373 / 882
モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode354
しおりを挟む
快適とも言えた汽車の旅は、お約束のごときタイミングで現れた逆臣軍の手で妨げられた。
サイ《超能力》使いと魔法使いを中心とした編成で組まれた部隊のようで、20人ほどの人影が窓から確認できた。そしてためらいもなく魔法による攻撃が、汽車に向かって放たれていた。しかしその攻撃は全て、ダエヴァの能力者たちに完璧に防御されている。車両にはなんの被害もなかった。
スキル〈才能〉というものは、望んでも、願っても、狙っても、思い通りには持って生まれてこない。誰もが等しく一つだけ授かって生まれてくるスキル〈才能〉の種類はランダムであり、スキル〈才能〉によっては、人生をほぼ決定づけてしまう。
特殊スキル〈才能〉のカテゴリーに分けられる魔法、サイ《超能力》、機械工学、召喚、この4つの中の、魔法とサイ《超能力》を授かってきた者に関しては、その道が主に軍隊か傭兵かの二択になることが多い。
たいていはハワドウレ皇国軍に入る者が多く、その出身国が属国であっても、皇国を目指す者は後を絶たない。しかし、中には生国の軍に入る者もいれば、傭兵に身を投じる者もいる。その中にはとても優秀で強い力を持っている者もいるので、皇国軍人ではないからといって、侮ることは出来なかった。ライオン傭兵団がいい例だ。
「ボルクンドの軍服を着ていますが、動きが大雑把すぎますね。おそらく急遽流されてきた傭兵たちでしょう」
ひどく淡々とした口調で少佐は呟いた。
「今回表立って名前の上がっていない国々からも、陰ながら戦力の提供や資金が流れているとの噂です。そうでなければ、こうも命知らずな行動を取らないでしょうから」
黄金で出来たニンジンを、鼻先にぶら下げられているのだろう。
ルーファスは座席を立ち上がって、窓の外に視線を向けながら頷いた。規律の取れていない行動や攻撃の仕方は、フリーの傭兵たちの動きそのものだったからだ。
そもそもこの汽車に攻撃を仕掛けてきた彼らの目的は、召喚士であるキュッリッキの拉致の筈である。それなのに、彼女の乗る汽車に、この無遠慮極まる乱暴な攻撃の仕掛け方は、目的がまるで判っていない。これではキュッリッキの生死は問わないと言わんばかりだ。
汽車の動きを止めるためには、氷魔法ケーラ・ベークシスや土魔法トイコス・トゥルバを駆使して阻害するものだろう。なのにさっきから汽車へ向かって飛ばしてくるのは、火炎攻撃魔法エルプティオ・ヘリオスばかりだ。明らかに殺意ある破壊目的の攻撃。ここにアルカネットがいれば、使う魔法が違うと叱り飛ばされかねない。
魔法使いたちには、得意とする属性魔法がある。一応全ての属性を扱うことは出来るが、相性が存在するらしく、もっとも相性の良い属性魔法を伸ばす魔法使いが多い。
全ての属性を高レベルで自在に使いこなすのは、皇国軍のアルカネットくらいである。
そのアルカネットの実力をよく知るルーファスから見ると、逆臣軍側の魔法使いたちの攻撃は、如何にも幼稚に見えた。だが、あたれば洒落では済まされない。
逆臣軍の傭兵たちは、汽車に張り巡らされた防御を突破しようと試みているようだったが、まるでびくともしない。
サイ《超能力》による防御は、その者自身の精神力の強靭さが全てだ。防御を張り、維持するためには、それだけの精神力が求められる。攻撃されてもびくともしない、どんな力にも圧されない、サイ《超能力》使いは精神がタフでないと、到底つとまらないものなのだ。
力のせめぎあいを目にすることの出来るルーファスは、ダエヴァのサイ《超能力》使いたちの能力の高さに感嘆していた。
(すっげえな…。ベルトルド様印の一級サイ《超能力》使いだらけだなあ、これ)
サイ《超能力》使いと魔法使いを中心とした編成で組まれた部隊のようで、20人ほどの人影が窓から確認できた。そしてためらいもなく魔法による攻撃が、汽車に向かって放たれていた。しかしその攻撃は全て、ダエヴァの能力者たちに完璧に防御されている。車両にはなんの被害もなかった。
スキル〈才能〉というものは、望んでも、願っても、狙っても、思い通りには持って生まれてこない。誰もが等しく一つだけ授かって生まれてくるスキル〈才能〉の種類はランダムであり、スキル〈才能〉によっては、人生をほぼ決定づけてしまう。
特殊スキル〈才能〉のカテゴリーに分けられる魔法、サイ《超能力》、機械工学、召喚、この4つの中の、魔法とサイ《超能力》を授かってきた者に関しては、その道が主に軍隊か傭兵かの二択になることが多い。
たいていはハワドウレ皇国軍に入る者が多く、その出身国が属国であっても、皇国を目指す者は後を絶たない。しかし、中には生国の軍に入る者もいれば、傭兵に身を投じる者もいる。その中にはとても優秀で強い力を持っている者もいるので、皇国軍人ではないからといって、侮ることは出来なかった。ライオン傭兵団がいい例だ。
「ボルクンドの軍服を着ていますが、動きが大雑把すぎますね。おそらく急遽流されてきた傭兵たちでしょう」
ひどく淡々とした口調で少佐は呟いた。
「今回表立って名前の上がっていない国々からも、陰ながら戦力の提供や資金が流れているとの噂です。そうでなければ、こうも命知らずな行動を取らないでしょうから」
黄金で出来たニンジンを、鼻先にぶら下げられているのだろう。
ルーファスは座席を立ち上がって、窓の外に視線を向けながら頷いた。規律の取れていない行動や攻撃の仕方は、フリーの傭兵たちの動きそのものだったからだ。
そもそもこの汽車に攻撃を仕掛けてきた彼らの目的は、召喚士であるキュッリッキの拉致の筈である。それなのに、彼女の乗る汽車に、この無遠慮極まる乱暴な攻撃の仕掛け方は、目的がまるで判っていない。これではキュッリッキの生死は問わないと言わんばかりだ。
汽車の動きを止めるためには、氷魔法ケーラ・ベークシスや土魔法トイコス・トゥルバを駆使して阻害するものだろう。なのにさっきから汽車へ向かって飛ばしてくるのは、火炎攻撃魔法エルプティオ・ヘリオスばかりだ。明らかに殺意ある破壊目的の攻撃。ここにアルカネットがいれば、使う魔法が違うと叱り飛ばされかねない。
魔法使いたちには、得意とする属性魔法がある。一応全ての属性を扱うことは出来るが、相性が存在するらしく、もっとも相性の良い属性魔法を伸ばす魔法使いが多い。
全ての属性を高レベルで自在に使いこなすのは、皇国軍のアルカネットくらいである。
そのアルカネットの実力をよく知るルーファスから見ると、逆臣軍側の魔法使いたちの攻撃は、如何にも幼稚に見えた。だが、あたれば洒落では済まされない。
逆臣軍の傭兵たちは、汽車に張り巡らされた防御を突破しようと試みているようだったが、まるでびくともしない。
サイ《超能力》による防御は、その者自身の精神力の強靭さが全てだ。防御を張り、維持するためには、それだけの精神力が求められる。攻撃されてもびくともしない、どんな力にも圧されない、サイ《超能力》使いは精神がタフでないと、到底つとまらないものなのだ。
力のせめぎあいを目にすることの出来るルーファスは、ダエヴァのサイ《超能力》使いたちの能力の高さに感嘆していた。
(すっげえな…。ベルトルド様印の一級サイ《超能力》使いだらけだなあ、これ)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる