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それぞれの悪巧み編
episode341
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ベルトルドはキュッリッキの足元に視線を向ける。
「結局、居着いたのか」
白銀色の仔犬の横には、漆黒の毛並みの仔犬が無邪気にじゃれついている。
「うん~……なんか、フェンリルと一緒に居たいんだって」
式典の見世物でアルケラから招いたヨルムガンド、リンドヴルム、スレイプニルはすぐにアルケラへ戻した。しかしフローズヴィトニルはフェンリルのそばにいるのだと言って、仔犬の姿になってこちらの世界に留まった。
「居て困るものじゃないし、いっかなって」
「なるほど……。アルケラの生き物にも、親愛の情とかあるんだな?」
鬱陶しそうにするフェンリルにじゃれつくフローズヴィトニルを見つめ、ベルトルドは妙に感心したように呟いた。
8月10日の開戦に備え、ハワドウレ皇国軍は式典前から移動を開始していた。
ワイ・メア大陸の反対側にあるモナルダ大陸が開戦地になることで、あらゆる移動は大変なものになった。
先行していた第ニ正規部隊により、ソレル王国、ボクルンド王国、エクダル国、ベルマン公国、そして属国としての立場を守るオングストレーム国、ブリリオート王国のエグザイル・システムは全て抑えられ、1週間かけての大移動が行われた。
海上からも戦艦で戦力は運ばれたが、第七正規部隊を抜かした全ての部隊が、モナルダ大陸に送られたのだ。大変な人数である。
兵士たちを飢えさせないために、食料や物資も相当数が送られている。現地調達だけはするなと、ベルトルドから厳命されているからだ。それを管理する者、医療に携わる者、向かったのは軍人だけではない。
3年前のコッコラ王国の反乱など小さなものだったと、後に人々は思うほどの規模に膨れ上がっていた。
「これじゃ大国が丸ごと引っ越してきたような規模よね、副宰相のあーたもいるから」
「そうだなぁ。まあ、今回軍はブルーベル将軍に丸投げ、管理はリューに丸投げだから、俺は思う存分遊んでくる」
「ふんっ。おいたは程々にね」
肩をすくめたリュリュに、ベルトルドは声を立てて笑った。
戦争の原因を作ったのはソレル王国だが、実はここまで大規模に相手をする必要は全くなかったのである。せいぜい精鋭部隊を1つ送り込めばそれだけでよかった。
しかしこの戦争を利用して、ベルトルドには目的がある。そしてエルアーラ遺跡を隠すために派手なパフォーマンスが必要となった。キュッリッキの召喚姿を世界に流したのもその一つだ。そのままキュッリッキは囮として利用する。
「ホントにイイの? 小娘をもっとも大きな危険に放り込んで」
「…リッキーには、本当に申し訳ない」
「小娘の利用価値は高いものね」
「イヤミを言うな、本気で悪いと思ってるんだ、俺は」
複雑な表情を浮かべ、ベルトルドは自分の両手を見る。
「もっと時間があれば、リッキーを利用することなどしなかったが。遺跡を衆目に晒すわけにはいかない、絶対に。――だから俺が出て、早期に戦争を集結させ、その後はリッキーを危険な目に遭わせることはしない」
両手の拳を握り締め、ベルトルドは目を伏せた。その様子を厳しい目で見ていたリュリュは、フッと視線を逸らす。
「もうこれ以上、小娘を泣かせるンじゃなくってよ。悲しむわ、おねえちゃん…」
「結局、居着いたのか」
白銀色の仔犬の横には、漆黒の毛並みの仔犬が無邪気にじゃれついている。
「うん~……なんか、フェンリルと一緒に居たいんだって」
式典の見世物でアルケラから招いたヨルムガンド、リンドヴルム、スレイプニルはすぐにアルケラへ戻した。しかしフローズヴィトニルはフェンリルのそばにいるのだと言って、仔犬の姿になってこちらの世界に留まった。
「居て困るものじゃないし、いっかなって」
「なるほど……。アルケラの生き物にも、親愛の情とかあるんだな?」
鬱陶しそうにするフェンリルにじゃれつくフローズヴィトニルを見つめ、ベルトルドは妙に感心したように呟いた。
8月10日の開戦に備え、ハワドウレ皇国軍は式典前から移動を開始していた。
ワイ・メア大陸の反対側にあるモナルダ大陸が開戦地になることで、あらゆる移動は大変なものになった。
先行していた第ニ正規部隊により、ソレル王国、ボクルンド王国、エクダル国、ベルマン公国、そして属国としての立場を守るオングストレーム国、ブリリオート王国のエグザイル・システムは全て抑えられ、1週間かけての大移動が行われた。
海上からも戦艦で戦力は運ばれたが、第七正規部隊を抜かした全ての部隊が、モナルダ大陸に送られたのだ。大変な人数である。
兵士たちを飢えさせないために、食料や物資も相当数が送られている。現地調達だけはするなと、ベルトルドから厳命されているからだ。それを管理する者、医療に携わる者、向かったのは軍人だけではない。
3年前のコッコラ王国の反乱など小さなものだったと、後に人々は思うほどの規模に膨れ上がっていた。
「これじゃ大国が丸ごと引っ越してきたような規模よね、副宰相のあーたもいるから」
「そうだなぁ。まあ、今回軍はブルーベル将軍に丸投げ、管理はリューに丸投げだから、俺は思う存分遊んでくる」
「ふんっ。おいたは程々にね」
肩をすくめたリュリュに、ベルトルドは声を立てて笑った。
戦争の原因を作ったのはソレル王国だが、実はここまで大規模に相手をする必要は全くなかったのである。せいぜい精鋭部隊を1つ送り込めばそれだけでよかった。
しかしこの戦争を利用して、ベルトルドには目的がある。そしてエルアーラ遺跡を隠すために派手なパフォーマンスが必要となった。キュッリッキの召喚姿を世界に流したのもその一つだ。そのままキュッリッキは囮として利用する。
「ホントにイイの? 小娘をもっとも大きな危険に放り込んで」
「…リッキーには、本当に申し訳ない」
「小娘の利用価値は高いものね」
「イヤミを言うな、本気で悪いと思ってるんだ、俺は」
複雑な表情を浮かべ、ベルトルドは自分の両手を見る。
「もっと時間があれば、リッキーを利用することなどしなかったが。遺跡を衆目に晒すわけにはいかない、絶対に。――だから俺が出て、早期に戦争を集結させ、その後はリッキーを危険な目に遭わせることはしない」
両手の拳を握り締め、ベルトルドは目を伏せた。その様子を厳しい目で見ていたリュリュは、フッと視線を逸らす。
「もうこれ以上、小娘を泣かせるンじゃなくってよ。悲しむわ、おねえちゃん…」
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