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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode347
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遺跡では何かの力が働いて、キュッリッキの力を封じ込めてしまったそうだが、それでも事前対策を何もしていなかったのは、ライオン傭兵団の落ち度である。過信しすぎていた。
そしてもう一つ、ルーファスは怒っている。
あれだけ可愛がり、キュッリッキを溺愛しているベルトルドとアルカネットの2人が、今回の作戦でキュッリッキを利用していることだ。
同意のこととは言え、キュッリッキの身に降りかかる危険は、想像を絶することになるだろう。ただ守ればいいという話ではないのだ。
メルヴィンに恋心を芽生えさせたキュッリッキへの、嫌がらせではないか、そうルーファスは勘ぐりたくなるのだった。
(ふぅ。アレコレ考えてもしょうがないよね。とにかく無事に守りきらないと)
ルーファスは心の中で苦笑いして、軽く頭を撫でた。
「安心して守られてて。元騎士のオレもついてるからね」
「うん」
2人の仲間の心強い言葉に、キュッリッキは嬉しそうに歯を見せて笑った。
「さて、今日はもう宿をとって、明日出発にしない?」
夕暮れに染まる街並みを窓から眺め、ルーファスが提案すると、メルヴィンも頷く。
「慌てなくても大丈夫ですし、そうしましょうか」
「どうせなら良い部屋とろうよ、旅費はベルトルド様持ちだし」
「いいですね、そうしましょう」
エグザイル・システムからあまり遠くない場所にある、5階建ての立派な宿に行くと、3人部屋は満室で、特別室しか空いてないかった。エグザイル・システムが使えず足止めされた一般人たちが、押し寄せているらしい。
旅費はベルトルド持ちだしと、ルーファスはその一室をとった。しかしそれに目ざとく気づいたキュッリッキが、ルーファスの軍服をちょこちょこ引っ張る。
「ねえルーさん、もしかして、3人で一緒の部屋に泊まるの?」
「もちろん」
アタリマエ、という表情(かお)で言われ、キュッリッキの顔が途端に真っ赤になる。
「だ、だ、だ、だだだってだって、そんな同室とかアタシあの」
「心配しなくっても手は出さなって。ンなことしたらベルトルド様とアルカネットさんに殺されちゃうしね~」
「そんなこと心配してないんだからーーー!!」
反射的にロビーで大声を張り上げ、慌てたルーファスに口を押さえられる。
「ふごっふがががが」
「取り敢えず部屋行こうネ、部屋」
周りの注目を浴び、ルーファスは愛想笑いを作って、口を押さえたキュッリッキを小脇に抱えて特別室を目指した。
5階にある特別室に入ると、ルーファスはキュッリッキを床に下ろす。
「いいかい、キューリちゃんを守るために、片時も傍を離れるなと命じられているんだ。部屋を別々にして万が一のことがあったら、おれら真っ先に殺されちゃうよ~~」
両手を広げて悲壮感たっぷりに言われても、キュッリッキは真っ赤な顔を俯かせて口を結んだ。
「着替えには衝立もありますし、絶対に見たりしませんから、安心してください」
ルーファスとメルヴィンの言ってることは、とっくに理解の範囲内だ。
そんなことを心配してるわけじゃないのだ。
ベルトルドやアルカネットと一緒に寝ることに抵抗はない。さすがに慣れてしまった。おそらくルーファスと一緒に寝るのも平気だろう。
問題は、メルヴィンも一緒に寝ることだ。
そしてもう一つ、ルーファスは怒っている。
あれだけ可愛がり、キュッリッキを溺愛しているベルトルドとアルカネットの2人が、今回の作戦でキュッリッキを利用していることだ。
同意のこととは言え、キュッリッキの身に降りかかる危険は、想像を絶することになるだろう。ただ守ればいいという話ではないのだ。
メルヴィンに恋心を芽生えさせたキュッリッキへの、嫌がらせではないか、そうルーファスは勘ぐりたくなるのだった。
(ふぅ。アレコレ考えてもしょうがないよね。とにかく無事に守りきらないと)
ルーファスは心の中で苦笑いして、軽く頭を撫でた。
「安心して守られてて。元騎士のオレもついてるからね」
「うん」
2人の仲間の心強い言葉に、キュッリッキは嬉しそうに歯を見せて笑った。
「さて、今日はもう宿をとって、明日出発にしない?」
夕暮れに染まる街並みを窓から眺め、ルーファスが提案すると、メルヴィンも頷く。
「慌てなくても大丈夫ですし、そうしましょうか」
「どうせなら良い部屋とろうよ、旅費はベルトルド様持ちだし」
「いいですね、そうしましょう」
エグザイル・システムからあまり遠くない場所にある、5階建ての立派な宿に行くと、3人部屋は満室で、特別室しか空いてないかった。エグザイル・システムが使えず足止めされた一般人たちが、押し寄せているらしい。
旅費はベルトルド持ちだしと、ルーファスはその一室をとった。しかしそれに目ざとく気づいたキュッリッキが、ルーファスの軍服をちょこちょこ引っ張る。
「ねえルーさん、もしかして、3人で一緒の部屋に泊まるの?」
「もちろん」
アタリマエ、という表情(かお)で言われ、キュッリッキの顔が途端に真っ赤になる。
「だ、だ、だ、だだだってだって、そんな同室とかアタシあの」
「心配しなくっても手は出さなって。ンなことしたらベルトルド様とアルカネットさんに殺されちゃうしね~」
「そんなこと心配してないんだからーーー!!」
反射的にロビーで大声を張り上げ、慌てたルーファスに口を押さえられる。
「ふごっふがががが」
「取り敢えず部屋行こうネ、部屋」
周りの注目を浴び、ルーファスは愛想笑いを作って、口を押さえたキュッリッキを小脇に抱えて特別室を目指した。
5階にある特別室に入ると、ルーファスはキュッリッキを床に下ろす。
「いいかい、キューリちゃんを守るために、片時も傍を離れるなと命じられているんだ。部屋を別々にして万が一のことがあったら、おれら真っ先に殺されちゃうよ~~」
両手を広げて悲壮感たっぷりに言われても、キュッリッキは真っ赤な顔を俯かせて口を結んだ。
「着替えには衝立もありますし、絶対に見たりしませんから、安心してください」
ルーファスとメルヴィンの言ってることは、とっくに理解の範囲内だ。
そんなことを心配してるわけじゃないのだ。
ベルトルドやアルカネットと一緒に寝ることに抵抗はない。さすがに慣れてしまった。おそらくルーファスと一緒に寝るのも平気だろう。
問題は、メルヴィンも一緒に寝ることだ。
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