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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode384
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ベルトルドが股間の痛みに涙を流している頃、ソレル王国首都アルイールにある王宮に仮設本部を築いて、ブルーベル将軍、第ニ正規部隊、リュリュらは陣取っていた。
第ニ正規部隊の長アークラ大将は、ボルクンド王国首都ヘリクリサムで起こった暴動を鎮圧するため、自ら出向いて留守にしている。
「カルロッテ王女に指揮されたボルクンド軍は、だいぶ指揮が高まって、威勢が良いようですねえ」
つぶらな瞳を真ん丸くしながら、ブルーベル将軍はため息混じりに肩を揺すった。
「そうなのよね。あの大年増に指揮官として才能があったとは、さすがにアタシでも思わなかったけど」
両手を腰にあてながら、リュリュは呆れたように垂れ目を眇める。次々と寄せられる報告書に、2人はうんざりしていた。
「まあ、閣下のご指定の期日までには、配置も完了しそうですが」
8月10日にソレル王国、エクダル国、ボルクンド王国、ベルマン公国の首都で一斉に狼煙を上げる予定になっている。
7月29日から海上戦力、一部先行部隊、物資などの運搬は開始されており、8月3日には全軍が出撃していた。
8月5日の現在、各国への移動はすべて完了していたが、敵国へ乗り込んでいるので陣を取るための場所の確保、偵察、情報収集、命令系統の調整、各部隊との連絡、連携など、やることがいっぱいあり、行けばすぐ開戦するというわけにはいかなかった。
「それに我が軍は、これほどの大規模な戦争の経験がないですからねえ。3年前とは比べ物になりません。そこが色々と心配です」
「現地での略奪、婦女暴行、無差別殺人、やるなと言ってもやるバカは必ずいるでしょうし、一応警務部隊と尋問・拷問部隊の連中を、各軍に配置しているから件数だけは減らせるかもね」
「綺麗な戦争などというものはありませんが、出来るだけ余計な怨念は振りまかないように心がけたいものです」
ブルーベル将軍の言葉に、同意するようにリュリュは頷いた。
「ところで閣下のほうは、つつがなく進んでおるのでしょうか?」
「ええ、無事小娘と合流してフェルトに着いたようだし、ライオン傭兵団の連中も数日で全員揃うと思うわ」
「閣下とご一緒なら、あの可愛らしいお嬢さんも大丈夫でしょう」
「あら、将軍はあの小娘が、だいぶお気に入りのようね」
ちらりとリュリュは大きな白クマの将軍を見る。
ブルーベル将軍は愛嬌たっぷりの笑みを浮かべ、大きく頷いた。
「なにせあんなに嬉しそうに、トゥーリ族に抱きついてくるアイオン族などいませんからな。それに、あのお嬢さんは間接的に、ワシと浅からぬ縁があるのです」
「あら?」
「お嬢さんが所属しているライオン傭兵団に、ガエルという男がおるでしょう。あれはワシの親類なのですよ」
「まあ、それは驚いたわ」
本当にびっくりしたように、リュリュは垂れ目を見開いた。
「ワシの妹の息子なのです」
にこにこと嬉しそうである。そんなブルーベル将軍を見やって、リュリュも微笑した。
「お嬢さんのほうは遺跡でしたね。相当厄介な遺跡だと伺ってますが」
「1万年も前のものだけど、完全な形で生き残っていて、機能の全てもまだ生きているから」
そこを乗っ取り、立てこもっているソレル国王。
「でも、ベルとアルが一緒だから、大丈夫よ」
確信と自信に満ちた声でリュリュは言うと、妖しい笑みをより深めた。
第ニ正規部隊の長アークラ大将は、ボルクンド王国首都ヘリクリサムで起こった暴動を鎮圧するため、自ら出向いて留守にしている。
「カルロッテ王女に指揮されたボルクンド軍は、だいぶ指揮が高まって、威勢が良いようですねえ」
つぶらな瞳を真ん丸くしながら、ブルーベル将軍はため息混じりに肩を揺すった。
「そうなのよね。あの大年増に指揮官として才能があったとは、さすがにアタシでも思わなかったけど」
両手を腰にあてながら、リュリュは呆れたように垂れ目を眇める。次々と寄せられる報告書に、2人はうんざりしていた。
「まあ、閣下のご指定の期日までには、配置も完了しそうですが」
8月10日にソレル王国、エクダル国、ボルクンド王国、ベルマン公国の首都で一斉に狼煙を上げる予定になっている。
7月29日から海上戦力、一部先行部隊、物資などの運搬は開始されており、8月3日には全軍が出撃していた。
8月5日の現在、各国への移動はすべて完了していたが、敵国へ乗り込んでいるので陣を取るための場所の確保、偵察、情報収集、命令系統の調整、各部隊との連絡、連携など、やることがいっぱいあり、行けばすぐ開戦するというわけにはいかなかった。
「それに我が軍は、これほどの大規模な戦争の経験がないですからねえ。3年前とは比べ物になりません。そこが色々と心配です」
「現地での略奪、婦女暴行、無差別殺人、やるなと言ってもやるバカは必ずいるでしょうし、一応警務部隊と尋問・拷問部隊の連中を、各軍に配置しているから件数だけは減らせるかもね」
「綺麗な戦争などというものはありませんが、出来るだけ余計な怨念は振りまかないように心がけたいものです」
ブルーベル将軍の言葉に、同意するようにリュリュは頷いた。
「ところで閣下のほうは、つつがなく進んでおるのでしょうか?」
「ええ、無事小娘と合流してフェルトに着いたようだし、ライオン傭兵団の連中も数日で全員揃うと思うわ」
「閣下とご一緒なら、あの可愛らしいお嬢さんも大丈夫でしょう」
「あら、将軍はあの小娘が、だいぶお気に入りのようね」
ちらりとリュリュは大きな白クマの将軍を見る。
ブルーベル将軍は愛嬌たっぷりの笑みを浮かべ、大きく頷いた。
「なにせあんなに嬉しそうに、トゥーリ族に抱きついてくるアイオン族などいませんからな。それに、あのお嬢さんは間接的に、ワシと浅からぬ縁があるのです」
「あら?」
「お嬢さんが所属しているライオン傭兵団に、ガエルという男がおるでしょう。あれはワシの親類なのですよ」
「まあ、それは驚いたわ」
本当にびっくりしたように、リュリュは垂れ目を見開いた。
「ワシの妹の息子なのです」
にこにこと嬉しそうである。そんなブルーベル将軍を見やって、リュリュも微笑した。
「お嬢さんのほうは遺跡でしたね。相当厄介な遺跡だと伺ってますが」
「1万年も前のものだけど、完全な形で生き残っていて、機能の全てもまだ生きているから」
そこを乗っ取り、立てこもっているソレル国王。
「でも、ベルとアルが一緒だから、大丈夫よ」
確信と自信に満ちた声でリュリュは言うと、妖しい笑みをより深めた。
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