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それぞれの悪巧み編
episode325
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朝食の皿の中はアルカネットの指示で差し替えられ、キュッリッキの前に出されたのは、スクランブルエッグと2種類のハムだった。これに生野菜が苦手なキュッリッキのために、特別に温野菜にかえられたサラダとクロワッサンが用意された。
何度かしゃくり上げながらキュッリッキがもそもそと朝食を食べ始めたところへ、身支度が整ったベルトルドと、後ろに付き従ったアルカネットが食堂に姿を現した。
「おはようございます」
カーティスが声をかけると、思いっきり不機嫌を露骨に表情に浮かべたベルトルドが「おう」と短く応じる。
キュッリッキは不安そうにベルトルドの股間に視線を貼り付けたまま、ベルトルドが椅子に座ってもまだ見ていた。
「おはよう、リッキー」
ベルトルドが精一杯の笑顔でキュッリッキを見るが、誰が見てもその表情は引き攣りまくって苦しそうである。
上目遣いでベルトルドを見ながら、キュッリッキはこくりと頷くだけだった。
(ナマコに噛まれてないかな……取れたのかなあ…大丈夫かな…)
キュッリッキが何を想像していつまでも自分の股間に視線を注いでいるか、心を読まなくてもベルトルドにはお見通しだ。
キュッリッキは初めて、成人男性の裸を目の当たりにしたのである。
修道院にいたころは、いつもほかの子供達と隔絶されていたため、男子の裸を見たことがない。なので女性と男性の身体の違いは、胸の有無と体格差だけだと思い込んでいたのだ。
港町ハーツイーズに住んでいた時に、時折漁船から下ろされた荷の中に、ナマコを見かけたことがある。たまたま覚えていたナマコと色や形が似ていたように思えて、ベルトルドの股間にナマコが張り付いていたと勘違いしている。
一方のベルトルドは、自分のモノをナマコに例えられて酷く傷ついていた。間違えるならせめてキノコかフランクフルトじゃ、と思うと涙が出そうだ。しかも大きな悲鳴を上げて泣き出されたことが、よけい心の傷を深くした。有難がられても、泣き出されたことなど一度もない。更にキュッリッキに泣かれたことが一番堪えた。
完全に食欲の失せた顔で、目の前に出された皿の中にフォークを突き刺して溜息をもらす。そんなベルトルドの様子を見て、キュッリッキが不安そうにベルトルドの顔を見上げた。
「やっぱりナマコに噛まれたの? 痛いの?」
この問いに、ライオン傭兵団一同は吹き出したいのを必死で堪えて身体を震わせる。ヴァルトなど、自分の膝を拳でドスドス叩いて笑いを堪えていた。
「さっさと支度して出勤しろ貴様ら!」
テーブルを掌で叩いてベルトルドが怒鳴る。それにびっくりしたキュッリッキが、ぽろぽろと涙をこぼして泣き出してしまった。
アルカネットが慌ててキュッリッキの傍らに行って、優しく抱きしめる。
「あなたが裸で寝ているのが悪いんですよ」
じろりとアルカネットに睨まれて、ベルトルドは頬をひきつらせた。
「シャワーを浴びて出てきたら、眠気限界で寝てしまったんだ」
口をへの字に曲げて、ベルトルドはむっすりと黙り込んだ。
「さあリッキーさん、部屋へ戻りましょうね」
アルカネットに優しく促され、キュッリッキは頷くと席を立った。
食堂を出て行くアルカネットとキュッリッキの後ろ姿を見送って、ベルトルドはガックリと肩を落として額をテーブルにつけて落ち込んだ。
何度かしゃくり上げながらキュッリッキがもそもそと朝食を食べ始めたところへ、身支度が整ったベルトルドと、後ろに付き従ったアルカネットが食堂に姿を現した。
「おはようございます」
カーティスが声をかけると、思いっきり不機嫌を露骨に表情に浮かべたベルトルドが「おう」と短く応じる。
キュッリッキは不安そうにベルトルドの股間に視線を貼り付けたまま、ベルトルドが椅子に座ってもまだ見ていた。
「おはよう、リッキー」
ベルトルドが精一杯の笑顔でキュッリッキを見るが、誰が見てもその表情は引き攣りまくって苦しそうである。
上目遣いでベルトルドを見ながら、キュッリッキはこくりと頷くだけだった。
(ナマコに噛まれてないかな……取れたのかなあ…大丈夫かな…)
キュッリッキが何を想像していつまでも自分の股間に視線を注いでいるか、心を読まなくてもベルトルドにはお見通しだ。
キュッリッキは初めて、成人男性の裸を目の当たりにしたのである。
修道院にいたころは、いつもほかの子供達と隔絶されていたため、男子の裸を見たことがない。なので女性と男性の身体の違いは、胸の有無と体格差だけだと思い込んでいたのだ。
港町ハーツイーズに住んでいた時に、時折漁船から下ろされた荷の中に、ナマコを見かけたことがある。たまたま覚えていたナマコと色や形が似ていたように思えて、ベルトルドの股間にナマコが張り付いていたと勘違いしている。
一方のベルトルドは、自分のモノをナマコに例えられて酷く傷ついていた。間違えるならせめてキノコかフランクフルトじゃ、と思うと涙が出そうだ。しかも大きな悲鳴を上げて泣き出されたことが、よけい心の傷を深くした。有難がられても、泣き出されたことなど一度もない。更にキュッリッキに泣かれたことが一番堪えた。
完全に食欲の失せた顔で、目の前に出された皿の中にフォークを突き刺して溜息をもらす。そんなベルトルドの様子を見て、キュッリッキが不安そうにベルトルドの顔を見上げた。
「やっぱりナマコに噛まれたの? 痛いの?」
この問いに、ライオン傭兵団一同は吹き出したいのを必死で堪えて身体を震わせる。ヴァルトなど、自分の膝を拳でドスドス叩いて笑いを堪えていた。
「さっさと支度して出勤しろ貴様ら!」
テーブルを掌で叩いてベルトルドが怒鳴る。それにびっくりしたキュッリッキが、ぽろぽろと涙をこぼして泣き出してしまった。
アルカネットが慌ててキュッリッキの傍らに行って、優しく抱きしめる。
「あなたが裸で寝ているのが悪いんですよ」
じろりとアルカネットに睨まれて、ベルトルドは頬をひきつらせた。
「シャワーを浴びて出てきたら、眠気限界で寝てしまったんだ」
口をへの字に曲げて、ベルトルドはむっすりと黙り込んだ。
「さあリッキーさん、部屋へ戻りましょうね」
アルカネットに優しく促され、キュッリッキは頷くと席を立った。
食堂を出て行くアルカネットとキュッリッキの後ろ姿を見送って、ベルトルドはガックリと肩を落として額をテーブルにつけて落ち込んだ。
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