408 / 882
モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode389
しおりを挟む
楡の木まで一目散に駆けてきたベルトルドは、キュッリッキの膝枕で気持ちよさそうに寝るアルカネットを仁王立ちで見おろした。両脇で握り締めた拳が、怒りの感情と共にワナワナと震えている。
「いつまで寝ている!!」
辺りに轟くほどの大声で、ベルトルドが怒鳴った。
キュッリッキはびっくりして目をぱちくりさせると、ベルトルドを見上げた。フェンリルとフローズヴィトニルも驚いて、目を覚ましてしまった。
「もうちょっと寝かせてあげようよ、寝不足って言ってたし」
「昼寝は15分がちょうどいいんだ」
突っ慳貪に言われたのが不満で、キュッリッキは片方の頬をぷっくりと膨らませて拗ねた。
「リッキーさんに八つ当たりすることないでしょう、大人気ないですね」
ゆっくりと目を開くと、アルカネットはじろりとベルトルドを睨んだ。
「起きたんだったらリッキーから離れろ! 図々しい奴め!! リッキーの柔らかな膝を独占しおって羨ましいことを」
「気持ちがいいので、もう少しこのままで、まどろんでいたいですね」
今にも胸ぐらを掴みかかってきそうなベルトルドを、挑発するように見上げると、アルカネットはキュッリッキの脚を堪能するように頬を擦り付けた。
「オマエなっ…」
「閣下ー!!」
そこへ四角い顔のアルヴァー大佐が、大声を張り上げながら、息せき切って駆け寄ってきた。ただならぬアルヴァー大佐の表情を見やって、白熱しかかったベルトルドの顔がスッと真顔になる。
「おくつろぎのところ申し訳ございません! アルイールの本部から緊急連絡が入りました」
「内容は?」
「はっ、ボルクンド王国の首都ヘリクリサムに、ボルクンド王国側の援軍が到来して、第ニ正規部隊と衝突、ヘリクリサムでの市街地戦が、大規模に膨れ上がってしまったそうです」
「ボルクンドに援軍……」
眉をしかめたベルトルドに、アルカネットが身体を起こしながら頷いた。
「おそらく姿をくらましていた、6月のソレル王国の軍でしょう。どこに潜伏していたのか見つけ出すことが出来ませんでしたが。どうやらエルアーラまで撤退させず、同盟国に潜り込ませていたのでしょうね」
「むう、そうだろうな。でなければ都合よくポッと出てくるわけがない。エグザイル・システムはこちらで抑えてあるし、監視もばら蒔いている。――ったく開戦予定まで、まだ5日あるんだがな。こちらの準備が整ってないだろう?」
アルカネットは神妙な表情で即肯定する。
「現地は厳しいでしょうね。そもそもあと5日で準備を整えるほうが大変な状態でしょうし。とは言っても準備完了を待って、というわけにもいきません。現場の判断に任せたほうがよろしいかと」
片手を腰にあて、もう片方の手で頭をカシカシ掻くと、ベルトルドはやれやれと首を振った。
「ブルーベル将軍とリューには直接俺から連絡を入れる。アルヴァーは本部から入る連絡を随時報告してくれ」
「承りました!」
シャキっと敬礼すると、アルヴァー大佐は慌てて駆けていった。その後ろ姿を見送りながら、唸りつつベルトルドは腕を組む。
「これだとエクダル国、ベルマン公国にもソレル王国軍が援軍として派遣されててもおかしくないな」
「ええ、出てくるでしょうね」
6月の時点で追跡部隊を出しておくんだった、とベルトルドは舌打ちし、アルカネットは肩をすくめた。
あの時はキュッリッキの大怪我で、それどころではなかった。そしてナルバ山の遺跡など、どうしても気がかりなことがあったのも影響している。それでも落ち度だったことは否めない。
イソラの町に待機を命じたマリオン、ザカリー、マーゴットの調査では、そのことは掴めていなかった。うまく隠していたようである。
「食えないジジイだな、ソレル王」
「いつまで寝ている!!」
辺りに轟くほどの大声で、ベルトルドが怒鳴った。
キュッリッキはびっくりして目をぱちくりさせると、ベルトルドを見上げた。フェンリルとフローズヴィトニルも驚いて、目を覚ましてしまった。
「もうちょっと寝かせてあげようよ、寝不足って言ってたし」
「昼寝は15分がちょうどいいんだ」
突っ慳貪に言われたのが不満で、キュッリッキは片方の頬をぷっくりと膨らませて拗ねた。
「リッキーさんに八つ当たりすることないでしょう、大人気ないですね」
ゆっくりと目を開くと、アルカネットはじろりとベルトルドを睨んだ。
「起きたんだったらリッキーから離れろ! 図々しい奴め!! リッキーの柔らかな膝を独占しおって羨ましいことを」
「気持ちがいいので、もう少しこのままで、まどろんでいたいですね」
今にも胸ぐらを掴みかかってきそうなベルトルドを、挑発するように見上げると、アルカネットはキュッリッキの脚を堪能するように頬を擦り付けた。
「オマエなっ…」
「閣下ー!!」
そこへ四角い顔のアルヴァー大佐が、大声を張り上げながら、息せき切って駆け寄ってきた。ただならぬアルヴァー大佐の表情を見やって、白熱しかかったベルトルドの顔がスッと真顔になる。
「おくつろぎのところ申し訳ございません! アルイールの本部から緊急連絡が入りました」
「内容は?」
「はっ、ボルクンド王国の首都ヘリクリサムに、ボルクンド王国側の援軍が到来して、第ニ正規部隊と衝突、ヘリクリサムでの市街地戦が、大規模に膨れ上がってしまったそうです」
「ボルクンドに援軍……」
眉をしかめたベルトルドに、アルカネットが身体を起こしながら頷いた。
「おそらく姿をくらましていた、6月のソレル王国の軍でしょう。どこに潜伏していたのか見つけ出すことが出来ませんでしたが。どうやらエルアーラまで撤退させず、同盟国に潜り込ませていたのでしょうね」
「むう、そうだろうな。でなければ都合よくポッと出てくるわけがない。エグザイル・システムはこちらで抑えてあるし、監視もばら蒔いている。――ったく開戦予定まで、まだ5日あるんだがな。こちらの準備が整ってないだろう?」
アルカネットは神妙な表情で即肯定する。
「現地は厳しいでしょうね。そもそもあと5日で準備を整えるほうが大変な状態でしょうし。とは言っても準備完了を待って、というわけにもいきません。現場の判断に任せたほうがよろしいかと」
片手を腰にあて、もう片方の手で頭をカシカシ掻くと、ベルトルドはやれやれと首を振った。
「ブルーベル将軍とリューには直接俺から連絡を入れる。アルヴァーは本部から入る連絡を随時報告してくれ」
「承りました!」
シャキっと敬礼すると、アルヴァー大佐は慌てて駆けていった。その後ろ姿を見送りながら、唸りつつベルトルドは腕を組む。
「これだとエクダル国、ベルマン公国にもソレル王国軍が援軍として派遣されててもおかしくないな」
「ええ、出てくるでしょうね」
6月の時点で追跡部隊を出しておくんだった、とベルトルドは舌打ちし、アルカネットは肩をすくめた。
あの時はキュッリッキの大怪我で、それどころではなかった。そしてナルバ山の遺跡など、どうしても気がかりなことがあったのも影響している。それでも落ち度だったことは否めない。
イソラの町に待機を命じたマリオン、ザカリー、マーゴットの調査では、そのことは掴めていなかった。うまく隠していたようである。
「食えないジジイだな、ソレル王」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる