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それぞれの悪巧み編
episode344
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「これをエルアーラに運ぶ手間を、こいつらが軽減してくれると、淡い期待を抱いていたが。――結界が山自体に張られていたとかなんとか言っていたな。防御を張っていたら、なにかしら触れるものを感じた」
「それは間違いありませんでした。私の魔法もかなり阻害されていましたから。そうでなければ、一瞬で吹き飛ばしていましたよ」
「ふふん、お前の力を阻害するのか。山が消えた途端、神殿にも結界が起こったな。どうにも曰く有りげだなあ、これは…」
長方形のような石造りの神殿を見上げ、ベルトルドは眉を寄せた。
先程から神殿を持ち上げようと力を込めているが、神殿はベルトルドのサイ《超能力》を拒み、跳ね返している。それに気づいたアルカネットが、エルプティオ・ヘリオスをぶつけるが、全て弾き飛ばされた。
「仕掛けでもあるのかな?」
ベルトルドは腕を組んで首をかしげる。
「中にあるレディトゥス・システムだけ取り出せれば、こんな神殿は破壊してしまってもいいのでは?」
「それはダメなようだな」
「なぜです?」
「壊しちゃダメって、シ・アティウスに言われてる」
アルカネットは肩をすくめる。
「では、この結界をどうすればいいか、彼に教えてもらいましょう。このままでは、リッキーさんに合流できません」
「だよな。シ・アティウスはアルイールに着いてるかな」
「ええ、とっくに」
「なら、ここに転送する」
接収したアルイールの街角のカフェで、リュリュとコーヒーを飲んでいたシ・アティウスは、目の前にいたはずのリュリュがベルトルドになっていることに首をかしげた。
「なんだお前は、優雅にコーヒーなんぞ飲んでいたのか。俺が真面目に遊んでいるというのに」
「………転送するなら、その前に一言仰ってください」
別段驚いた風もなく、シ・アティウスは手にしていたコーヒーを飲み干した。その様子を見て、ベルトルドは不機嫌そうに口を曲げる。
「リアクションがなさすぎる。張り合いのない奴だ」
「あなたのお茶目にも、もう慣れました」
「それにだ。コーヒーなんぞ無粋なものを平気で飲むな。豆を焦がした焦げ汁だぞ? 焦げ焦げ汁! 焦げを水に溶かして飲むとか酔狂すぎる! 想像するだけで鳥肌が立つわ! 俺には耐えられん」
「……まあ、たまに飲むと悪くないので」
「だからお前はエロメガネなんだ」
「意味不明です」
シ・アティウスは辺りに視線を配り、横にそびえる神殿をじっくりと眺め、自分がどこにいるのかを把握する。
「私を呼び寄せたということは、神殿の扱いに詰まったんですね」
「ええ。この通り結界で手が出せないのですよ」
アルカネットがエルプティオ・ヘリオスの火の玉を神殿に投げると、火の玉は弾き飛ばされ霧散した。
それを見て暫く考え込んでいたシ・アティウスは、「ふむ」と呟いて、すたすたと神殿に向かって歩き出した。
それを見たベルトルドとアルカネットは、ビックリして目を見開いた。
シ・アティウスは阻害されることもなく、易易と神殿の中に入っていったからだ。
「おい?」
神殿の中に消えたシ・アティウスは、すぐに外に出てきた。
「入るだけなら問題ないようです」
ベルトルドとアルカネットは、顔を見合わせてため息をついた。
「害する行為には、結界の力が働くように出来ているようです。エルアーラ遺跡に運ぶためには、この結界を壊す必要がありますね」
「ううん、こういうのは専門外だ。すぐに壊せるのか? 結界」
「残念ですが、今すぐには不可能ですね。方法も判りませんし。――調べる時間を下さい」
「エルアーラ制圧を先にしてしまったほうが、よさそうですね」
ベルトルドはそれに頷く。すでに陽は沈み、あたりは闇に包み込まれていた。
「ダエヴァの一部隊をこちらに回すか。合流し次第、俺たちはエレギアへ向かう」
「判りました」
シ・アティウスは神殿を見上げ、ある仮説を思い浮かべていた。そしてそれが仮説とそう違っていないことを、薄々と感じていた。
「それは間違いありませんでした。私の魔法もかなり阻害されていましたから。そうでなければ、一瞬で吹き飛ばしていましたよ」
「ふふん、お前の力を阻害するのか。山が消えた途端、神殿にも結界が起こったな。どうにも曰く有りげだなあ、これは…」
長方形のような石造りの神殿を見上げ、ベルトルドは眉を寄せた。
先程から神殿を持ち上げようと力を込めているが、神殿はベルトルドのサイ《超能力》を拒み、跳ね返している。それに気づいたアルカネットが、エルプティオ・ヘリオスをぶつけるが、全て弾き飛ばされた。
「仕掛けでもあるのかな?」
ベルトルドは腕を組んで首をかしげる。
「中にあるレディトゥス・システムだけ取り出せれば、こんな神殿は破壊してしまってもいいのでは?」
「それはダメなようだな」
「なぜです?」
「壊しちゃダメって、シ・アティウスに言われてる」
アルカネットは肩をすくめる。
「では、この結界をどうすればいいか、彼に教えてもらいましょう。このままでは、リッキーさんに合流できません」
「だよな。シ・アティウスはアルイールに着いてるかな」
「ええ、とっくに」
「なら、ここに転送する」
接収したアルイールの街角のカフェで、リュリュとコーヒーを飲んでいたシ・アティウスは、目の前にいたはずのリュリュがベルトルドになっていることに首をかしげた。
「なんだお前は、優雅にコーヒーなんぞ飲んでいたのか。俺が真面目に遊んでいるというのに」
「………転送するなら、その前に一言仰ってください」
別段驚いた風もなく、シ・アティウスは手にしていたコーヒーを飲み干した。その様子を見て、ベルトルドは不機嫌そうに口を曲げる。
「リアクションがなさすぎる。張り合いのない奴だ」
「あなたのお茶目にも、もう慣れました」
「それにだ。コーヒーなんぞ無粋なものを平気で飲むな。豆を焦がした焦げ汁だぞ? 焦げ焦げ汁! 焦げを水に溶かして飲むとか酔狂すぎる! 想像するだけで鳥肌が立つわ! 俺には耐えられん」
「……まあ、たまに飲むと悪くないので」
「だからお前はエロメガネなんだ」
「意味不明です」
シ・アティウスは辺りに視線を配り、横にそびえる神殿をじっくりと眺め、自分がどこにいるのかを把握する。
「私を呼び寄せたということは、神殿の扱いに詰まったんですね」
「ええ。この通り結界で手が出せないのですよ」
アルカネットがエルプティオ・ヘリオスの火の玉を神殿に投げると、火の玉は弾き飛ばされ霧散した。
それを見て暫く考え込んでいたシ・アティウスは、「ふむ」と呟いて、すたすたと神殿に向かって歩き出した。
それを見たベルトルドとアルカネットは、ビックリして目を見開いた。
シ・アティウスは阻害されることもなく、易易と神殿の中に入っていったからだ。
「おい?」
神殿の中に消えたシ・アティウスは、すぐに外に出てきた。
「入るだけなら問題ないようです」
ベルトルドとアルカネットは、顔を見合わせてため息をついた。
「害する行為には、結界の力が働くように出来ているようです。エルアーラ遺跡に運ぶためには、この結界を壊す必要がありますね」
「ううん、こういうのは専門外だ。すぐに壊せるのか? 結界」
「残念ですが、今すぐには不可能ですね。方法も判りませんし。――調べる時間を下さい」
「エルアーラ制圧を先にしてしまったほうが、よさそうですね」
ベルトルドはそれに頷く。すでに陽は沈み、あたりは闇に包み込まれていた。
「ダエヴァの一部隊をこちらに回すか。合流し次第、俺たちはエレギアへ向かう」
「判りました」
シ・アティウスは神殿を見上げ、ある仮説を思い浮かべていた。そしてそれが仮説とそう違っていないことを、薄々と感じていた。
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