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それぞれの悪巧み編
episode340
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ベルトルドとアルカネットと共に、ソレル王国首都アルイールへエグザイル・システムで飛んだキュッリッキは、メルヴィンとルーファスと3人で、ボルクンド王国エレギア地方へ向かうことになっていた。
「ベルトルドさん、一緒に行かないの?」
不安そうに見上げてくるキュッリッキに微笑みながら、ベルトルドは頷いた。
「ちょっと寄り道があるんでな。用がすんだらアルカネットと共にすぐ追いかける。寂しいだろうが、それまで我慢してるんだぞ」
キュッリッキを優しく抱き締めながら、何度も何度も頭を撫でる。
「ライオンの連中との合流は、エレギアに入ってからになるだろう。それまでリッキーをしっかり守れ。おそらくソレル王の手の者が、リッキーを狙うだろうから」
式典で全世界に向けてキュッリッキの力を見せつけたのだ。恐らくソレル王は確実に狙ってくるだろう。
それが判っていて別行動を取るのは、一つはキュッリッキを囮にしているからだ。
大事な用を片付ける間、キュッリッキに敵の意識を集中させる。
愛する者を危険な囮に利用するのはどうか、とのツッコミをリュリュからもらっている。矛盾の極みだが、それでもベルトルドとアルカネットには、譲れない大切な目的があるのだ。
犠牲にしないために、メルヴィンとルーファスを護衛につけている。
ベルトルドはキュッリッキを抱きしめる手に力を込め、メルヴィンとルーファスに厳しい目を向ける。
「ナルバ山のような失態は、二度と犯すなよ」
「はっ」
「はいっ」
キュッリッキは慌てて上を向き、
「あのことは、誰も悪くないんだよっ、アタシが自分で招いたことだから、アタシが全部悪いの! 本当だよ!」
ベルトルドの胸にすがって、キュッリッキは必死に叫んだ。
「みんな悪くないの、だから――」
「リッキーは悪くないぞ、少しもな」
キュッリッキに向ける目は、どこまでも優しい。しかしナルバ山の一件では、ベルトルドとアルカネットの、ライオン傭兵団へ向ける怒りはいまだにおさまっていない。事あるごとに話題に出れば、2人の怒りを感じてキュッリッキは心が痛んだ。
(本当に、アタシが悪いのに…)
全ての原因は自分にあるというのに、2人はキュッリッキを責めてこない。
そのことが、余計心に痛かった。
「いいかい、リッキー」
腰をかがめてキュッリッキと視線を同じくしたベルトルドは、キュッリッキの小さな肩にそっと両手を乗せる。
「ソレル王がリッキーの持つ召喚スキル〈才能〉を狙って、手の者を差し向けてくるだろう。あれだけ大々的に見せつけてやったからな、万難を排してでもリッキーを手に入れたがる」
「う…うん」
「俺とアルカネットが合流するまでは、リッキーも召喚の力を使って応戦するんだよ」
「はい」
「それと、何があるか判らないから、道中遺跡の中には絶対に入るんじゃないぞ」
「遺跡…」
「このモナルダ大陸には古代の遺跡がゴロゴロしている。不便かもしれないが、廃墟でもなんでも、遺跡には近づかないよう注意しなさい。万が一、ナルバ山の時のように力が封じられては困るからね」
「うん、判った」
固く頷くキュッリッキに優しく微笑み、額にキスをして身体を起こした。
「お前たちも遺跡を見かけたら、近づかず避けて通れ」
「了解です」
「判りました」
ルーファスとメルヴィンも、背筋を伸ばして神妙に頷いた。
「それにしても……」
「ベルトルドさん、一緒に行かないの?」
不安そうに見上げてくるキュッリッキに微笑みながら、ベルトルドは頷いた。
「ちょっと寄り道があるんでな。用がすんだらアルカネットと共にすぐ追いかける。寂しいだろうが、それまで我慢してるんだぞ」
キュッリッキを優しく抱き締めながら、何度も何度も頭を撫でる。
「ライオンの連中との合流は、エレギアに入ってからになるだろう。それまでリッキーをしっかり守れ。おそらくソレル王の手の者が、リッキーを狙うだろうから」
式典で全世界に向けてキュッリッキの力を見せつけたのだ。恐らくソレル王は確実に狙ってくるだろう。
それが判っていて別行動を取るのは、一つはキュッリッキを囮にしているからだ。
大事な用を片付ける間、キュッリッキに敵の意識を集中させる。
愛する者を危険な囮に利用するのはどうか、とのツッコミをリュリュからもらっている。矛盾の極みだが、それでもベルトルドとアルカネットには、譲れない大切な目的があるのだ。
犠牲にしないために、メルヴィンとルーファスを護衛につけている。
ベルトルドはキュッリッキを抱きしめる手に力を込め、メルヴィンとルーファスに厳しい目を向ける。
「ナルバ山のような失態は、二度と犯すなよ」
「はっ」
「はいっ」
キュッリッキは慌てて上を向き、
「あのことは、誰も悪くないんだよっ、アタシが自分で招いたことだから、アタシが全部悪いの! 本当だよ!」
ベルトルドの胸にすがって、キュッリッキは必死に叫んだ。
「みんな悪くないの、だから――」
「リッキーは悪くないぞ、少しもな」
キュッリッキに向ける目は、どこまでも優しい。しかしナルバ山の一件では、ベルトルドとアルカネットの、ライオン傭兵団へ向ける怒りはいまだにおさまっていない。事あるごとに話題に出れば、2人の怒りを感じてキュッリッキは心が痛んだ。
(本当に、アタシが悪いのに…)
全ての原因は自分にあるというのに、2人はキュッリッキを責めてこない。
そのことが、余計心に痛かった。
「いいかい、リッキー」
腰をかがめてキュッリッキと視線を同じくしたベルトルドは、キュッリッキの小さな肩にそっと両手を乗せる。
「ソレル王がリッキーの持つ召喚スキル〈才能〉を狙って、手の者を差し向けてくるだろう。あれだけ大々的に見せつけてやったからな、万難を排してでもリッキーを手に入れたがる」
「う…うん」
「俺とアルカネットが合流するまでは、リッキーも召喚の力を使って応戦するんだよ」
「はい」
「それと、何があるか判らないから、道中遺跡の中には絶対に入るんじゃないぞ」
「遺跡…」
「このモナルダ大陸には古代の遺跡がゴロゴロしている。不便かもしれないが、廃墟でもなんでも、遺跡には近づかないよう注意しなさい。万が一、ナルバ山の時のように力が封じられては困るからね」
「うん、判った」
固く頷くキュッリッキに優しく微笑み、額にキスをして身体を起こした。
「お前たちも遺跡を見かけたら、近づかず避けて通れ」
「了解です」
「判りました」
ルーファスとメルヴィンも、背筋を伸ばして神妙に頷いた。
「それにしても……」
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