが、遺跡がどういうものなのかの詳細は秘匿されている。遺跡はボルクンド王国内にあるが、管理を皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルが行っていることは、公にはされていない。
その遺跡をソレル王国が乗っ取り、遺跡から世界中へ宣戦布告を行った事が大問題だった。
世界の関心は遺跡のことではなく、属国の身で主(あるじ)に喧嘩を仕掛けたソレル王国と同盟国の方へ向いていた。しかし何故遺跡で宣言を発したのか? と疑問符を持つ者がいて、そのどさくさに紛れて遺跡に注目する報道機関関係者が出てくれば、軍の末端から情報を買収し機密が漏れる可能性がある。
大組織にもなると末端まで管理しきれない部分があり、そこは現在どうしようもない有様なのが常に悩みの種だ。
エルアーラ遺跡のことは情報がもれないよう、ケレヴィルの職員には徹底した箝口令が常に敷かれている。しかし軍になると、どうしても目が行き届かない。こと戦争準備期間はなおさらだった。
ダエヴァの監視も常に潜り込ませていたが、人員的に限度がある。その為身軽なライオン傭兵団を使い、その調査を命じてあったのだ。
「全員揃ってないが、諸々明日からのことを話しておくぞ」
ベルトルドの声に皆背筋を伸ばして、居住まいを正した。
「6月にアルイールで暴れていたソレル王国軍が、各同盟国に潜り込んでいたようで、さきほどボルクンド王国軍の援軍として現れ、第ニ正規部隊と全面衝突したそうだ。こちらの準備がどこもまだ整っていないが、今日明日には正式に開戦となるだろう」
小さく頷いたカーティスは、簾のような前髪の奥で目を眇めた。
「では、他の国にも同様に現れる可能性があるでしょうねえ」
「うん。リューに確認を取ったところ、やはり出てきたようだ。こちらが準備不足なのが判っていて襲って来るから、トコトン可愛げがない」
「現地は意表をつかれて、だいぶ焦っているそうです」
アルカネットが補足すると、カーティスはわざとらしく肩をすくめ、両手で『お手上げ』の形をとった。
「こんなことなら、6月に半壊させておくんでしたね」
「ホントにね~。ここぞとばかりに暴れてやればよかったな」
ルーファスが苦笑気味に同意する。
「救出と大暴れの両立は厳しかったろ」
ちぇっと口を尖らせ、ギャリーが真面目くさった形で不満を漏らした。
食堂に漂う残念ムードに、ベルトルドは小さく笑う。
「雑魚の相手は正規部隊にでも任せておけばいい。それよりお前たち、わざわざ軍に混ぜて、メンドくさい行程で集まってもらったが、頼んでおいたことは調査してきたな?」
キュッリッキ、ルーファス、メルヴィン以外のライオン傭兵団の皆は頷いた。
「報道機関や関係者への情報漏洩はありませんでした。一様に戦争に集中しているようです。エルアーラ遺跡のことに関しては、問題ないと思われます」
一同を代表してカーティスが報告する。
「エルアーラ遺跡の詳細を知る者は殆どおらず、――我々も当然知りません。とくダネ目当てで忍び込んでくる記者も居ませんでしたし、ダエヴァの監視もあったので大丈夫だと判断します」
今回ライオン傭兵団を軍に一時徴兵し、各部隊へ潜り込ませ移動させたのは、重要な仕事を与えたからだ。
軍内部と他国の報道機関についての調査と、場合によっては処理を行い、闇へ屠る役目も担っていた。
エルアーラ遺跡については、世界中でその存在自体は知られているが、遺跡がどういうものなのかの詳細は秘匿されている。遺跡はボルクンド王国内にあるが、管理を皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルが行っていることは、公にはされていない。
その遺跡をソレル王国が乗っ取り、遺跡から世界中へ宣戦布告を行った事が大問題だった。
世界の関心は遺跡のことではなく、属国の身で主(あるじ)に喧嘩を仕掛けたソレル王国と同盟国の方へ向いていた。しかし何故遺跡で宣言を発したのか? と疑問符を持つ者がいて、そのどさくさに紛れて遺跡に注目する報道機関関係者が出てくれば、軍の末端から情報を買収し機密が漏れる可能性がある。
大組織にもなると末端まで管理しきれない部分があり、そこは現在どうしようもない有様なのが常に悩みの種だ。
エルアーラ遺跡のことは情報がもれないよう、ケレヴィルの職員には徹底した箝口令が常に敷かれている。しかし軍になると、どうしても目が行き届かない。こと戦争準備期間はなおさらだった。
ダエヴァの監視も常に潜り込ませていたが、人員的に限度がある。その為身軽なライオン傭兵団を使い、その調査を命じてあったのだ。
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