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それぞれの悪巧み編
episode326
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総帥本部へ出仕したベルトルドは、デスクに突っ伏してメソメソとため息を漏らしていた。
「ナマコ……ナマコ……」
呟くたびに涙がこぼれる。
いずれキュッリッキを悦ばせることになるだろう暴れん棒を、ナマコと勘違いするとは。ベルトルドの心も股間も、シクシク悲しみに暮れた。
そこへリュリュが執務室に入ってきた。
「おはようベル、なぁによ、激しく落ち込んじゃって」
顔をのろりと上げると、なよっと特徴的な立ち方をするリュリュと視線がぶつかった。
「なんだ、リューか」
「なにその素っ気ない反応は。あーたの代わりに宰相府での仕事を、ぜーんぶ終わらせてきたのよっ!」
「ご苦労…」
「ンもぉ、元気ないじゃなぁ~い。アルカネットにでもいじめられたの?」
「そんなのしょっちゅうだ…」
「だったらなんなのよっ、今日も激しく忙しいのよ」
今朝の出来事を涙ながらに語ると、リュリュは垂れ目をめいっぱい開き、そしてケタケタと笑いだした。
「ばっかねぇ、男も知らないような小娘の言うことに、何ホンキで傷ついてるのよ。そうねえ、良い機会だから一緒に風呂にでも入って、男のカラダをすみずみまで教えてあげたら?」
「それは名案だな!」
ガバッと身を起こし、鼻の穴を膨らませた。一瞬で桃色妄想が脳内に広がる。
「もっともぉ、アルカネットが黙っていないでしょうけれど」
「殺される…」
再びベルトルドはデスクに撃沈する。妄想も霞んで消えた。
「19歳にもなって男の裸も見たことないなんて、随分珍しいわね。傭兵たちと一緒に居れば、イヤでも目にする機会はあったでしょうに」
リュリュは書類を整理しながら不思議そうな顔をする。それについてベルトルドは何も言わなかった。おそらくフェンリルが、そのあたりはしっかりとガードしていたのだろうと想像していた。
幼い頃から冷たい大人社会に放り込まれていた割に、知っていて当たり前のことが判らなかったり、珍しいことには詳しかったりするところがあるのだ。
「でも、あーたの暴れん棒をナマコって表現するナンて、面白い小娘ねえ」
リュリュはニヤニヤとベルトルドを見ると、ベルトルドは憮然と鼻息を吐きだした。
「この戦争が終わったら、次はナマコの駆逐に励むかな、俺は…」
会議の時間が迫り、ベルトルドとリュリュは執務室を出る。
「いよいよ、大芝居の始まりネ」
「ああ。大根役者だと騙せないからな、正念場だ」
ベルトルドは自信たっぷりに笑みを深めた。
「戦争すること自体は変更なくても、これだけの戦力を投入するんだから、それなりの説得を持たせることが重要だわ。とくに大将たちには」
「コチンカチンの石頭どもを、やる気満々にさせるのは大変だ。まあ、ぎゃーすか文句を言ってきても実行するがな」
「そうねん」
大会議室前に到着すると、左右に控える衛兵が敬礼し、恭しく扉を開く。
ベルトルドの到着を知らせる衛兵たちの声に、大会議室に居た全ての人々が立ち上がり、敬礼をしてベルトルドを迎えた。
「ナマコ……ナマコ……」
呟くたびに涙がこぼれる。
いずれキュッリッキを悦ばせることになるだろう暴れん棒を、ナマコと勘違いするとは。ベルトルドの心も股間も、シクシク悲しみに暮れた。
そこへリュリュが執務室に入ってきた。
「おはようベル、なぁによ、激しく落ち込んじゃって」
顔をのろりと上げると、なよっと特徴的な立ち方をするリュリュと視線がぶつかった。
「なんだ、リューか」
「なにその素っ気ない反応は。あーたの代わりに宰相府での仕事を、ぜーんぶ終わらせてきたのよっ!」
「ご苦労…」
「ンもぉ、元気ないじゃなぁ~い。アルカネットにでもいじめられたの?」
「そんなのしょっちゅうだ…」
「だったらなんなのよっ、今日も激しく忙しいのよ」
今朝の出来事を涙ながらに語ると、リュリュは垂れ目をめいっぱい開き、そしてケタケタと笑いだした。
「ばっかねぇ、男も知らないような小娘の言うことに、何ホンキで傷ついてるのよ。そうねえ、良い機会だから一緒に風呂にでも入って、男のカラダをすみずみまで教えてあげたら?」
「それは名案だな!」
ガバッと身を起こし、鼻の穴を膨らませた。一瞬で桃色妄想が脳内に広がる。
「もっともぉ、アルカネットが黙っていないでしょうけれど」
「殺される…」
再びベルトルドはデスクに撃沈する。妄想も霞んで消えた。
「19歳にもなって男の裸も見たことないなんて、随分珍しいわね。傭兵たちと一緒に居れば、イヤでも目にする機会はあったでしょうに」
リュリュは書類を整理しながら不思議そうな顔をする。それについてベルトルドは何も言わなかった。おそらくフェンリルが、そのあたりはしっかりとガードしていたのだろうと想像していた。
幼い頃から冷たい大人社会に放り込まれていた割に、知っていて当たり前のことが判らなかったり、珍しいことには詳しかったりするところがあるのだ。
「でも、あーたの暴れん棒をナマコって表現するナンて、面白い小娘ねえ」
リュリュはニヤニヤとベルトルドを見ると、ベルトルドは憮然と鼻息を吐きだした。
「この戦争が終わったら、次はナマコの駆逐に励むかな、俺は…」
会議の時間が迫り、ベルトルドとリュリュは執務室を出る。
「いよいよ、大芝居の始まりネ」
「ああ。大根役者だと騙せないからな、正念場だ」
ベルトルドは自信たっぷりに笑みを深めた。
「戦争すること自体は変更なくても、これだけの戦力を投入するんだから、それなりの説得を持たせることが重要だわ。とくに大将たちには」
「コチンカチンの石頭どもを、やる気満々にさせるのは大変だ。まあ、ぎゃーすか文句を言ってきても実行するがな」
「そうねん」
大会議室前に到着すると、左右に控える衛兵が敬礼し、恭しく扉を開く。
ベルトルドの到着を知らせる衛兵たちの声に、大会議室に居た全ての人々が立ち上がり、敬礼をしてベルトルドを迎えた。
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