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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode357
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真顔で言うルーファスに、メルヴィンの冷ややかな視線が投げかけられる。
「リッキーさんに、そんなふしだらな透視は、絶対にしないでくださいよ」
声まで冷ややかなメルヴィンに、ルーファスは慌てて手を振る。
「ンなことしないって! キューリちゃんは確かに麗しい美少女だけど、透視したくなるほどの豊満さに欠けるから…おっぱいちっさいし」
「…………」
起きていたらフェンリルかフローズヴィトニルの尻尾を掴んで、バシッと殴られそうなことを言ってのけ、ルーファスは真剣に頷いた。
メルヴィンは小さくため息をつくと、腕の中でスヤスヤと眠るキュッリッキの顔を覗き込んだ。
年齢のわりには匂い立つ色気に欠ける部分もあるが、出会った当初に比べると、この頃は女性らしい柔らかな空気を感じることはある。生憎女性についてそれほど詳しくもないが、時折見せるキュッリッキの仕草に、ドキリとすることはあるのだ。
ナルバ山の遺跡で怪我をしたキュッリッキのそばに長く居るようになってから、彼女に対する見方が変わったのだろうか。出会った当初は、気にも留めていなかった。
過保護にしすぎるベルトルドとアルカネットの、キュッリッキに対する過剰な愛情の接し方を目にすると、心中は穏やかではなかった。
この小さく華奢な身体を、我が物のように抱き寄せ、触れているのを見るのが辛い。滑らかで柔らかな肌にキスをしているのも嫌だった。同じベッドで寝起きしていることも不愉快に感じる。さも当然のように独占しているのも腹立たしかった。
いつからそんな風に思うようになったのか、メルヴィンははっきりと自分の心を掴めないでいた。それに、まさかキュッリッキが自分に恋心を向けてきているなど、気づいてもいないし想像もしていなかった。
顔を赤くして恥ずかしそうにしているのは、男性と共に行動することに、女性として抵抗感があるのだろう。年頃なのだからしょうがないと、そう思っている。そして恥ずかしそうにするキュッリッキを、いじらしく、愛らしいと思っていた。
そうした経緯(いきさつ)もあり、今ではキュッリッキを大事に守らなければという使命感が、強く心を支配している。
身じろぎもせず眠るキュッリッキを、ほんのわずか胸に抱き寄せるようにして、腕に力をこめた。
破壊された線路の上を優雅に滑走すること数分、ようやく敵の攻撃が再開された。
あまりにも凄い光景を目の当たりにして、逆臣軍は度肝を抜かれていたようだったが、さすがに立ち直り、本来の目的を思い出して――勘違いしているが――攻撃を再開したのだ。
「おーお、攻撃再開してきたよ。懲りない連中だねえ」
「全て防がれてるとはいえ、万が一のことがあったら、彼らはどうするんでしょう。目的は、リッキーさんの誘拐ですよね?」
「タブンね。生きて連れてこい、って命令なんだろうケド。誘拐の仕方がまるでなってないな」
「まずは車両に取り付いて、侵入を試みる。それを援護するために、攻撃を仕掛けるなら理解できますが…」
「完全に命令系統がアヤフヤになってる感じだネ」
「リッキーさんに、そんなふしだらな透視は、絶対にしないでくださいよ」
声まで冷ややかなメルヴィンに、ルーファスは慌てて手を振る。
「ンなことしないって! キューリちゃんは確かに麗しい美少女だけど、透視したくなるほどの豊満さに欠けるから…おっぱいちっさいし」
「…………」
起きていたらフェンリルかフローズヴィトニルの尻尾を掴んで、バシッと殴られそうなことを言ってのけ、ルーファスは真剣に頷いた。
メルヴィンは小さくため息をつくと、腕の中でスヤスヤと眠るキュッリッキの顔を覗き込んだ。
年齢のわりには匂い立つ色気に欠ける部分もあるが、出会った当初に比べると、この頃は女性らしい柔らかな空気を感じることはある。生憎女性についてそれほど詳しくもないが、時折見せるキュッリッキの仕草に、ドキリとすることはあるのだ。
ナルバ山の遺跡で怪我をしたキュッリッキのそばに長く居るようになってから、彼女に対する見方が変わったのだろうか。出会った当初は、気にも留めていなかった。
過保護にしすぎるベルトルドとアルカネットの、キュッリッキに対する過剰な愛情の接し方を目にすると、心中は穏やかではなかった。
この小さく華奢な身体を、我が物のように抱き寄せ、触れているのを見るのが辛い。滑らかで柔らかな肌にキスをしているのも嫌だった。同じベッドで寝起きしていることも不愉快に感じる。さも当然のように独占しているのも腹立たしかった。
いつからそんな風に思うようになったのか、メルヴィンははっきりと自分の心を掴めないでいた。それに、まさかキュッリッキが自分に恋心を向けてきているなど、気づいてもいないし想像もしていなかった。
顔を赤くして恥ずかしそうにしているのは、男性と共に行動することに、女性として抵抗感があるのだろう。年頃なのだからしょうがないと、そう思っている。そして恥ずかしそうにするキュッリッキを、いじらしく、愛らしいと思っていた。
そうした経緯(いきさつ)もあり、今ではキュッリッキを大事に守らなければという使命感が、強く心を支配している。
身じろぎもせず眠るキュッリッキを、ほんのわずか胸に抱き寄せるようにして、腕に力をこめた。
破壊された線路の上を優雅に滑走すること数分、ようやく敵の攻撃が再開された。
あまりにも凄い光景を目の当たりにして、逆臣軍は度肝を抜かれていたようだったが、さすがに立ち直り、本来の目的を思い出して――勘違いしているが――攻撃を再開したのだ。
「おーお、攻撃再開してきたよ。懲りない連中だねえ」
「全て防がれてるとはいえ、万が一のことがあったら、彼らはどうするんでしょう。目的は、リッキーさんの誘拐ですよね?」
「タブンね。生きて連れてこい、って命令なんだろうケド。誘拐の仕方がまるでなってないな」
「まずは車両に取り付いて、侵入を試みる。それを援護するために、攻撃を仕掛けるなら理解できますが…」
「完全に命令系統がアヤフヤになってる感じだネ」
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