381 / 882
モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode362
しおりを挟む
クラエスは尻餅をついて、事の次第を凝視していた。
若い頃に傭兵崩れたちがステーションで喧嘩沙汰を起こし、その時斬られた傭兵を見たことがあるが、そのときとは比べ物にならない。
人間の身体が真っ二つになった場面なぞ見たことがない。しかも刀で斬ったようには見えないのに、いきなり真っ二つになったのだ。
やったのはあの刀を構える、整った顔立ちの青年なんだろうか。クラエスはゆるゆると首を振ると、一つため息をついてから失神した。
「ん?」
倒れた音がするクラエスの方へ、ほんのわずか意識を向けた。しかしクラエスのことが判らず、首を軽く傾げただけで、ルーファスは敵の気配を探る方へ集中した。
「改札を出て、正面大通りをまっすぐ行けば、乗り換えのステーションに着きます」
「判りました」
少佐から道を示され、メルヴィンは死体を跨いで歩き出した。
改札を出てステーション前の広場に出てくると、そこは酷い有様になっていた。
赤茶色の煉瓦を敷き詰めた地面は無残に砕かれ、ところどころに大小のクレーターがあいてしまっている。
手入れが行き届いてたと思わしき花壇は踏みつけられて、色とりどりの花は土と同化していた。
破壊されたベンチや物売りのワゴンなどは転がっていたが、幸い人間の死体はあまり見られなかった。
「魔法による攻撃跡ですね……。ダエヴァのみなさんが応戦したんでしょうか」
「そのようです」
周囲を見渡しながら少佐が呟く。
「うおっ、なにすんの!?」
突如メルヴィンが振り向きざまルーファスに向かって、刃を下から斜め上に振り上げた。そのいきなりの行動に、ルーファスは慌てて後ろに背中を反らしてかわそうとする。
「ぐあああっ」
何もない宙に真っ赤な血の軌跡が走り、潰れたような男の絶叫が轟いて、いきなり姿を現して絶命した。
「うひゃっ」
倒れ込んでくる男の死体を海老反りに避けて、キュッリッキに男の血がかからないよう背を向けて庇う。
ソレル王国の軍服を着た痩せぎすの男は、背中から右肩にかけて、斜めに深く斬られていた。
「先ほどのアサシンですね…。我々の能力では、気配すら察知出来ませんでした」
目を剥いて絶命している男を冷ややかに見下ろしながら、少佐は困ったような声をもらす。
魔法やサイ《超能力》などの、超常的な能力に対抗するために、各国では対抗策や対抗できる技術を開発し、研究していた。
アサシンと呼び表される技術を持つ人々は、魔法やサイ《超能力》による索敵に絶対にかかることなく、忍び寄り任務を遂行することができる。これはスキル〈才能〉ではなく、訓練によって習得が可能だ。
魔法やサイ《超能力》で感知できないものは、通常の人間には当然不可能であり、戦闘スキル〈才能〉を持つ者たちでも、それはほぼ無理だ。
メルヴィンはアサシンを見破る方法を持っている。それが爪竜刀だ。
アルケラに住む匠の小人スヴァルトアールヴルが、ドラゴンの爪を用いて鍛えたという爪竜刀。固有の形を持たず、持ち主の要望に応じて形態を変化させ、人外の力を発揮してあらゆるものを斬り裂く。
刀に与えられている能力は様々で、その一つが、何者をも見透かす能力だった。
「すんなり行かせてくれそうもありませんね」
苦笑しながら、メルヴィンは前方に向きを変えて爪竜刀を構えた。
「アサシンの気配はありませんので、皆さんは少しここで待っていてください」
ルーファスと少佐が頷くのを目の端で捉え、メルヴィンは八相の構えのまま地面を蹴って前に飛び出した。
殺したアサシンの仲間たちだろう。軍服をまとった傭兵たちが一個小隊ほど集まっている。
そこは傭兵たち、突っ込んでくるメルヴィンに気づいて即戦闘の構えをとった。
若い頃に傭兵崩れたちがステーションで喧嘩沙汰を起こし、その時斬られた傭兵を見たことがあるが、そのときとは比べ物にならない。
人間の身体が真っ二つになった場面なぞ見たことがない。しかも刀で斬ったようには見えないのに、いきなり真っ二つになったのだ。
やったのはあの刀を構える、整った顔立ちの青年なんだろうか。クラエスはゆるゆると首を振ると、一つため息をついてから失神した。
「ん?」
倒れた音がするクラエスの方へ、ほんのわずか意識を向けた。しかしクラエスのことが判らず、首を軽く傾げただけで、ルーファスは敵の気配を探る方へ集中した。
「改札を出て、正面大通りをまっすぐ行けば、乗り換えのステーションに着きます」
「判りました」
少佐から道を示され、メルヴィンは死体を跨いで歩き出した。
改札を出てステーション前の広場に出てくると、そこは酷い有様になっていた。
赤茶色の煉瓦を敷き詰めた地面は無残に砕かれ、ところどころに大小のクレーターがあいてしまっている。
手入れが行き届いてたと思わしき花壇は踏みつけられて、色とりどりの花は土と同化していた。
破壊されたベンチや物売りのワゴンなどは転がっていたが、幸い人間の死体はあまり見られなかった。
「魔法による攻撃跡ですね……。ダエヴァのみなさんが応戦したんでしょうか」
「そのようです」
周囲を見渡しながら少佐が呟く。
「うおっ、なにすんの!?」
突如メルヴィンが振り向きざまルーファスに向かって、刃を下から斜め上に振り上げた。そのいきなりの行動に、ルーファスは慌てて後ろに背中を反らしてかわそうとする。
「ぐあああっ」
何もない宙に真っ赤な血の軌跡が走り、潰れたような男の絶叫が轟いて、いきなり姿を現して絶命した。
「うひゃっ」
倒れ込んでくる男の死体を海老反りに避けて、キュッリッキに男の血がかからないよう背を向けて庇う。
ソレル王国の軍服を着た痩せぎすの男は、背中から右肩にかけて、斜めに深く斬られていた。
「先ほどのアサシンですね…。我々の能力では、気配すら察知出来ませんでした」
目を剥いて絶命している男を冷ややかに見下ろしながら、少佐は困ったような声をもらす。
魔法やサイ《超能力》などの、超常的な能力に対抗するために、各国では対抗策や対抗できる技術を開発し、研究していた。
アサシンと呼び表される技術を持つ人々は、魔法やサイ《超能力》による索敵に絶対にかかることなく、忍び寄り任務を遂行することができる。これはスキル〈才能〉ではなく、訓練によって習得が可能だ。
魔法やサイ《超能力》で感知できないものは、通常の人間には当然不可能であり、戦闘スキル〈才能〉を持つ者たちでも、それはほぼ無理だ。
メルヴィンはアサシンを見破る方法を持っている。それが爪竜刀だ。
アルケラに住む匠の小人スヴァルトアールヴルが、ドラゴンの爪を用いて鍛えたという爪竜刀。固有の形を持たず、持ち主の要望に応じて形態を変化させ、人外の力を発揮してあらゆるものを斬り裂く。
刀に与えられている能力は様々で、その一つが、何者をも見透かす能力だった。
「すんなり行かせてくれそうもありませんね」
苦笑しながら、メルヴィンは前方に向きを変えて爪竜刀を構えた。
「アサシンの気配はありませんので、皆さんは少しここで待っていてください」
ルーファスと少佐が頷くのを目の端で捉え、メルヴィンは八相の構えのまま地面を蹴って前に飛び出した。
殺したアサシンの仲間たちだろう。軍服をまとった傭兵たちが一個小隊ほど集まっている。
そこは傭兵たち、突っ込んでくるメルヴィンに気づいて即戦闘の構えをとった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる