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それぞれの悪巧み編
episode316
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ベルトルドもアルカネットもその場を動かず、ライオン傭兵団の攻撃も全て着弾前に空間に吸収され届かず、ガエルとヴァルトの拳も見えない壁に弾き飛ばされた。完璧な防御をベルトルドが、そしてアルカネットの無詠唱魔法が容赦なく炸裂し、辺りをイラアルータ・トニトルスの雷光が無数に踊り狂った。
為すすべもなく逃げ腰になるライオン傭兵団を嘲笑うかのように、念動力により地面に無数の亀裂が走り、岩や小石などが宙を舞って襲いかかった。更に最上位攻撃風魔法トゥムルトゥス・リーフが勢いに拍車をかけ、トドメの氷結封印(ケーラ・ベークシス)で完全に動きを封じられた。
それでもガエルやヴァルトなどは抵抗を試みて封印を破ろうともがいたが、トコトコと歩いてきたベルトルドの容赦のない一蹴りでサクッと沈められた。
時間にすればほんの10分程度だっただろう。しかし、攻撃を食らっていたライオン傭兵団にしてみれば、永遠に感じる猛威の10分間だった。
「出し惜しみするんじゃないぞお前たち! もう終わりなのか?」
不敵な笑みを浮かべてベルトルドが叫ぶと、コッコラ王国軍は恐れ慄き、蜘蛛の子を散らす勢いで敵前逃亡を始めた。
「張り合いのない連中だな…。それにしてもお前たち、もうちょっと頑張れば面白かったものを。あっさりと沈みおって情けない」
無様に地面に転がるライオン傭兵団を睥睨すると、ベルトルドはうつ伏せに倒れるザカリーの背中を踏みつけ、軽やかな足取りでコッコラ王国軍を追って領内を突き進んで行った。
そのたった半日で、コッコラ王国軍は壊滅状態に追い込まれて惨敗。雇われた傭兵たちも殆どが倒され、数日後、地図からコッコラ王国の名が消え失せた。
まさに、トリプルハリケーンが通り過ぎていったごとき勢いだった。
「部下だから大目に見てくれるだろう、などとチラッとでも思ったのがそもそもの間違いでした。あの方々の容赦のない攻撃といったら、筆舌に尽くしがたい凶暴さでした」
「手加減とか容赦するとか、あいつらの辞書には絶対載ってねえ……」
ザカリーは頭を振って吐き捨てた。気を失っていたので背中を踏まれたことは、仲間たちからあとで聞かされた。
「ベルトルドさんとアルカネットさんの2人でやっちゃったんだ~……すっごーい」
キュッリッキはわくわくした表情で、その時の様子を想像してみる。腕自慢の彼らがコテンパンにやられたのだ。
みんな思うところが色々あるのだろう。どんよりと暗雲を垂れこめたような雰囲気をまとわせて、力なく俯いてしまっていた。
「俺が帰ったぞ!」
そこへ屋敷の主が元気に帰宅を告げる声が聞こえてきて、みんな一斉にビクリと身体をひきつらせた。
「ここにいたかリッキー」
「おかえりなさ~い」
スモーキングルームに姿を見せたベルトルドに、キュッリッキは小走りに駆け寄って飛びついた。
最近こうしておかえりなさいをしないと、ベルトルドがいつまでも拗ねる。というよりイジケる。
飛びついてきたキュッリッキを嬉しそうに抱きしめ、たっぷりと抱擁を堪能する。
「今日は済まなかった。身体はもう大丈夫か? 痛いところや苦しいところはないか?」
「大丈夫だよ。もう平気だから」
「そうか。本当に済まなかったな」
「アタシのほうこそ、ごめんなさい」
「もういいんだよ。イイ子だ、リッキー」
もう一度ギュッとキュッリッキを抱きしめ、
「なんだお前たち、全力で落ち込んで」
やっと気づいたと言わんばかりに室内を見渡す。
為すすべもなく逃げ腰になるライオン傭兵団を嘲笑うかのように、念動力により地面に無数の亀裂が走り、岩や小石などが宙を舞って襲いかかった。更に最上位攻撃風魔法トゥムルトゥス・リーフが勢いに拍車をかけ、トドメの氷結封印(ケーラ・ベークシス)で完全に動きを封じられた。
それでもガエルやヴァルトなどは抵抗を試みて封印を破ろうともがいたが、トコトコと歩いてきたベルトルドの容赦のない一蹴りでサクッと沈められた。
時間にすればほんの10分程度だっただろう。しかし、攻撃を食らっていたライオン傭兵団にしてみれば、永遠に感じる猛威の10分間だった。
「出し惜しみするんじゃないぞお前たち! もう終わりなのか?」
不敵な笑みを浮かべてベルトルドが叫ぶと、コッコラ王国軍は恐れ慄き、蜘蛛の子を散らす勢いで敵前逃亡を始めた。
「張り合いのない連中だな…。それにしてもお前たち、もうちょっと頑張れば面白かったものを。あっさりと沈みおって情けない」
無様に地面に転がるライオン傭兵団を睥睨すると、ベルトルドはうつ伏せに倒れるザカリーの背中を踏みつけ、軽やかな足取りでコッコラ王国軍を追って領内を突き進んで行った。
そのたった半日で、コッコラ王国軍は壊滅状態に追い込まれて惨敗。雇われた傭兵たちも殆どが倒され、数日後、地図からコッコラ王国の名が消え失せた。
まさに、トリプルハリケーンが通り過ぎていったごとき勢いだった。
「部下だから大目に見てくれるだろう、などとチラッとでも思ったのがそもそもの間違いでした。あの方々の容赦のない攻撃といったら、筆舌に尽くしがたい凶暴さでした」
「手加減とか容赦するとか、あいつらの辞書には絶対載ってねえ……」
ザカリーは頭を振って吐き捨てた。気を失っていたので背中を踏まれたことは、仲間たちからあとで聞かされた。
「ベルトルドさんとアルカネットさんの2人でやっちゃったんだ~……すっごーい」
キュッリッキはわくわくした表情で、その時の様子を想像してみる。腕自慢の彼らがコテンパンにやられたのだ。
みんな思うところが色々あるのだろう。どんよりと暗雲を垂れこめたような雰囲気をまとわせて、力なく俯いてしまっていた。
「俺が帰ったぞ!」
そこへ屋敷の主が元気に帰宅を告げる声が聞こえてきて、みんな一斉にビクリと身体をひきつらせた。
「ここにいたかリッキー」
「おかえりなさ~い」
スモーキングルームに姿を見せたベルトルドに、キュッリッキは小走りに駆け寄って飛びついた。
最近こうしておかえりなさいをしないと、ベルトルドがいつまでも拗ねる。というよりイジケる。
飛びついてきたキュッリッキを嬉しそうに抱きしめ、たっぷりと抱擁を堪能する。
「今日は済まなかった。身体はもう大丈夫か? 痛いところや苦しいところはないか?」
「大丈夫だよ。もう平気だから」
「そうか。本当に済まなかったな」
「アタシのほうこそ、ごめんなさい」
「もういいんだよ。イイ子だ、リッキー」
もう一度ギュッとキュッリッキを抱きしめ、
「なんだお前たち、全力で落ち込んで」
やっと気づいたと言わんばかりに室内を見渡す。
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