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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode387
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「あんたらも着いたのね~、おひさー」
着崩した軍服姿のギャリーとザカリーが、腹を抱えこれでもかと笑っていた。
ギャリーとザカリーは3人の姿が見えたので、ワッと驚かせようと忍び寄っていたが、キュッリッキがベルトルドの股間を蹴り上げた話が耳に入ってきて、咄嗟に爆笑してしまったのである。
「キューリもやるようになったじぇねえか。ついにおっさんに手を出されそうになって、抵抗したのか?」
涙を浮かべて笑いながら、ギャリーが挨拶がわりにキュッリッキの頭を、ガシガシと乱暴に撫で回した。
「ちがーう! トイレ行きたかったんだけど、ベルトルドさんにしっかり抱きしめられてて抜けられなかったから。だって叩いても起きないんだもん」
唇を可愛く尖らせながら、乱れた髪を両手で撫でて直す。
「そーいや、こないだルーからキンタマ蹴りの秘技を教わってたな。まさかそれをベルトルドのおっさんに実践するとか、おまえもすげーな」
ザカリーが若干同情するように言う。
「ルーさん言ったように、とーっても効果的で、ベルトルドさんすぐ起きたんだよ」
えっへんと得意そうなキュッリッキに、ギャリーとザカリーとマリオンはさらに大笑いした。ペルラは「やれやれ」と呆れたように尻尾を振る。
「騒々しい……ですね……」
むにゃむにゃっと呻くようにアルカネットが寝言をもらしたが、そのまま再び寝入ってしまった。一瞬場が固まったが、アルカネットが目を覚まさなかったので、キュッリッキを抜かした一同はホッと胸を撫で下ろした。
「よっぽど眠いんだな」
ペルラが肩をすくめる。
この喧騒の中でも起きないアルカネットに、皆はやや呆れたような視線を投げかけた。
うつ伏せに倒れたルーファスの後頭部をグリグリと容赦なく踏みつけ、ベルトルドは腕を組んで居丈高に怒鳴りつけていた。
「勃たなくなったら貴様のせいだからな!!」
「そ……そればっかりは……」
どんだけの威力でクリティカルヒットしたんだよ!? と思えるほどの怒りっぷりである。勃つかどうか心配するくらいだから、よほど絶妙に命中したんだろう。
(ていうか、怒るのそこなの!?)
ルーファスは心の中で、疲れたように薄笑った。
「おいおい、まるでハリケーンが通り過ぎたような有様だな、こりゃ」
「ぬっ」
なんじゃこりゃと吃驚しているギャリーたちの声に気づいて、ベルトルドは食堂の入口へ顔を向けた。
「やっと着いたか、遅いぞ役立たずども!!」
「ヒッ! なかなか遠かったっす」
速攻怒鳴られて、ギャリーは首をすくめた。後ろに続いたマリオンとザカリーも、ヒェッと首をすくめる。
フンッと鼻息を吐き出すと、顎をしゃくった。
「ここはお前らで片付けておけ」
「え~~~~~っ」と超不満そうな声が一斉にあがり、ベルトルドはさらにルーファスの頭を踏みしめ、キッと睨みつけた。
「飯抜くぞ!」
「それは嫌です」
壁際に避難していたカーティスが、キリッと即答した。
「さあさあ皆さん、さっさとお片づけしましょうか。――全く、私たちがやったわけでもないのに、しょうもない大人の癇癪に付き合わされるこっちの身にもなっていただきたいものですね。ああ、めんどくさいですが、しょうがなくテキパキとっとと早くやりましょう」
聞えよがしに各自嫌味を振りまいて、カーティスたちは荒れ狂ったあとの食堂の片付けを開始した。
着崩した軍服姿のギャリーとザカリーが、腹を抱えこれでもかと笑っていた。
ギャリーとザカリーは3人の姿が見えたので、ワッと驚かせようと忍び寄っていたが、キュッリッキがベルトルドの股間を蹴り上げた話が耳に入ってきて、咄嗟に爆笑してしまったのである。
「キューリもやるようになったじぇねえか。ついにおっさんに手を出されそうになって、抵抗したのか?」
涙を浮かべて笑いながら、ギャリーが挨拶がわりにキュッリッキの頭を、ガシガシと乱暴に撫で回した。
「ちがーう! トイレ行きたかったんだけど、ベルトルドさんにしっかり抱きしめられてて抜けられなかったから。だって叩いても起きないんだもん」
唇を可愛く尖らせながら、乱れた髪を両手で撫でて直す。
「そーいや、こないだルーからキンタマ蹴りの秘技を教わってたな。まさかそれをベルトルドのおっさんに実践するとか、おまえもすげーな」
ザカリーが若干同情するように言う。
「ルーさん言ったように、とーっても効果的で、ベルトルドさんすぐ起きたんだよ」
えっへんと得意そうなキュッリッキに、ギャリーとザカリーとマリオンはさらに大笑いした。ペルラは「やれやれ」と呆れたように尻尾を振る。
「騒々しい……ですね……」
むにゃむにゃっと呻くようにアルカネットが寝言をもらしたが、そのまま再び寝入ってしまった。一瞬場が固まったが、アルカネットが目を覚まさなかったので、キュッリッキを抜かした一同はホッと胸を撫で下ろした。
「よっぽど眠いんだな」
ペルラが肩をすくめる。
この喧騒の中でも起きないアルカネットに、皆はやや呆れたような視線を投げかけた。
うつ伏せに倒れたルーファスの後頭部をグリグリと容赦なく踏みつけ、ベルトルドは腕を組んで居丈高に怒鳴りつけていた。
「勃たなくなったら貴様のせいだからな!!」
「そ……そればっかりは……」
どんだけの威力でクリティカルヒットしたんだよ!? と思えるほどの怒りっぷりである。勃つかどうか心配するくらいだから、よほど絶妙に命中したんだろう。
(ていうか、怒るのそこなの!?)
ルーファスは心の中で、疲れたように薄笑った。
「おいおい、まるでハリケーンが通り過ぎたような有様だな、こりゃ」
「ぬっ」
なんじゃこりゃと吃驚しているギャリーたちの声に気づいて、ベルトルドは食堂の入口へ顔を向けた。
「やっと着いたか、遅いぞ役立たずども!!」
「ヒッ! なかなか遠かったっす」
速攻怒鳴られて、ギャリーは首をすくめた。後ろに続いたマリオンとザカリーも、ヒェッと首をすくめる。
フンッと鼻息を吐き出すと、顎をしゃくった。
「ここはお前らで片付けておけ」
「え~~~~~っ」と超不満そうな声が一斉にあがり、ベルトルドはさらにルーファスの頭を踏みしめ、キッと睨みつけた。
「飯抜くぞ!」
「それは嫌です」
壁際に避難していたカーティスが、キリッと即答した。
「さあさあ皆さん、さっさとお片づけしましょうか。――全く、私たちがやったわけでもないのに、しょうもない大人の癇癪に付き合わされるこっちの身にもなっていただきたいものですね。ああ、めんどくさいですが、しょうがなくテキパキとっとと早くやりましょう」
聞えよがしに各自嫌味を振りまいて、カーティスたちは荒れ狂ったあとの食堂の片付けを開始した。
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