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それぞれの悪巧み編
episode342
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ハッとなって目を開き、ベルトルドはリュリュの横顔を見る。
「リュー…」
「そろそろ行きましょうか、ベルトルド様」
部下への指示を終えたアルカネットが来ると、ベルトルドは軽く頭を振って頷いた。
「リッキーたちはもう発ったのか?」
「ええ、もう出発しましたよ」
「そうか……。暫く会えないから、もう一度抱きしめたかったんだが」
「私はしっかり抱擁してきましたよ。ほっぺにキスもしてもらいました」
爽やかに微笑むアルカネットの顔を、ベルトルドは悔し涙を浮かべ、これでもかと唇を噛み締めながら睨みつけた。
「先行させておいた偵察の報告では、小隊が何やらしているそうです」
「何やらって、なんだ??」
「使えない者を送ったのか、報告がいい加減ですので、私も知りません」
「どんだけ人材不足だ…」
ベルトルドは悲しそうな顔をアルカネットに向ける。
「暇そうな親衛隊の者を使ったようですよ」
「畑違いの人間を何故使う」
「人手不足だったのでしょう。まあ、結果をアレコレ論じていても時間の無駄です。小隊がいようが大隊がいようが、我々には関係ないのですから」
「まあな」
あとで新しい規則を設けてやる、とベルトルドは誓った。
「おし、行くか」
ベルトルドはアルカネットの肩に手を置くと、空間転移した。
ソレル王国軍に席を置くベネディクト中将は、国王からの勅命を受け、魔法使いとサイ《超能力》使いを組み込んだ、1個小隊を率いてナルバ山に詰めていた。
ナルバ山の中にある神殿を、ボルクンド王国のエレギアにある、エルアーラ遺跡まで運べというのである。そのために山を吹き飛ばしても構わない、とも言われていた。
神殿を壊さず山を吹き飛ばすために、魔法使いとサイ《超能力》使いを動員しているのだが、これが思うようにいかない。
ランクの高い者は全て、ソレル王と共にエルアーラに移っている。中程度のランクでも作業に問題なし、との判断で連れてきたが、ベネディクト中将はやや呆れ顔で首を振った。
樹木の生えていない禿山一つ、特殊スキル〈才能〉を持つ彼らは吹き飛ばせないでいるのだ。
「こんなに魔法とは、弱いものなのか……?」
備えているのが戦闘スキル〈才能〉のベネディクト中将には、魔法の威力がどの程度なのかあまり理解していない。魔法が使えればこの山程度、簡単に吹き飛ばせると思っていた。
魔法使いの一人グンナル大尉は、情けない表情を貼り付けたままベネディクト中将の前に立った。
「強力な結界のようなものが、山全体に張り巡らせられているようで、我々の手には余ります、閣下……」
今にも消え入りそうな声でグンナル大尉が報告すると、ベネディクト中将は腕を組んで山を見上げた。
「破壊の威力が強ければ、結界ごと吹き飛ばせるのか?」
「そうですね…、かなりの威力があれば、壊せると思います」
「ふむ。それなら爆薬も惜しまず使う事にしようか。サイ《超能力》使いには神殿への防御の強化、魔法使いは引き続き攻撃を続行。おい――」
ベネディクト中将の指示で爆薬班が手配され、そのための準備で麓は騒然となった。
「魔法使いが15人、サイ《超能力》使いが10人。雁首揃えて仕事もできないのでは、養ってる意味がないな」
「誰だ!?」
「リュー…」
「そろそろ行きましょうか、ベルトルド様」
部下への指示を終えたアルカネットが来ると、ベルトルドは軽く頭を振って頷いた。
「リッキーたちはもう発ったのか?」
「ええ、もう出発しましたよ」
「そうか……。暫く会えないから、もう一度抱きしめたかったんだが」
「私はしっかり抱擁してきましたよ。ほっぺにキスもしてもらいました」
爽やかに微笑むアルカネットの顔を、ベルトルドは悔し涙を浮かべ、これでもかと唇を噛み締めながら睨みつけた。
「先行させておいた偵察の報告では、小隊が何やらしているそうです」
「何やらって、なんだ??」
「使えない者を送ったのか、報告がいい加減ですので、私も知りません」
「どんだけ人材不足だ…」
ベルトルドは悲しそうな顔をアルカネットに向ける。
「暇そうな親衛隊の者を使ったようですよ」
「畑違いの人間を何故使う」
「人手不足だったのでしょう。まあ、結果をアレコレ論じていても時間の無駄です。小隊がいようが大隊がいようが、我々には関係ないのですから」
「まあな」
あとで新しい規則を設けてやる、とベルトルドは誓った。
「おし、行くか」
ベルトルドはアルカネットの肩に手を置くと、空間転移した。
ソレル王国軍に席を置くベネディクト中将は、国王からの勅命を受け、魔法使いとサイ《超能力》使いを組み込んだ、1個小隊を率いてナルバ山に詰めていた。
ナルバ山の中にある神殿を、ボルクンド王国のエレギアにある、エルアーラ遺跡まで運べというのである。そのために山を吹き飛ばしても構わない、とも言われていた。
神殿を壊さず山を吹き飛ばすために、魔法使いとサイ《超能力》使いを動員しているのだが、これが思うようにいかない。
ランクの高い者は全て、ソレル王と共にエルアーラに移っている。中程度のランクでも作業に問題なし、との判断で連れてきたが、ベネディクト中将はやや呆れ顔で首を振った。
樹木の生えていない禿山一つ、特殊スキル〈才能〉を持つ彼らは吹き飛ばせないでいるのだ。
「こんなに魔法とは、弱いものなのか……?」
備えているのが戦闘スキル〈才能〉のベネディクト中将には、魔法の威力がどの程度なのかあまり理解していない。魔法が使えればこの山程度、簡単に吹き飛ばせると思っていた。
魔法使いの一人グンナル大尉は、情けない表情を貼り付けたままベネディクト中将の前に立った。
「強力な結界のようなものが、山全体に張り巡らせられているようで、我々の手には余ります、閣下……」
今にも消え入りそうな声でグンナル大尉が報告すると、ベネディクト中将は腕を組んで山を見上げた。
「破壊の威力が強ければ、結界ごと吹き飛ばせるのか?」
「そうですね…、かなりの威力があれば、壊せると思います」
「ふむ。それなら爆薬も惜しまず使う事にしようか。サイ《超能力》使いには神殿への防御の強化、魔法使いは引き続き攻撃を続行。おい――」
ベネディクト中将の指示で爆薬班が手配され、そのための準備で麓は騒然となった。
「魔法使いが15人、サイ《超能力》使いが10人。雁首揃えて仕事もできないのでは、養ってる意味がないな」
「誰だ!?」
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