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それぞれの悪巧み編
episode318
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千年に渡る種族統一国家の名のもとに、抑圧し支配し続けてきたハワドウレ皇国から、自由を取り戻すために旗を掲げる。
『自由奪還軍』と高らかにハワドウレ皇国に宣戦布告を出したものの、当のハワドウレ皇国からなんの音沙汰もないまま、連合を組んだ3人の王達は無為な時を過ごしていた。
モナルダ大陸にあるボルクンド王国、エクダル国、ベルマン公国の王たちが、ソレル王国ヴェイセル王の甘言に唆され、安易に『自由奪還軍』に加担した。
その王たちは、ボルクンド王国領内エレギア地方にある、エルアーラ遺跡と呼ばれる遺跡の中に陣取っていた。
味気ない部屋に豪奢な調度品を運び込ませ、高級な酒を酌み交わしながら、自らの置かれた立場に愚痴が飛び交う。
「世界中に向けて布告を発信してみたものの、彼の国から、何も応答がないのではないか?」
ボルクンド王国バーリエル王はワイングラスを傾けながら、怪訝そうにぼやく。
「こちらから攻め込まないものだから、ハッタリだと思われておるのじゃろう」
ベルマン公国ヘッグルンド公王は両手を組んで、肩を聳やかす。
「過日、ソレル王国にハワドウレの正規軍が攻め入って、首都を抑えられたそうだが、ヴェイセル殿はあっさりと首都を手放したそうではないか。今回の蜂起は大丈夫なのか心配だな」
エクダル国首相アッペルトフトは皮肉を交え、脚を組み直した。
「戦力を送り込もうにも、エグザイル・システムは抑えられておるじゃろうし、船で移動となると日数もかかる。地続きじゃない上に、惑星の反対側じゃ」
ヘッグルンド公王の指摘に、アッペルトフト首相は「然り」と声を出す。
「距離がありすぎるから反応が鈍い、と考えていいのかもしれぬが。しかしあの国には厄介な小僧がおるじゃろ」
「女好きで有名な、ベルトルドとか抜かす小僧でしたな」
アッペルトフト首相は侮蔑も顕に、不快げに眉を寄せた。
「『白銀の薔薇』などとあだ名されておるそうじゃが、貴婦人たちのドレスの裾をまくりあげるしか能がないのではないかえ」
ひっひっひっ、とヘッグルンド公王が茶化す。アルカネットとリュリュが聞いたら「その通り」と口を揃えただろう。
「概ねそうなのかもしれないが、きゃつのサイ《超能力》はOverランクだそうだ。3年前のコッコラ王国反逆の時も、鎮圧のためにきゃつが出張ったせいで負けたと聞くぞ。そこだけは侮れぬ」
「アルカネットという魔法使いもおったじゃろ、あやつもOverランクとか」
第10まである正規軍全てを投入されても、それを上回る戦力を誇るベルトルドとアルカネット2人の存在の方が恐怖である。
他国のみならず、トゥーリ族にもアイオン族にも、2人の名は轟いているのだ。
「ハッタリではないのかえ?」
ちびちびと酒を舐めていたバーリエル王は、訝しみながら首をかしげた。それについては、アッペルトフト首相が首を横に振って否定する。
「コッコラ王国側に、吾の部下が紛れ込んでいて、その凄まじい戦闘を目の当たりにして報告を送ってきた。部下の見立てだと、あの勢いで本気ではなかったそうだから、本気を出した時が恐ろしいと言っておった」
「我ら4国の兵力すべてをもってしても、あやつらには敵わぬのではないか…?」
今更ながら、ハワドウレ皇国の反応よりも、ベルトルドとアルカネット2人のほうが、3人の王たちの心に寒風を吹き込んでいた。
『自由奪還軍』と高らかにハワドウレ皇国に宣戦布告を出したものの、当のハワドウレ皇国からなんの音沙汰もないまま、連合を組んだ3人の王達は無為な時を過ごしていた。
モナルダ大陸にあるボルクンド王国、エクダル国、ベルマン公国の王たちが、ソレル王国ヴェイセル王の甘言に唆され、安易に『自由奪還軍』に加担した。
その王たちは、ボルクンド王国領内エレギア地方にある、エルアーラ遺跡と呼ばれる遺跡の中に陣取っていた。
味気ない部屋に豪奢な調度品を運び込ませ、高級な酒を酌み交わしながら、自らの置かれた立場に愚痴が飛び交う。
「世界中に向けて布告を発信してみたものの、彼の国から、何も応答がないのではないか?」
ボルクンド王国バーリエル王はワイングラスを傾けながら、怪訝そうにぼやく。
「こちらから攻め込まないものだから、ハッタリだと思われておるのじゃろう」
ベルマン公国ヘッグルンド公王は両手を組んで、肩を聳やかす。
「過日、ソレル王国にハワドウレの正規軍が攻め入って、首都を抑えられたそうだが、ヴェイセル殿はあっさりと首都を手放したそうではないか。今回の蜂起は大丈夫なのか心配だな」
エクダル国首相アッペルトフトは皮肉を交え、脚を組み直した。
「戦力を送り込もうにも、エグザイル・システムは抑えられておるじゃろうし、船で移動となると日数もかかる。地続きじゃない上に、惑星の反対側じゃ」
ヘッグルンド公王の指摘に、アッペルトフト首相は「然り」と声を出す。
「距離がありすぎるから反応が鈍い、と考えていいのかもしれぬが。しかしあの国には厄介な小僧がおるじゃろ」
「女好きで有名な、ベルトルドとか抜かす小僧でしたな」
アッペルトフト首相は侮蔑も顕に、不快げに眉を寄せた。
「『白銀の薔薇』などとあだ名されておるそうじゃが、貴婦人たちのドレスの裾をまくりあげるしか能がないのではないかえ」
ひっひっひっ、とヘッグルンド公王が茶化す。アルカネットとリュリュが聞いたら「その通り」と口を揃えただろう。
「概ねそうなのかもしれないが、きゃつのサイ《超能力》はOverランクだそうだ。3年前のコッコラ王国反逆の時も、鎮圧のためにきゃつが出張ったせいで負けたと聞くぞ。そこだけは侮れぬ」
「アルカネットという魔法使いもおったじゃろ、あやつもOverランクとか」
第10まである正規軍全てを投入されても、それを上回る戦力を誇るベルトルドとアルカネット2人の存在の方が恐怖である。
他国のみならず、トゥーリ族にもアイオン族にも、2人の名は轟いているのだ。
「ハッタリではないのかえ?」
ちびちびと酒を舐めていたバーリエル王は、訝しみながら首をかしげた。それについては、アッペルトフト首相が首を横に振って否定する。
「コッコラ王国側に、吾の部下が紛れ込んでいて、その凄まじい戦闘を目の当たりにして報告を送ってきた。部下の見立てだと、あの勢いで本気ではなかったそうだから、本気を出した時が恐ろしいと言っておった」
「我ら4国の兵力すべてをもってしても、あやつらには敵わぬのではないか…?」
今更ながら、ハワドウレ皇国の反応よりも、ベルトルドとアルカネット2人のほうが、3人の王たちの心に寒風を吹き込んでいた。
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