片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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モナルダ大陸戦争開戦へ編

episode367

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 4人とも驚いて、慌ててキュッリッキを助け起こそうとしたが、その小さな細い肩はみんなの手を激しく拒絶するように強ばっていた。4人とも思わず手を止めてしまったほどである。

 うつ伏せになって倒れたまま、キュッリッキは木の床を凝視していた。

 何故か悲しくて、たまらなく悔しくてしょうがない。

 確かに自分は非力で弱い。フェンリルやアルケラの住人たちがいなければ、ただの無力な小娘だ。ナルバ山の遺跡の事件で、嫌というほど思い知ったのだ。

 武器も扱えず、腕力もない。それほど運動力があるわけでもないし、出来ないことのほうが多かった。

 それでも幼い頃から必死に生きてきた。傭兵になる前は、様々な戦場を度胸で渡り歩き、フリーの傭兵となって大人たちに混じりながら、様々な仕事をこなしてきのだ。それらの経験から、キュッリッキにだって傭兵としての矜持はある。

 元々突き放されて育ってきたのだ。親に捨てられ、同族に見捨てられ、それでも強く生きてきたつもりだ。チヤホヤ甘やかされることには慣れていないし、こんな形で甘やかされたくはない。

 アルカネットが自分に対して、どこまでも優しいのは理解しているつもりだ。誰よりも心配してくれて、何事にも気を配って愛情を注いでくれる。でも今回したことは、受け入れられない。

 傭兵としての矜持が傷つけられて、涙があふれるほど悲しかった。どんなに頼りなく見えても、自分は傭兵なのだ。もっと信じて欲しかった。

 ぽたぽたと涙を床に落とし続けるキュッリッキを、そっと抱き起こしたのはメルヴィンだった。

 メルヴィンは何も言わなかった。力強くキュッリッキを抱き起こすと、服のホコリを払って自分とルーファスの間に座らせ、ハンカチを取り出して、涙をそっと拭った。

 行動の一つ一つに優しさと労りが込められているのが感じられ、キュッリッキは嬉しかった。

 静かで穏やかなメルヴィンの顔を見つめ、ふいにしゃくりあげたキュッリッキは、メルヴィンの胸に飛び込んで、大声をあげて泣いた。

 メルヴィンは優しくキュッリッキの身体を抱き寄せると、そっと頭を撫でてやった。

 キュッリッキが何に傷ついて泣いているのかを、メルヴィンは正確に理解していた。だから今は、余計な言葉などいらない。

 2人の様子をホッとしたように見つめていたルーファスは、どんよりとした気配に気づき、前を向いて「ゲッ」とドン引きした。

 捨て犬のような表情を浮かべた中年が2人、恨めしそうにメルヴィンを睨みつけていた。
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