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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode349
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キュッリッキのキス歴は、実に少ない。
怪我で動けない時に、口移しと言う名のディープキスをアルカネットからされたのがファーストキス。
お礼を込めて唇を押し付けただけのキスを、ベルトルドにしたのが2回目。
不意打ちでアルカネットからされたのが3回目。
寝ている間にもアルカネットから何度もされているが、それは知らないので、キュッリッキにとっては3回だけのキス経験だ。
挨拶のための頬や額へのキスは何度もあるが、唇を重ねるという行為は、キュッリッキにとってまだまだ未開拓に等しい。
メルヴィンとキスをする、それを思うとキュッリッキの意識は真っ白になりそうだ。でも、全く興味がないわけではない。むしろしてみたい、と思う気持ちもしっかりある。しかし顔をまともに見られないし、触れられただけで意識が遠のく有様。
それらを思い、前途多難すぎてため息しか出ない。
キュッリッキが何を考え百面相を作っているのか容易く想像できて、ルーファスは吹き出したいのを必死に堪えて話題を変える。
「それにしてもキューリちゃん、メルヴィンに告白した?」
「告白?」
「うん。好き、って伝えたの?」
「えっと……」
(言われてみればしたことナイかも…)
「そういうのって、男の人からしてくれるんじゃ………ないんだ?」
遠慮がちに言うキュッリッキに、ルーファスは目を丸くする。
「キューリちゃん」
「はい」
「女の子から好きだって伝えていいんだよ。ていうか、しないと気持ちが伝わらないまま、もし他の女に取られちゃったらどうするの?」
「そんなのダメなんだから!!」
ムキになって立ち上がるキュッリッキを、ルーファスは慌ててなだめる。
「メルヴィン相当の鈍・感だから、キューリちゃんが積極的にアタックしていかないと、キューリちゃんの気持ちに気づかないまま、有耶無耶になっちゃうよ~?」
「……それは、ものすごく困るかも」
「だろう」
「でも…」
「でも?」
「でも、もしね、もし……嫌いって言われちゃったら、どうしよう……」
自分の気持ちを言って、それを断られたら? 受け入れてもらえなかったら。それを考えると一気に気が重くなる。
マリオンやシビルに教えてもらい、自分の中に芽生えたそれが恋というものである、と理解してきた。前にヴィヒトリに治せないと言われたのは、恋とは薬で治すような病気ではないとも教わった。なので恋が死に直結していると思い込んでいた誤解は、すでに解けている。
ベルトルドやアルカネットから愛されている、それとはまた違う感覚だった。2人からの愛は安心感や温かい心地よさがある。時に度が過ぎると感じることもあるが、失えば計り知れないほど悲しいだろう。
メルヴィンに対する自分の気持ちは、そうした感覚とは違う。沸き上がってくるこの気持ちを言葉では言い表せない。そして通じ合ったとき、どれほどの歓喜に包まれるだろうか。だからメルヴィンと恋愛をしてみたいと、強く思っていた。
「オレさ、これでも恋愛経験豊富なの。だから見てて判るよ。メルヴィンはキューリちゃんの気持ちを、一番幸せな形で受け止めてくれる」
「ほ、ほんと!?」
「うん。断言してもいいよ」
にっこりとルーファスが笑んで断言すると、キュッリッキはほんのりと頬を染めて、自然と両手を握り締め胸に押し当てた。
(もっとも、一番の壁は、あのオヤジたちかもなあ)
幸せな世界に浸るキュッリッキを見つめながら、最大の天敵を思い浮かべる。
キュッリッキを溺愛するベルトルドとアルカネットが、そう簡単に2人の仲を許すとは思えないのだ。
ベルトルドとアルカネットが、キュッリッキの嫌がることを進んですることは有り得ないだろう。しかし色恋沙汰となれば、話は別なように思われる。
(とんでもないのに好かれたもんだ、キューリちゃんは)
いつか衝突する日が来るだろうことを思い、ルーファスは心の中でため息をついた。
怪我で動けない時に、口移しと言う名のディープキスをアルカネットからされたのがファーストキス。
お礼を込めて唇を押し付けただけのキスを、ベルトルドにしたのが2回目。
不意打ちでアルカネットからされたのが3回目。
寝ている間にもアルカネットから何度もされているが、それは知らないので、キュッリッキにとっては3回だけのキス経験だ。
挨拶のための頬や額へのキスは何度もあるが、唇を重ねるという行為は、キュッリッキにとってまだまだ未開拓に等しい。
メルヴィンとキスをする、それを思うとキュッリッキの意識は真っ白になりそうだ。でも、全く興味がないわけではない。むしろしてみたい、と思う気持ちもしっかりある。しかし顔をまともに見られないし、触れられただけで意識が遠のく有様。
それらを思い、前途多難すぎてため息しか出ない。
キュッリッキが何を考え百面相を作っているのか容易く想像できて、ルーファスは吹き出したいのを必死に堪えて話題を変える。
「それにしてもキューリちゃん、メルヴィンに告白した?」
「告白?」
「うん。好き、って伝えたの?」
「えっと……」
(言われてみればしたことナイかも…)
「そういうのって、男の人からしてくれるんじゃ………ないんだ?」
遠慮がちに言うキュッリッキに、ルーファスは目を丸くする。
「キューリちゃん」
「はい」
「女の子から好きだって伝えていいんだよ。ていうか、しないと気持ちが伝わらないまま、もし他の女に取られちゃったらどうするの?」
「そんなのダメなんだから!!」
ムキになって立ち上がるキュッリッキを、ルーファスは慌ててなだめる。
「メルヴィン相当の鈍・感だから、キューリちゃんが積極的にアタックしていかないと、キューリちゃんの気持ちに気づかないまま、有耶無耶になっちゃうよ~?」
「……それは、ものすごく困るかも」
「だろう」
「でも…」
「でも?」
「でも、もしね、もし……嫌いって言われちゃったら、どうしよう……」
自分の気持ちを言って、それを断られたら? 受け入れてもらえなかったら。それを考えると一気に気が重くなる。
マリオンやシビルに教えてもらい、自分の中に芽生えたそれが恋というものである、と理解してきた。前にヴィヒトリに治せないと言われたのは、恋とは薬で治すような病気ではないとも教わった。なので恋が死に直結していると思い込んでいた誤解は、すでに解けている。
ベルトルドやアルカネットから愛されている、それとはまた違う感覚だった。2人からの愛は安心感や温かい心地よさがある。時に度が過ぎると感じることもあるが、失えば計り知れないほど悲しいだろう。
メルヴィンに対する自分の気持ちは、そうした感覚とは違う。沸き上がってくるこの気持ちを言葉では言い表せない。そして通じ合ったとき、どれほどの歓喜に包まれるだろうか。だからメルヴィンと恋愛をしてみたいと、強く思っていた。
「オレさ、これでも恋愛経験豊富なの。だから見てて判るよ。メルヴィンはキューリちゃんの気持ちを、一番幸せな形で受け止めてくれる」
「ほ、ほんと!?」
「うん。断言してもいいよ」
にっこりとルーファスが笑んで断言すると、キュッリッキはほんのりと頬を染めて、自然と両手を握り締め胸に押し当てた。
(もっとも、一番の壁は、あのオヤジたちかもなあ)
幸せな世界に浸るキュッリッキを見つめながら、最大の天敵を思い浮かべる。
キュッリッキを溺愛するベルトルドとアルカネットが、そう簡単に2人の仲を許すとは思えないのだ。
ベルトルドとアルカネットが、キュッリッキの嫌がることを進んですることは有り得ないだろう。しかし色恋沙汰となれば、話は別なように思われる。
(とんでもないのに好かれたもんだ、キューリちゃんは)
いつか衝突する日が来るだろうことを思い、ルーファスは心の中でため息をついた。
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