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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode376
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お腹も膨れて食欲は満足したが、ベルトルドは不機嫌だった。
キュッリッキが意地を張り続けているのを見かねたメルヴィンを、阻止してルーファスが出しゃばったのも、キュッリッキに想いを寄せられているメルヴィンに対して、アルカネットが嫉妬しているのが判っていたからだ。
メルヴィンがアルカネットを庇えば、アルカネットのメルヴィンに対する不快感はいっそう増すばかり。それはこの先マイナスにしかならないことが、ルーファスには判っている。だから止めたのだ。
もちろんベルトルドも嫉妬しているのだが、愛するキュッリッキがそれで幸せなら仕方がないとも思っているので、より胸中は複雑だ。
そんなわけで、ちょっとした修羅場でも起きてくれるとせいせいする、とか子供じみたことを考えていたので、丸くおさまり面白くないのだ。そしてアルイールからずっと、キュッリッキとベタベタ出来ない状況にも我慢の限界突破して、さらに不機嫌度数は上がりまくっていた。
食事もすんで紅茶が出されたところで、アルヴァー大佐が部屋割りとカギを持参して食堂にやってきた。
宿の特別室は2部屋しかなく、そこをベルトルドとアルカネットが指定される。一般の部屋には、ライオン傭兵団の各自にあてて整えたと説明された。そしていきなりベルトルドが、テーブルをバンッと叩く。
「その部屋割り気に入らん!!」
「……はあ?」
特別室の何が気に入らないのか見当もつかないアルヴァー大佐は、目を白黒させて四角い顔に困惑を浮かべた。
「リッキーと俺は一緒に特別室だ」
「えっ!?」
意表をつかれたアルヴァー大佐は、慌ててキュッリッキとベルトルドを交互に見て、更に困惑を深める。
「いや、その……しかし妙齢のご婦人と一緒のお部屋は……」
「妙齢でも高齢でも関係ない! 俺はリッキーと一緒じゃなきゃ寝ない!」
「寝なきゃいいんですよ」
ティーカップを口に運びながら、すかさず冷たい口調でアルカネットが言う。
「喧しい!!」
噛み付きそうな顔でアルカネットを睨みつけたあと、ベルトルドは椅子ごとキュッリッキのそばまで寄ると、いきなりキュッリッキを抱きしめた。
「俺は絶対にリッキーと一緒に寝るんだっ! 誰にも邪魔はさせないぞ!! もし邪魔をするなら全員この世から抹殺してくれるわ!」
アルカネットは額を抑えてため息をつき、ライオン傭兵団の皆は各自思い思いの表情を浮かべて呆気にとられている。
アルヴァー大佐は事情がさっぱり飲み込めないようで、どう答えていいか返事に詰まって大汗を浮かべていた。
当のキュッリッキは、
(まぁた始まった……)
ベルトルド邸ではほぼ毎日の恒例行事なので、別段驚いても呆れてもいない。「全くもー」という表情で、おとなしくされるがままでいた。そしてチラリとアルカネットを見る。
こういうことをベルトルドが喚きたてると、一緒になって同じことを言い出すはずなのに、今日に限って黙っている。しかしその紫色の瞳には、大いに不満が滲み出していた。
まさか今日のことを反省して、遠慮でもしているのかしら? とキュッリッキは思っていたが、アルカネットの考えは全然違っていた。
実はベルトルドがこういう子供じみた態度を前面に押し出しているときは、望みを叶えてやらないと、本当に殺人行動に出ることを知っているからだ。
過去3回ほどそういう場面があり、リュリュと2人がかりで押さえ込むのに苦労したのだ。そうした前科があるので、まかり間違ってキュッリッキに手をかけられたら目も当てられない。空間転移で暴れられたら助けようがないからだ。
キュッリッキが意地を張り続けているのを見かねたメルヴィンを、阻止してルーファスが出しゃばったのも、キュッリッキに想いを寄せられているメルヴィンに対して、アルカネットが嫉妬しているのが判っていたからだ。
メルヴィンがアルカネットを庇えば、アルカネットのメルヴィンに対する不快感はいっそう増すばかり。それはこの先マイナスにしかならないことが、ルーファスには判っている。だから止めたのだ。
もちろんベルトルドも嫉妬しているのだが、愛するキュッリッキがそれで幸せなら仕方がないとも思っているので、より胸中は複雑だ。
そんなわけで、ちょっとした修羅場でも起きてくれるとせいせいする、とか子供じみたことを考えていたので、丸くおさまり面白くないのだ。そしてアルイールからずっと、キュッリッキとベタベタ出来ない状況にも我慢の限界突破して、さらに不機嫌度数は上がりまくっていた。
食事もすんで紅茶が出されたところで、アルヴァー大佐が部屋割りとカギを持参して食堂にやってきた。
宿の特別室は2部屋しかなく、そこをベルトルドとアルカネットが指定される。一般の部屋には、ライオン傭兵団の各自にあてて整えたと説明された。そしていきなりベルトルドが、テーブルをバンッと叩く。
「その部屋割り気に入らん!!」
「……はあ?」
特別室の何が気に入らないのか見当もつかないアルヴァー大佐は、目を白黒させて四角い顔に困惑を浮かべた。
「リッキーと俺は一緒に特別室だ」
「えっ!?」
意表をつかれたアルヴァー大佐は、慌ててキュッリッキとベルトルドを交互に見て、更に困惑を深める。
「いや、その……しかし妙齢のご婦人と一緒のお部屋は……」
「妙齢でも高齢でも関係ない! 俺はリッキーと一緒じゃなきゃ寝ない!」
「寝なきゃいいんですよ」
ティーカップを口に運びながら、すかさず冷たい口調でアルカネットが言う。
「喧しい!!」
噛み付きそうな顔でアルカネットを睨みつけたあと、ベルトルドは椅子ごとキュッリッキのそばまで寄ると、いきなりキュッリッキを抱きしめた。
「俺は絶対にリッキーと一緒に寝るんだっ! 誰にも邪魔はさせないぞ!! もし邪魔をするなら全員この世から抹殺してくれるわ!」
アルカネットは額を抑えてため息をつき、ライオン傭兵団の皆は各自思い思いの表情を浮かべて呆気にとられている。
アルヴァー大佐は事情がさっぱり飲み込めないようで、どう答えていいか返事に詰まって大汗を浮かべていた。
当のキュッリッキは、
(まぁた始まった……)
ベルトルド邸ではほぼ毎日の恒例行事なので、別段驚いても呆れてもいない。「全くもー」という表情で、おとなしくされるがままでいた。そしてチラリとアルカネットを見る。
こういうことをベルトルドが喚きたてると、一緒になって同じことを言い出すはずなのに、今日に限って黙っている。しかしその紫色の瞳には、大いに不満が滲み出していた。
まさか今日のことを反省して、遠慮でもしているのかしら? とキュッリッキは思っていたが、アルカネットの考えは全然違っていた。
実はベルトルドがこういう子供じみた態度を前面に押し出しているときは、望みを叶えてやらないと、本当に殺人行動に出ることを知っているからだ。
過去3回ほどそういう場面があり、リュリュと2人がかりで押さえ込むのに苦労したのだ。そうした前科があるので、まかり間違ってキュッリッキに手をかけられたら目も当てられない。空間転移で暴れられたら助けようがないからだ。
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