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それぞれの悪巧み編
episode333
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皇都イララクスに暮らす人々は、ソレル王国の宣戦布告に多少の不安を覚えつつも、日常生活のリズムは変わらなかった。ハーツイーズ街とエルダー街の傭兵たちが、ソワソワと落ち着かないくらいで、皇都の様子も変わらない。
属国に下っている小国が、皇国に牙をむくのは珍しいことではない。小国同士が衝突したり、皇国の領内を荒らしたりすることは、これまで何度でも起こっている。
ソレル王国から一方的に宣戦布告がなされたが、皇国側からはまだ正式な通達は行われていない。軍部の動きが慌ただしいので、近々開戦するだろう噂は広がっている。しかし経済や流通に影響は出ていないので、国民の生活に支障はなかった。
牙をむいてきたソレル王国とその連合軍は、惑星の反対側に位置するモナルダ大陸が拠点だ。ワイ・メア大陸とは随分と距離があり、移動手段に使われるエグザイル・システムには正規部隊が詰めているから安全だ。そのことが、より緊張感を和らげている要素にもなっていた。
変化といえば、街のいたるところに巨大なスクリーンが設置されていくことだった。8月3日にはささやかなイベントがあり、国民はスクリーンを必ず見るよう通達されていた。それはハワドウレ皇国民だけではなく、属国である小国の民も全てである。
映像が中継出来ない場所では音声中継も設置され、とにかく世界は8月3日を固唾を飲んで待ち構えていた。
キュッリッキはアルカネットに手を引かれて、総帥本部の中を歩いていた。この間のように勝手に姿をくらませないように、片時も手を離さず状態である。
前回のことはベルトルドからしっかり叱られていたので、キュッリッキは迷惑をかける気はなかった。それなのにアルカネットにずっと手を引かれているので、信用されていないのかもと、ちょっとガッカリしていた。アルカネットは単に、キュッリッキの手を握っていたい、独占していたいと考えている。そこまでキュッリッキは気付かなかった。
「あら、アルカネット」
書類の束を小脇に抱え、正面からリュリュが歩いてきた。
「は~い、小娘」
手を引かれたキュッリッキと、その足元に佇むフェンリルを見て、リュリュは小さくウインクした。
「こんにちは、リュリュさん」
一度見舞いにきてくれたことがあり、度々花などの見舞いを贈ってくれたこともある。気さくなオカマ、と認識しているキュッリッキは、ニッコリと笑いかけた。フェンリルは興味なさそうに、鼻を鳴らしただけだった。
「そうそう、あーた、ベルのアレをナマコって言って、凹ませたんですってね」
ケラケラ笑うリュリュに、キュッリッキは口をへの字に曲げた。アレはナマコではないことは、ライオン傭兵団の皆から聞かされている。ただし、アレがなんなのかは、秘密だと言われてもいる。
「だって、ナマコに見えたんだもん」
見たこともない物体だった。あんなものは自分の股間にはついていないのだ。
「あのベルに面と向かってソンナコト言ったの、あーたが初めてよ。面白い子だわ」
「うにゅー」
恨めしそうに、リュリュの顔を見上げる。
リュリュはハンサムな顔立ち、とは言い難いが、極端に垂れた目が印象である。濃くはないが化粧もしていて、軍服を着ているが、どこかなよっとした物腰をしていた。
属国に下っている小国が、皇国に牙をむくのは珍しいことではない。小国同士が衝突したり、皇国の領内を荒らしたりすることは、これまで何度でも起こっている。
ソレル王国から一方的に宣戦布告がなされたが、皇国側からはまだ正式な通達は行われていない。軍部の動きが慌ただしいので、近々開戦するだろう噂は広がっている。しかし経済や流通に影響は出ていないので、国民の生活に支障はなかった。
牙をむいてきたソレル王国とその連合軍は、惑星の反対側に位置するモナルダ大陸が拠点だ。ワイ・メア大陸とは随分と距離があり、移動手段に使われるエグザイル・システムには正規部隊が詰めているから安全だ。そのことが、より緊張感を和らげている要素にもなっていた。
変化といえば、街のいたるところに巨大なスクリーンが設置されていくことだった。8月3日にはささやかなイベントがあり、国民はスクリーンを必ず見るよう通達されていた。それはハワドウレ皇国民だけではなく、属国である小国の民も全てである。
映像が中継出来ない場所では音声中継も設置され、とにかく世界は8月3日を固唾を飲んで待ち構えていた。
キュッリッキはアルカネットに手を引かれて、総帥本部の中を歩いていた。この間のように勝手に姿をくらませないように、片時も手を離さず状態である。
前回のことはベルトルドからしっかり叱られていたので、キュッリッキは迷惑をかける気はなかった。それなのにアルカネットにずっと手を引かれているので、信用されていないのかもと、ちょっとガッカリしていた。アルカネットは単に、キュッリッキの手を握っていたい、独占していたいと考えている。そこまでキュッリッキは気付かなかった。
「あら、アルカネット」
書類の束を小脇に抱え、正面からリュリュが歩いてきた。
「は~い、小娘」
手を引かれたキュッリッキと、その足元に佇むフェンリルを見て、リュリュは小さくウインクした。
「こんにちは、リュリュさん」
一度見舞いにきてくれたことがあり、度々花などの見舞いを贈ってくれたこともある。気さくなオカマ、と認識しているキュッリッキは、ニッコリと笑いかけた。フェンリルは興味なさそうに、鼻を鳴らしただけだった。
「そうそう、あーた、ベルのアレをナマコって言って、凹ませたんですってね」
ケラケラ笑うリュリュに、キュッリッキは口をへの字に曲げた。アレはナマコではないことは、ライオン傭兵団の皆から聞かされている。ただし、アレがなんなのかは、秘密だと言われてもいる。
「だって、ナマコに見えたんだもん」
見たこともない物体だった。あんなものは自分の股間にはついていないのだ。
「あのベルに面と向かってソンナコト言ったの、あーたが初めてよ。面白い子だわ」
「うにゅー」
恨めしそうに、リュリュの顔を見上げる。
リュリュはハンサムな顔立ち、とは言い難いが、極端に垂れた目が印象である。濃くはないが化粧もしていて、軍服を着ているが、どこかなよっとした物腰をしていた。
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