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それぞれの悪巧み編
episode327
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総帥本部の大会議室の中には、軍服をまとった人々が、コの字に組まれたテーブルの前に座っていた。
中心に総帥であるベルトルド、その右横に皇国軍正規部隊のブルーベル将軍、右側の長いテーブルには、1から10まである正規部隊の長である10人の大将。
ベルトルドの左横には秘書官のリュリュ、左側のテーブルには特殊部隊であるダエヴァの3人の長官、魔法部隊(ビリエル)の長官アルカネット、警務部隊長官、尋問・拷問部隊の長官、親衛隊隊長が座っていた。そして室内の壁際には、各大将の副官、そして長官たちの副官、秘書官も控えて立っている。
全員揃い、すぐ会議は開始される。
筈だった。
「ねえ、ベル。ソレ、旅立ったとか言ってなかった?」
眉間を痙攣させながら、リュリュが指をさす。
「……ウン」
ベルトルドの真正面に、白い毛玉が鼻をヒクヒクさせて、ベルトルドを見上げている。
「これは、チンチラですねえ。なんで閣下の目の前にいるんでしょう」
ブルーベル将軍が、ホッホッホッと肩を揺らして笑う。
「即刻捨ててきてください、ソレ」
アルカネットが全身から冷気を噴出させて、険悪な目つきになる。
「オデット……」
ポツリと呟き、両掌でチンチラを包み込んだ。
かつて、ベルトルドの屋敷に闖入し、宰相府の執務室で飼われ、世話係の少年のもとに去ったオデット姫である。
ほかの諸将たちは事態が飲み込めず、不可解といった表情をベルトルドに向けていた。
「そうか、喧嘩別れしたのか…」
チンチラに語りかける副宰相に、諸将はギョッとする。
「だが済まない、オデット…。俺にはもう、愛おしい、とてっつもなく愛おしい恋人が出来てしまったんだ!」
「恋人じゃありませんよ、図々しいことをシレっと言わないでください腹の立つ!」
ピシッとアルカネットからツッコミが入る。
「リッキーと言ってな、世界最強の美しく愛らしい少女なんだ。これからゆっくり、手とり足とり、ベッドの中で、愛のレッスンを施さねばならないのだ。――ぬ? ヤキモチ妬いたのか? しょうのないやつめ」
室内がドン引きする空気に包まれる。しかしベルトルドは気づいていない。
「だからオデット、キミの愛を俺は受け取るわけにはいかないんだ。酷なようだが、許せ…」
ベルトルドの掌の中で、オデット姫はシクシクと身を震わせた。悲しみに髭がバラバラに揺れる。
「俺の愛も心も身体も全てリッキーのためにある! そしてリッキーの処女も俺がいただぶっ!」
「おだまりエロ中年!」
「指一本触れさせません!!」
リュリュとアルカネットに豪快に殴られ、ベルトルドはテーブルに突っ伏す。
「あーたしか判んない毛玉姫との会話をいい加減ヤメナサイ! もうとっとと会議始めるわよ! そこの暇そうな護衛兵!」
ギンッとリュリュに睨まれたブルーベル将軍付きの護衛兵は、
「はっはひ!」
峻険な山のようにビシッと背筋を伸ばす。
「今すぐこの毛玉姫を動物園に引き渡してきなさい!」
「うっ、承りました!」
ブルーベル将軍に許可をもらうことも忘れ、リュリュがつまみ上げたオデット姫を受け取ると、逃げ出すようにして部屋を飛び出していった。オデット姫の悲しみの声が、尾を引いて遠ざかっていく。
「なあ、リュー、アレってブルーベル将軍の…」
「おだまり」
「はい…」
「清々しました。全く、なんて神出鬼没なケダモノでしょうね…」
「ケダモノは、ベルのような男を言うのよ」
「同じようなモノでしょう、お互い白いんですから」
リュリュとアルカネットに言われ放題なベルトルドは、ベソ顔でメソメソ両手で顔を覆った。
中心に総帥であるベルトルド、その右横に皇国軍正規部隊のブルーベル将軍、右側の長いテーブルには、1から10まである正規部隊の長である10人の大将。
ベルトルドの左横には秘書官のリュリュ、左側のテーブルには特殊部隊であるダエヴァの3人の長官、魔法部隊(ビリエル)の長官アルカネット、警務部隊長官、尋問・拷問部隊の長官、親衛隊隊長が座っていた。そして室内の壁際には、各大将の副官、そして長官たちの副官、秘書官も控えて立っている。
全員揃い、すぐ会議は開始される。
筈だった。
「ねえ、ベル。ソレ、旅立ったとか言ってなかった?」
眉間を痙攣させながら、リュリュが指をさす。
「……ウン」
ベルトルドの真正面に、白い毛玉が鼻をヒクヒクさせて、ベルトルドを見上げている。
「これは、チンチラですねえ。なんで閣下の目の前にいるんでしょう」
ブルーベル将軍が、ホッホッホッと肩を揺らして笑う。
「即刻捨ててきてください、ソレ」
アルカネットが全身から冷気を噴出させて、険悪な目つきになる。
「オデット……」
ポツリと呟き、両掌でチンチラを包み込んだ。
かつて、ベルトルドの屋敷に闖入し、宰相府の執務室で飼われ、世話係の少年のもとに去ったオデット姫である。
ほかの諸将たちは事態が飲み込めず、不可解といった表情をベルトルドに向けていた。
「そうか、喧嘩別れしたのか…」
チンチラに語りかける副宰相に、諸将はギョッとする。
「だが済まない、オデット…。俺にはもう、愛おしい、とてっつもなく愛おしい恋人が出来てしまったんだ!」
「恋人じゃありませんよ、図々しいことをシレっと言わないでください腹の立つ!」
ピシッとアルカネットからツッコミが入る。
「リッキーと言ってな、世界最強の美しく愛らしい少女なんだ。これからゆっくり、手とり足とり、ベッドの中で、愛のレッスンを施さねばならないのだ。――ぬ? ヤキモチ妬いたのか? しょうのないやつめ」
室内がドン引きする空気に包まれる。しかしベルトルドは気づいていない。
「だからオデット、キミの愛を俺は受け取るわけにはいかないんだ。酷なようだが、許せ…」
ベルトルドの掌の中で、オデット姫はシクシクと身を震わせた。悲しみに髭がバラバラに揺れる。
「俺の愛も心も身体も全てリッキーのためにある! そしてリッキーの処女も俺がいただぶっ!」
「おだまりエロ中年!」
「指一本触れさせません!!」
リュリュとアルカネットに豪快に殴られ、ベルトルドはテーブルに突っ伏す。
「あーたしか判んない毛玉姫との会話をいい加減ヤメナサイ! もうとっとと会議始めるわよ! そこの暇そうな護衛兵!」
ギンッとリュリュに睨まれたブルーベル将軍付きの護衛兵は、
「はっはひ!」
峻険な山のようにビシッと背筋を伸ばす。
「今すぐこの毛玉姫を動物園に引き渡してきなさい!」
「うっ、承りました!」
ブルーベル将軍に許可をもらうことも忘れ、リュリュがつまみ上げたオデット姫を受け取ると、逃げ出すようにして部屋を飛び出していった。オデット姫の悲しみの声が、尾を引いて遠ざかっていく。
「なあ、リュー、アレってブルーベル将軍の…」
「おだまり」
「はい…」
「清々しました。全く、なんて神出鬼没なケダモノでしょうね…」
「ケダモノは、ベルのような男を言うのよ」
「同じようなモノでしょう、お互い白いんですから」
リュリュとアルカネットに言われ放題なベルトルドは、ベソ顔でメソメソ両手で顔を覆った。
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