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モナルダ大陸戦争開戦へ編
episode345
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ボルクンド王国はモナルダ大陸のほぼ中心に領土を構えている。
バーリエル男爵が皇王から領土の統治を任され就任し、何代かおとなしくしていたが、やがて独立を謳って反旗を翻した。長い攻防のすえ、先々代の頃に自治を認められ、属国という形で独立を果たした。
現バーリエル王は別段完全独立に固執しておらず、属国とは言えあまり締めつけのない皇国に、反乱を抱く気は毛頭なかった。
とくにエレギア地方にはエルアーラという遺跡があり、そこは皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルが常駐し管理していたので、その恩恵を受けて国は潤っていた。
しかしソレル王国のヴェイセル王から反乱を唆され、平和に飽いていたこともあり、簡単に同意して連合を組んだ。
いざ連合を組んで皇国に反旗を翻してみたのはいいものの、普段から不満があったわけでも、独立思想に傾倒していたわけでもない。バーリエル王は何も深く考えてはいなかった。
平々凡々な君主の突然に行動に、臣下も国民も驚愕を隠せなかった。それでも王が戦えというのなら戦うが、当の王が忽然と姿を消してしまったのだ。まさか国を捨てて、いそいそ遺跡へ逃げ込んでいるなどとは思いもよらない。
王を欠いて反乱の姿勢をとったまま取り残されたボルクンド王国民は、すでに皇国軍第ニ正規部隊によりエグザイル・システムを抑えられ、どうしていいか判らずうろたえるばかりだ。
そんな国民を哀れに思ったか、バーリエル王の嫡子であるカルロッテ王女が突然陣頭指揮に立ち上がり、皇国軍第ニ正規部隊と正面衝突した。
「そんなわけで、オレたちは直接ボルクンド王国に飛べず、ここブリリオート王国の首都バロータから、エレギアを目指すことになりました」
「ちゃんちゃん」
ルーファスの説明を受け、キュッリッキは茶化しながら締めくくった。
エグザイル・システムは、太古から各惑星に複数存在する転送装置である。
どの国もエグザイル・システムのある場所に首都を置く。国の玄関口となるからだ。
皇都イララクスのエグザイル・システムの建物の規模には程遠いが、バロータのエグザイル・システムの建物は小さな宮殿のようだ。
観葉植物が随所に置かれ、小さな水槽などが視覚に涼しい待合室を陣取り、キュッリッキ、ルーファス、メルヴィンの3人は、向かい合ってベンチに座っていた。
皇国軍第ニ正規部隊が接収しているため、建物の中に一般人はいない。一般人の渡航は禁止されている。建物内外は誰も入り込めないくらいに、武装した第ニ正規部隊の軍人が詰めていた。
「カルロッテっていう王女が、全部悪いんだね」
キュッリッキが腕を組んで唇を尖らせて言うと、ルーファスもウンウンと同意する。
「そうはいっても、父王と共に逃げ出さずに、責任を取ろうとする姿勢は立派じゃないですか」
肩をすくめながらメルヴィンが擁護すると、
「おとなしく降参しちゃったほうが、無用な血が流れずに済んだんだよ。メンツだとか威信だとか言ったって、巻き添え食った国民はいい迷惑なんだから」
カルロッテ王女を擁護するメルヴィンに、キュッリッキは軽い嫉妬を覚えて、拗ねて正論で反発した。
「まー、キューリちゃんの言うとおりだけど、王室だとか軍人だとかは、譲れないものがあるんだよね、きっと」
ルーファスがやんわりと間に入って、拗ねるキュッリッキの頭を優しく撫でてやった。
メルヴィンも苦笑を浮かべる。
バーリエル男爵が皇王から領土の統治を任され就任し、何代かおとなしくしていたが、やがて独立を謳って反旗を翻した。長い攻防のすえ、先々代の頃に自治を認められ、属国という形で独立を果たした。
現バーリエル王は別段完全独立に固執しておらず、属国とは言えあまり締めつけのない皇国に、反乱を抱く気は毛頭なかった。
とくにエレギア地方にはエルアーラという遺跡があり、そこは皇国のアルケラ研究機関ケレヴィルが常駐し管理していたので、その恩恵を受けて国は潤っていた。
しかしソレル王国のヴェイセル王から反乱を唆され、平和に飽いていたこともあり、簡単に同意して連合を組んだ。
いざ連合を組んで皇国に反旗を翻してみたのはいいものの、普段から不満があったわけでも、独立思想に傾倒していたわけでもない。バーリエル王は何も深く考えてはいなかった。
平々凡々な君主の突然に行動に、臣下も国民も驚愕を隠せなかった。それでも王が戦えというのなら戦うが、当の王が忽然と姿を消してしまったのだ。まさか国を捨てて、いそいそ遺跡へ逃げ込んでいるなどとは思いもよらない。
王を欠いて反乱の姿勢をとったまま取り残されたボルクンド王国民は、すでに皇国軍第ニ正規部隊によりエグザイル・システムを抑えられ、どうしていいか判らずうろたえるばかりだ。
そんな国民を哀れに思ったか、バーリエル王の嫡子であるカルロッテ王女が突然陣頭指揮に立ち上がり、皇国軍第ニ正規部隊と正面衝突した。
「そんなわけで、オレたちは直接ボルクンド王国に飛べず、ここブリリオート王国の首都バロータから、エレギアを目指すことになりました」
「ちゃんちゃん」
ルーファスの説明を受け、キュッリッキは茶化しながら締めくくった。
エグザイル・システムは、太古から各惑星に複数存在する転送装置である。
どの国もエグザイル・システムのある場所に首都を置く。国の玄関口となるからだ。
皇都イララクスのエグザイル・システムの建物の規模には程遠いが、バロータのエグザイル・システムの建物は小さな宮殿のようだ。
観葉植物が随所に置かれ、小さな水槽などが視覚に涼しい待合室を陣取り、キュッリッキ、ルーファス、メルヴィンの3人は、向かい合ってベンチに座っていた。
皇国軍第ニ正規部隊が接収しているため、建物の中に一般人はいない。一般人の渡航は禁止されている。建物内外は誰も入り込めないくらいに、武装した第ニ正規部隊の軍人が詰めていた。
「カルロッテっていう王女が、全部悪いんだね」
キュッリッキが腕を組んで唇を尖らせて言うと、ルーファスもウンウンと同意する。
「そうはいっても、父王と共に逃げ出さずに、責任を取ろうとする姿勢は立派じゃないですか」
肩をすくめながらメルヴィンが擁護すると、
「おとなしく降参しちゃったほうが、無用な血が流れずに済んだんだよ。メンツだとか威信だとか言ったって、巻き添え食った国民はいい迷惑なんだから」
カルロッテ王女を擁護するメルヴィンに、キュッリッキは軽い嫉妬を覚えて、拗ねて正論で反発した。
「まー、キューリちゃんの言うとおりだけど、王室だとか軍人だとかは、譲れないものがあるんだよね、きっと」
ルーファスがやんわりと間に入って、拗ねるキュッリッキの頭を優しく撫でてやった。
メルヴィンも苦笑を浮かべる。
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