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それぞれの悪巧み編
episode320
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ランチも終わり、下官たちが食器を下げ、アッサムティーを注いだ白磁のカップをそれぞれの前に置いていく。
「ミルクくれ」
ベルトルドが手を差し出すと、下官の一人が慌ててミルクポットを手渡す。
「回してください」
アルカネットが手を差し出し、ぐるりと一周して、ベルトルドはもう一杯おかわりをもらって、ミルクを注いだ。
上品で澄んだ香気に、ミルクの甘い香りが溶け込む。室内は安らぐような良い匂いに満たされていた。
4人はそれぞれ食後のお茶を堪能すると、集った目的を開始するために、茶器を下げさせた。
下官たちは急いで片付けると、速やかに退室していった。
「さて」
ベルトルドはテーブルに両肘をついて、顎の下で両手を組む。
「………なんだっけ?」
自分のデスクから筆記用具を持ってきたリュリュは、椅子に座る前にズッコケた。
「今ここですぐケツの穴にぶち込まれたいのかしら!?」
「絶対ヤダ!!」
リュリュに胸ぐらを掴まれたベルトルドは、ベソ顔で全力拒否する。
「モナルダ大陸に行ったあとの、隠密行動についての打ち合わせですよ…」
呆れ顔のまま、アルカネットはベルトルドの耳をグイっと引っ張った。
「イデデ」
「仕事はいくらでも詰まってるから、とっとと始めるわよ」
「はい…」
アルカネットとシ・アティウスは、持ってきていた書類ケースから、打ち合わせの内容に必要な書類を出してテーブルに置く。
「シ・アティウスと確認してきた例のものは、間違いなくエルアーラの起動装置のようです。シ・アティウスのほうでも確証を得ています。あちらに渡ったらベルトルド様と私で装置を取ってきて、遺跡まで運び込みます」
「召喚士の少女は連れて行かないのですか?」
「ダメ」
ベルトルドとアルカネットが口を揃えて言う。シ・アティウスは不思議そうな顔をした。
「傷の具合はだいぶ良くなってきていますが、心に受けた傷はけっして癒されてはいないでしょう。再びナルバ山に連れて行って、記憶が蘇ったらどうするのです」
アルカネットは自分のことのように辛そうな顔で、振り絞るようにして声を出す。
「リッキーがいたら運ぶのはラクだろうがな、怖い思いを再び味わわせるのは避けたい。最近では明るい笑顔を見せる方が多くなってきたんだ。夜もちゃんと寝られるようになってきたし。運搬は俺たちだけでじゅうぶんだ」
「ええ」
「なるほど。判りました」
シ・アティウスは頓着なく返事をした。
ナルバ山の遺跡で、一生懸命アルケラのことを話していた時の顔を思い出す。美しい顔立ちだが、年齢の割にはやや幼げな雰囲気をまとっていて、そこが愛らしいと感じた。そんなキュッリッキに、再び恐怖を思い出させるのは、たしかに酷だろう。
手元の重なる書類から、シ・アティウスは一枚の書類を取り上げる。
「ナルバ山にソレル王国軍がやってきて、懲りずに再奪取しているようです。警備のための傭兵を雇いましたが、倒されたようですね。そして、エルアーラ遺跡も酷い状況のようだ」
シ・アティウスが報告書をアルカネットに渡す。報告書に目を通すと、アルカネットは不快げに眉を寄せた。
「エルアーラに詰めていたケレヴィルの職員は、全員殺されているようですね。――ん、こういってはなんですが、扱い方が判るのですか? ソレル国王は」
「メリロット一族は、元々ヤルヴィレフト王家の血を受け継いでいる。――呪われた一族の血をな」
「ミルクくれ」
ベルトルドが手を差し出すと、下官の一人が慌ててミルクポットを手渡す。
「回してください」
アルカネットが手を差し出し、ぐるりと一周して、ベルトルドはもう一杯おかわりをもらって、ミルクを注いだ。
上品で澄んだ香気に、ミルクの甘い香りが溶け込む。室内は安らぐような良い匂いに満たされていた。
4人はそれぞれ食後のお茶を堪能すると、集った目的を開始するために、茶器を下げさせた。
下官たちは急いで片付けると、速やかに退室していった。
「さて」
ベルトルドはテーブルに両肘をついて、顎の下で両手を組む。
「………なんだっけ?」
自分のデスクから筆記用具を持ってきたリュリュは、椅子に座る前にズッコケた。
「今ここですぐケツの穴にぶち込まれたいのかしら!?」
「絶対ヤダ!!」
リュリュに胸ぐらを掴まれたベルトルドは、ベソ顔で全力拒否する。
「モナルダ大陸に行ったあとの、隠密行動についての打ち合わせですよ…」
呆れ顔のまま、アルカネットはベルトルドの耳をグイっと引っ張った。
「イデデ」
「仕事はいくらでも詰まってるから、とっとと始めるわよ」
「はい…」
アルカネットとシ・アティウスは、持ってきていた書類ケースから、打ち合わせの内容に必要な書類を出してテーブルに置く。
「シ・アティウスと確認してきた例のものは、間違いなくエルアーラの起動装置のようです。シ・アティウスのほうでも確証を得ています。あちらに渡ったらベルトルド様と私で装置を取ってきて、遺跡まで運び込みます」
「召喚士の少女は連れて行かないのですか?」
「ダメ」
ベルトルドとアルカネットが口を揃えて言う。シ・アティウスは不思議そうな顔をした。
「傷の具合はだいぶ良くなってきていますが、心に受けた傷はけっして癒されてはいないでしょう。再びナルバ山に連れて行って、記憶が蘇ったらどうするのです」
アルカネットは自分のことのように辛そうな顔で、振り絞るようにして声を出す。
「リッキーがいたら運ぶのはラクだろうがな、怖い思いを再び味わわせるのは避けたい。最近では明るい笑顔を見せる方が多くなってきたんだ。夜もちゃんと寝られるようになってきたし。運搬は俺たちだけでじゅうぶんだ」
「ええ」
「なるほど。判りました」
シ・アティウスは頓着なく返事をした。
ナルバ山の遺跡で、一生懸命アルケラのことを話していた時の顔を思い出す。美しい顔立ちだが、年齢の割にはやや幼げな雰囲気をまとっていて、そこが愛らしいと感じた。そんなキュッリッキに、再び恐怖を思い出させるのは、たしかに酷だろう。
手元の重なる書類から、シ・アティウスは一枚の書類を取り上げる。
「ナルバ山にソレル王国軍がやってきて、懲りずに再奪取しているようです。警備のための傭兵を雇いましたが、倒されたようですね。そして、エルアーラ遺跡も酷い状況のようだ」
シ・アティウスが報告書をアルカネットに渡す。報告書に目を通すと、アルカネットは不快げに眉を寄せた。
「エルアーラに詰めていたケレヴィルの職員は、全員殺されているようですね。――ん、こういってはなんですが、扱い方が判るのですか? ソレル国王は」
「メリロット一族は、元々ヤルヴィレフト王家の血を受け継いでいる。――呪われた一族の血をな」
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