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それぞれの悪巧み編
episode315
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ハワドウレ皇国の拠点であるワイ・メア大陸には、属国である小国が5つ領土を構えていた。
その中の一つ、北に位置するコッコラ王国は、石油が豊かでハワドウレ皇国のエネルギー面を大きく支えていた。
ところがコッコラ王国が突如反旗を翻し、豊かな財力を活かして多くの兵力を募り、大規模な戦争を仕掛けてきたのだ。
「それがちょうど3年前です。あの頃はまだ、いくつかの傭兵ギルドから依頼を受けているような状態で、今ほど我々も有名ではありませんでした。大々的に傭兵を募っていたコッコラ王国からもたらされた報酬額は、なんと5年は遊んで暮らせそうな額でしたから、断る理由がありません」
ため息とともに、カーティスは懐かしそうに目を閉じた。
「ライオン傭兵団(うち)の後ろ盾がハワドウレ皇国の副宰相であっても、我々には関係ありません。食べていかなくてはいけませんから。――これも仕事だからと意気揚々とコッコラ王国側に与したわけです」
「しかしその判断が甘かった……」
ギャリーが脂汗を浮かべて呟く。
「そう……あの頃の私たちは、ベルトルド卿の恐ろしさをナメてかかってましたからねえ」
コッコラ王国の傭兵として戦争に参加したライオン傭兵団は、持ち前の圧倒的なパワーでハワドウレ皇国の兵士たちを蹴散らしていった。中にはもと同僚たちも含まれていたが、すでに辞めた身、遠慮の欠片もない。
この戦いで、ライオン傭兵団の強さが傭兵界に轟き、現在の地位を築いて確固たるものになった。
当初兵力差では圧倒的にコッコラ王国不利と目されていたが、多くの傭兵団と共にライオン傭兵団も大活躍して、戦況は一転し、ハワドウレ皇国軍のほうが圧される形に塗り変わっていった。これに気をよくしたコッコラ王国側は、ハワドウレ皇国を挑発し、より状況を悪化させていった。
そしてついに、ハワドウレ皇国は切り札を投入する。
というより、切り札の方が勝手に――切り札以下数名しか事情は知らない――乗り込んできたのだ。
ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと、軍を辞め、ベルトルド邸の執事をしているアルカネットの2人だった。
「ベルトルド卿のサイ《超能力》の実力は、噂ばかりで我々もよく判っていませんでした。アルカネットさんについては、並ぶものが居ないほどの魔法スキル〈才能〉の持ち主であることは知っていました。しかし、2人が本気で力を振るうところなど、見たことがなかったんです」
ベルトルドは軍を全て引かせ、アルカネットと2人だけで戦場のど真ん中に降り立った。
その様子を遠巻きに見ていたコッコラ王国軍と雇われ傭兵たちは訝しんだが、
「かかってこい」
キザったらしく片手で挑発してくるベルトルドの態度に、全員カチンときて、2人に向けて容赦のない集中砲火が浴びせられた。
しかし、砲弾も矢も魔力も全てが2人に着弾する数メートル手前で空間に消失し、何事もなかったように2人は無傷。驚きどよめくコッコラ王国側は、それでも2人に集中砲火を浴びせ続けたが全く効果なし。
その様子に好奇心を掻き立てられたライオン傭兵団が出撃すると、ベルトルドとアルカネットは「待ってました!」と言わんばかりに反撃に転じた。
その中の一つ、北に位置するコッコラ王国は、石油が豊かでハワドウレ皇国のエネルギー面を大きく支えていた。
ところがコッコラ王国が突如反旗を翻し、豊かな財力を活かして多くの兵力を募り、大規模な戦争を仕掛けてきたのだ。
「それがちょうど3年前です。あの頃はまだ、いくつかの傭兵ギルドから依頼を受けているような状態で、今ほど我々も有名ではありませんでした。大々的に傭兵を募っていたコッコラ王国からもたらされた報酬額は、なんと5年は遊んで暮らせそうな額でしたから、断る理由がありません」
ため息とともに、カーティスは懐かしそうに目を閉じた。
「ライオン傭兵団(うち)の後ろ盾がハワドウレ皇国の副宰相であっても、我々には関係ありません。食べていかなくてはいけませんから。――これも仕事だからと意気揚々とコッコラ王国側に与したわけです」
「しかしその判断が甘かった……」
ギャリーが脂汗を浮かべて呟く。
「そう……あの頃の私たちは、ベルトルド卿の恐ろしさをナメてかかってましたからねえ」
コッコラ王国の傭兵として戦争に参加したライオン傭兵団は、持ち前の圧倒的なパワーでハワドウレ皇国の兵士たちを蹴散らしていった。中にはもと同僚たちも含まれていたが、すでに辞めた身、遠慮の欠片もない。
この戦いで、ライオン傭兵団の強さが傭兵界に轟き、現在の地位を築いて確固たるものになった。
当初兵力差では圧倒的にコッコラ王国不利と目されていたが、多くの傭兵団と共にライオン傭兵団も大活躍して、戦況は一転し、ハワドウレ皇国軍のほうが圧される形に塗り変わっていった。これに気をよくしたコッコラ王国側は、ハワドウレ皇国を挑発し、より状況を悪化させていった。
そしてついに、ハワドウレ皇国は切り札を投入する。
というより、切り札の方が勝手に――切り札以下数名しか事情は知らない――乗り込んできたのだ。
ハワドウレ皇国副宰相ベルトルドと、軍を辞め、ベルトルド邸の執事をしているアルカネットの2人だった。
「ベルトルド卿のサイ《超能力》の実力は、噂ばかりで我々もよく判っていませんでした。アルカネットさんについては、並ぶものが居ないほどの魔法スキル〈才能〉の持ち主であることは知っていました。しかし、2人が本気で力を振るうところなど、見たことがなかったんです」
ベルトルドは軍を全て引かせ、アルカネットと2人だけで戦場のど真ん中に降り立った。
その様子を遠巻きに見ていたコッコラ王国軍と雇われ傭兵たちは訝しんだが、
「かかってこい」
キザったらしく片手で挑発してくるベルトルドの態度に、全員カチンときて、2人に向けて容赦のない集中砲火が浴びせられた。
しかし、砲弾も矢も魔力も全てが2人に着弾する数メートル手前で空間に消失し、何事もなかったように2人は無傷。驚きどよめくコッコラ王国側は、それでも2人に集中砲火を浴びせ続けたが全く効果なし。
その様子に好奇心を掻き立てられたライオン傭兵団が出撃すると、ベルトルドとアルカネットは「待ってました!」と言わんばかりに反撃に転じた。
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