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それぞれの悪巧み編
episode323
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身支度が整うと、まだ寝ているフェンリルをそのままにして部屋を出る。
まっすぐ食堂へ向かうと、眠たげな顔をしたライオン傭兵団のみんなと、きっちり身支度を整えたアルカネットがテーブルについて朝食をとっていた。
「みんなおはよ~」
元気に食堂に挨拶を投げかけると、食堂のあちこちから挨拶が返ってきた。
「おはようございます、リッキーさん」
アルカネットはキュッリッキを抱き寄せると、愛おしげに頬にキスをする。毎朝のことだが、これにはザカリーの不満そうな視線がちくちくと投げかけられるが無視された。
「ベルトルドさんは?」
アルカネットの向かい側にある自分の席に座ると、ベルトルドの空の席を見ながらぽつりと呟く。
「真夜中に帰られたので、ご自分の部屋でおやすみになっていますよ」
紅茶のカップを手にしながらアルカネットが答えると、キュッリッキは「忙しいんだね~」と頷いた。
「もう少し寝かせてあげたいところですが、今日も朝から会議が詰まっていますから、そろそろ起こしてこないと」
「じゃあ、アタシが起こしてきてあげる!」
意気揚々とキュッリッキが身を乗り出すと、アルカネットは暫し考え込み、
「ではお願いできますか? リッキーさんが起こせば、未練たらしく枕にしがみつかないでしょうし」
「任せてっ」
キュッリッキは元気よく立ち上がると、軽やかな足取りで食堂を出て行った。
ベルトルドの部屋は東棟の2階にある。
屋敷の主の部屋はどの部屋よりも広く、扉も一回り大きい。白で塗装され控えめな金細工を施された重厚な扉を、キュッリッキは小さな拳でノックする。
「ベルトルドさん、入るよぉ」
鍵のかかっていない扉を開けると中は薄暗く、ベルトルドが起きて動いている気配はなかった。
閉められたカーテンの僅かな隙間からもれる薄明かりを頼りに窓辺に駆け寄り、キュッリッキは重厚なカーテンを左右に開けてタッセルでまとめる。
カーテンを全て開けて、鈍い明かりを部屋に取り込みながら、何度もキュッリッキはベルトルドを呼ぶ。
このところ仕事が忙しさを極め、帰宅する時間も夜中になることが多い。夜中になるときはキュッリッキの部屋へは行かず、自室で寝るようにしているベルトルドとアルカネットだった。
仕事を持ち帰ることもあれば、酒を飲みたい時もある。騒がしくしてキュッリッキを起こさないようにとの配慮だ。
天蓋付きのキングサイズのベッドに、ベルトルドは大の字になって寝ており、しかもまっすぐ寝ないで斜めになって寝ている。風呂上がりにでも寝たのか、あるいは着替え途中にでも寝てしまったのか、シーツからはみ出した上半身は裸だった。
「風邪ひいちゃうんだから……」
ベッドの上に這い上がると、心配そうに寝相の悪いベルトルドを覗き込む。ぐっすり寝ているベルトルドを、どう起こそうか思案を巡らせた。
「ベルトルドさん、朝だから起きて~」
耳元で少し大きな声で呼ぶが、ぴくりともしない。
次にほっぺたをペチペチと叩いてみるが反応しない。ちょっとつねってみても唸り声もあげない。
キュッリッキの部屋で寝ているときは、アルカネットと2人がかりで起こすのですぐに目を覚ましてくれる。しかし今日のベルトルドは眠りが深いのか、中々起きそうもなかった。
「てごわい……」
腕を組んでベルトルドを見おろしていると、シーツの一部が小さな山を作っているのを見つけて、キュッリッキは首をかしげた。
「なんだろう?」
妙にその小さな山が気になって気になって、キュッリッキは「そだ!」と掌を打ち付けた。
「ベルトルドさん、早く起きなきゃダメなのーーー!!」
両手でシーツを掴み、ガバッと勢いよくシーツを持ち上げめくった。
まっすぐ食堂へ向かうと、眠たげな顔をしたライオン傭兵団のみんなと、きっちり身支度を整えたアルカネットがテーブルについて朝食をとっていた。
「みんなおはよ~」
元気に食堂に挨拶を投げかけると、食堂のあちこちから挨拶が返ってきた。
「おはようございます、リッキーさん」
アルカネットはキュッリッキを抱き寄せると、愛おしげに頬にキスをする。毎朝のことだが、これにはザカリーの不満そうな視線がちくちくと投げかけられるが無視された。
「ベルトルドさんは?」
アルカネットの向かい側にある自分の席に座ると、ベルトルドの空の席を見ながらぽつりと呟く。
「真夜中に帰られたので、ご自分の部屋でおやすみになっていますよ」
紅茶のカップを手にしながらアルカネットが答えると、キュッリッキは「忙しいんだね~」と頷いた。
「もう少し寝かせてあげたいところですが、今日も朝から会議が詰まっていますから、そろそろ起こしてこないと」
「じゃあ、アタシが起こしてきてあげる!」
意気揚々とキュッリッキが身を乗り出すと、アルカネットは暫し考え込み、
「ではお願いできますか? リッキーさんが起こせば、未練たらしく枕にしがみつかないでしょうし」
「任せてっ」
キュッリッキは元気よく立ち上がると、軽やかな足取りで食堂を出て行った。
ベルトルドの部屋は東棟の2階にある。
屋敷の主の部屋はどの部屋よりも広く、扉も一回り大きい。白で塗装され控えめな金細工を施された重厚な扉を、キュッリッキは小さな拳でノックする。
「ベルトルドさん、入るよぉ」
鍵のかかっていない扉を開けると中は薄暗く、ベルトルドが起きて動いている気配はなかった。
閉められたカーテンの僅かな隙間からもれる薄明かりを頼りに窓辺に駆け寄り、キュッリッキは重厚なカーテンを左右に開けてタッセルでまとめる。
カーテンを全て開けて、鈍い明かりを部屋に取り込みながら、何度もキュッリッキはベルトルドを呼ぶ。
このところ仕事が忙しさを極め、帰宅する時間も夜中になることが多い。夜中になるときはキュッリッキの部屋へは行かず、自室で寝るようにしているベルトルドとアルカネットだった。
仕事を持ち帰ることもあれば、酒を飲みたい時もある。騒がしくしてキュッリッキを起こさないようにとの配慮だ。
天蓋付きのキングサイズのベッドに、ベルトルドは大の字になって寝ており、しかもまっすぐ寝ないで斜めになって寝ている。風呂上がりにでも寝たのか、あるいは着替え途中にでも寝てしまったのか、シーツからはみ出した上半身は裸だった。
「風邪ひいちゃうんだから……」
ベッドの上に這い上がると、心配そうに寝相の悪いベルトルドを覗き込む。ぐっすり寝ているベルトルドを、どう起こそうか思案を巡らせた。
「ベルトルドさん、朝だから起きて~」
耳元で少し大きな声で呼ぶが、ぴくりともしない。
次にほっぺたをペチペチと叩いてみるが反応しない。ちょっとつねってみても唸り声もあげない。
キュッリッキの部屋で寝ているときは、アルカネットと2人がかりで起こすのですぐに目を覚ましてくれる。しかし今日のベルトルドは眠りが深いのか、中々起きそうもなかった。
「てごわい……」
腕を組んでベルトルドを見おろしていると、シーツの一部が小さな山を作っているのを見つけて、キュッリッキは首をかしげた。
「なんだろう?」
妙にその小さな山が気になって気になって、キュッリッキは「そだ!」と掌を打ち付けた。
「ベルトルドさん、早く起きなきゃダメなのーーー!!」
両手でシーツを掴み、ガバッと勢いよくシーツを持ち上げめくった。
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