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それぞれの悪巧み編
episode334
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「ベルトルド様は?」
2人の会話を肩をすくめて聞いていたアルカネットは、本題に戻す。
「ベルなら控え室でお着替えしてるわ。テレビ映えするよう派手に飾り立てようとしたら、ゴネて拗ねてイヤがるから、下官が苦労してるのン」
「そういうのは、嫌いな方ですからね」
様子が易く想像できて、アルカネットは苦笑する。
「今日の主役はこの小娘。まあ、ベルはパセリみたいなものだしねえ。豪華に目立っても、悪目立ちにしかならなわね」
「おやおやみなさん、お集まりで」
大きな身体をゆするように歩いてきたブルーベル将軍が、温厚な笑みを浮かべて挨拶した。これにアルカネットとリュリュが素早く敬礼する。
「こんにちはお嬢さん。今日も可愛く、おめかししてもらっていますね」
温厚に笑うブルーベル将軍に、キュッリッキは無邪気に笑いかけた。シロクマのおじいちゃん、とキュッリッキの中の可愛いものリストのトップに刻まれているのだ。
そして将軍の背後に控えるように立つ人物を見て、キュッリッキの瞳が鋭くキラリと光った。
「パンダあああ!!」
大きな声を張り上げると、アルカネットの手を振りほどいてキュッリッキは飛びついた。
「うわああああっ! なんだっ、オマエは!!」
いきなり飛びつかれた男は、ゴロンと盛大にひっくり返った。
短い手足をバタバタと動かし転がる姿は愛嬌たっぷりで、それを見やったアルカネットとリュリュは、妙に微笑ましい気持ちに浸ってしまった。
白と黒の模様がとても愛らしい、パンダのトゥーリ族だ。
「どうしよう可愛すぎる、可愛すぎるの~~」
キュッリッキは憚ることなくパンダ男に頬ずりする。キュッリッキは軽すぎるほど軽いのだが、パンダ男はいきなりのことに動転して、ひっくり返ったまま起き上がることができない。
「どれどれ」
ブルーベル将軍は好々爺の笑みを浮かべ、キュッリッキをそっとパンダ男から引き剥がす。
「ハギはシャイなのでね」
将軍にウインクされて、キュッリッキは目をぱちくりと瞬かせた。
パンダ男はリュリュに助け起こされ、愛嬌たっぷりの顔をむすっと歪めた。
「この者はワシの副官で、ハギといいます」
キュッリッキを抱き上げたままのブルーベル将軍に紹介され、ハギは背筋を伸ばして敬礼した。その敬礼する姿も愛嬌たっぷりだ。
ブルーベル将軍はキュッリッキを、アルカネットの前にそっと降ろす。
「今日の式典、楽しみにしておりますよ」
にこやかにそう言って、ブルーベル将軍はハギを伴い、その場を後にした。
去りゆくブルーベル将軍とハギの尻に生えている小さな丸いしっぽに、キュッリッキはずっと釘付けになっていた。
「で、今からベルのところへ?」
「ええ、彼女を連れて来いと言われていますので」
「アタシも一緒に行くわ。――全く、いい加減な演説内容書いてくるから、全部書き直したわよ、もお」
アルカネットに再び手を引かれ、キュッリッキはリュリュらと共に歩き出した。
「一体何て書いていたんです? だいたいの想像はつくんですが」
「『お前ら首洗って待っとけ、以上』よ。ったく、呆れちゃうったら」
微笑みの表面に乾いた砂塵が吹き抜けていくような、アルカネットの恐ろしげな空気を感じて、リュリュとキュッリッキがギョッと慄いた。
「陛下の代理として壇に立つということが、どうやら判っていないようですね、あのひとは」
「でもぶっちゃけ、陛下もそう大差ないわよ…」
「………」
「そういうのって、似た者同士って言うんだよね」
朗らかにキュッリッキに指摘され、アルカネットとリュリュは疲れたように息を吐き出した。
2人の会話を肩をすくめて聞いていたアルカネットは、本題に戻す。
「ベルなら控え室でお着替えしてるわ。テレビ映えするよう派手に飾り立てようとしたら、ゴネて拗ねてイヤがるから、下官が苦労してるのン」
「そういうのは、嫌いな方ですからね」
様子が易く想像できて、アルカネットは苦笑する。
「今日の主役はこの小娘。まあ、ベルはパセリみたいなものだしねえ。豪華に目立っても、悪目立ちにしかならなわね」
「おやおやみなさん、お集まりで」
大きな身体をゆするように歩いてきたブルーベル将軍が、温厚な笑みを浮かべて挨拶した。これにアルカネットとリュリュが素早く敬礼する。
「こんにちはお嬢さん。今日も可愛く、おめかししてもらっていますね」
温厚に笑うブルーベル将軍に、キュッリッキは無邪気に笑いかけた。シロクマのおじいちゃん、とキュッリッキの中の可愛いものリストのトップに刻まれているのだ。
そして将軍の背後に控えるように立つ人物を見て、キュッリッキの瞳が鋭くキラリと光った。
「パンダあああ!!」
大きな声を張り上げると、アルカネットの手を振りほどいてキュッリッキは飛びついた。
「うわああああっ! なんだっ、オマエは!!」
いきなり飛びつかれた男は、ゴロンと盛大にひっくり返った。
短い手足をバタバタと動かし転がる姿は愛嬌たっぷりで、それを見やったアルカネットとリュリュは、妙に微笑ましい気持ちに浸ってしまった。
白と黒の模様がとても愛らしい、パンダのトゥーリ族だ。
「どうしよう可愛すぎる、可愛すぎるの~~」
キュッリッキは憚ることなくパンダ男に頬ずりする。キュッリッキは軽すぎるほど軽いのだが、パンダ男はいきなりのことに動転して、ひっくり返ったまま起き上がることができない。
「どれどれ」
ブルーベル将軍は好々爺の笑みを浮かべ、キュッリッキをそっとパンダ男から引き剥がす。
「ハギはシャイなのでね」
将軍にウインクされて、キュッリッキは目をぱちくりと瞬かせた。
パンダ男はリュリュに助け起こされ、愛嬌たっぷりの顔をむすっと歪めた。
「この者はワシの副官で、ハギといいます」
キュッリッキを抱き上げたままのブルーベル将軍に紹介され、ハギは背筋を伸ばして敬礼した。その敬礼する姿も愛嬌たっぷりだ。
ブルーベル将軍はキュッリッキを、アルカネットの前にそっと降ろす。
「今日の式典、楽しみにしておりますよ」
にこやかにそう言って、ブルーベル将軍はハギを伴い、その場を後にした。
去りゆくブルーベル将軍とハギの尻に生えている小さな丸いしっぽに、キュッリッキはずっと釘付けになっていた。
「で、今からベルのところへ?」
「ええ、彼女を連れて来いと言われていますので」
「アタシも一緒に行くわ。――全く、いい加減な演説内容書いてくるから、全部書き直したわよ、もお」
アルカネットに再び手を引かれ、キュッリッキはリュリュらと共に歩き出した。
「一体何て書いていたんです? だいたいの想像はつくんですが」
「『お前ら首洗って待っとけ、以上』よ。ったく、呆れちゃうったら」
微笑みの表面に乾いた砂塵が吹き抜けていくような、アルカネットの恐ろしげな空気を感じて、リュリュとキュッリッキがギョッと慄いた。
「陛下の代理として壇に立つということが、どうやら判っていないようですね、あのひとは」
「でもぶっちゃけ、陛下もそう大差ないわよ…」
「………」
「そういうのって、似た者同士って言うんだよね」
朗らかにキュッリッキに指摘され、アルカネットとリュリュは疲れたように息を吐き出した。
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