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それぞれの悪巧み編
episode314
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「本部にキューリきてたのか? なんだよ、教えてくれりゃいいのに」
ザカリーはソファにひっくり返りながら文句を垂れる。
「ばーか、迷子になってたまたま来てただけだ。アルカネットのところへすぐに連れて行った」
ギャリーはビールをグラスへは注がず、瓶のまま飲み干した。
夜になり出向していたライオン傭兵団の皆が帰ってくると、スモーキングルームに集まって酒盛りしながら、今日のキュッリッキの迷子について盛り上がっていた。
キュッリッキもセヴェリから知らせを受けて、スモーキングルームに来ていた。
「一体なんの用事で呼び出されたんです?」
カーティスに問われると、キュッリッキは暫し考え込み、小さく首を横に振った。
「内緒だから教えちゃダメって、ベルトルドさんに言われてるの」
これには「なんだとー」と部屋のあちこちから不満の声が上がる。
「キューリさんに口止めするとか、怪しさ大爆発ですね」
シビルがほたほたと歩きながら、キュッリッキの座るソファに飛び乗った。
「キューリちゃ~ん喋っちゃいなよぉ~。アタシらもナイショにしとくからぁ」
マリオンは背後からキュッリッキを抱きしめる。そして両掌を胸に被せ、イヤらしく揉み始めた。
「だってダメなんだもん。あっ、やだもぉ、胸揉まないでってばっ」
「ヤイコラ! 羨ましいことしてんじゃねーよ痴女!」
「アタシとキューリちゃんの仲だも~ん。スキンシップ、スキンシップぅ」
ザカリーがマリオンに食ってかかるが、マリオンはおかまいなしにキュッリッキの胸を揉む手を止めない。
「やだったら……あんっ」
キュッリッキの発した艶声に、ザカリーとメルヴィンがドキリと顔を赤らめた。それをチラリと見やって、カーティスが小さくため息をつく。
「マリオン、そのくらいにしておかないと、椅子から立ち上がれなさそうなひとが若干名いますよ」
「へ~い」
カーティスに軽くたしなめられて、マリオンは揉む手を止めて、再びキュッリッキを抱きしめた。
ザカリーはなんとも言えない表情で明後日のほうを向き、メルヴィンは顔を赤らめたまま俯いて息を吐き出した。
「あ、そうだ。ねね、コッコラ王国の悲劇ってなあに?」
ふと思い出したキュッリッキの問いに、一同はしーんと静まり返った。
「??」
急に黙りこくったみんなの様子に、キュッリッキは目を瞬かせる。
「キューリちゃん……それ、どこで聞いたのぉ~?」
マリオンに耳元で囁くように言われて、キュッリッキはくすぐったさに目を閉じる。
「シロクマのおじいちゃんが話してて、詳しくはみんなに聞けって、ベルトルドさんが」
「コラ! キューリてめー、古傷に塩をすりこむような無慈悲なコトをきーてんじゃねーぞ!!」
カーペットの上でゴロゴロしていたヴァルトが、憤然と立ち上がって怒鳴りつけた。
ベルトルドやアルカネットが絡むと、異常に反応するヴァルトなだけに、キュッリッキの好奇心はますます掻き立てられた。
「……話してくれたら、今日呼び出された内容のこと、喋っちゃってもいいかも~」
キュッリッキが強気に出ると、みんな「うっ」という表情を浮かべた。
「しょうがないですねえ…。――3年前、我々は今はもうないコッコラ王国から、破格の報酬で雇われたことがあります」
たっぷりと間を置いたあと、カーティスがそう切り出し、みんな悪夢にうなされたように渋面を浮かべた。
ザカリーはソファにひっくり返りながら文句を垂れる。
「ばーか、迷子になってたまたま来てただけだ。アルカネットのところへすぐに連れて行った」
ギャリーはビールをグラスへは注がず、瓶のまま飲み干した。
夜になり出向していたライオン傭兵団の皆が帰ってくると、スモーキングルームに集まって酒盛りしながら、今日のキュッリッキの迷子について盛り上がっていた。
キュッリッキもセヴェリから知らせを受けて、スモーキングルームに来ていた。
「一体なんの用事で呼び出されたんです?」
カーティスに問われると、キュッリッキは暫し考え込み、小さく首を横に振った。
「内緒だから教えちゃダメって、ベルトルドさんに言われてるの」
これには「なんだとー」と部屋のあちこちから不満の声が上がる。
「キューリさんに口止めするとか、怪しさ大爆発ですね」
シビルがほたほたと歩きながら、キュッリッキの座るソファに飛び乗った。
「キューリちゃ~ん喋っちゃいなよぉ~。アタシらもナイショにしとくからぁ」
マリオンは背後からキュッリッキを抱きしめる。そして両掌を胸に被せ、イヤらしく揉み始めた。
「だってダメなんだもん。あっ、やだもぉ、胸揉まないでってばっ」
「ヤイコラ! 羨ましいことしてんじゃねーよ痴女!」
「アタシとキューリちゃんの仲だも~ん。スキンシップ、スキンシップぅ」
ザカリーがマリオンに食ってかかるが、マリオンはおかまいなしにキュッリッキの胸を揉む手を止めない。
「やだったら……あんっ」
キュッリッキの発した艶声に、ザカリーとメルヴィンがドキリと顔を赤らめた。それをチラリと見やって、カーティスが小さくため息をつく。
「マリオン、そのくらいにしておかないと、椅子から立ち上がれなさそうなひとが若干名いますよ」
「へ~い」
カーティスに軽くたしなめられて、マリオンは揉む手を止めて、再びキュッリッキを抱きしめた。
ザカリーはなんとも言えない表情で明後日のほうを向き、メルヴィンは顔を赤らめたまま俯いて息を吐き出した。
「あ、そうだ。ねね、コッコラ王国の悲劇ってなあに?」
ふと思い出したキュッリッキの問いに、一同はしーんと静まり返った。
「??」
急に黙りこくったみんなの様子に、キュッリッキは目を瞬かせる。
「キューリちゃん……それ、どこで聞いたのぉ~?」
マリオンに耳元で囁くように言われて、キュッリッキはくすぐったさに目を閉じる。
「シロクマのおじいちゃんが話してて、詳しくはみんなに聞けって、ベルトルドさんが」
「コラ! キューリてめー、古傷に塩をすりこむような無慈悲なコトをきーてんじゃねーぞ!!」
カーペットの上でゴロゴロしていたヴァルトが、憤然と立ち上がって怒鳴りつけた。
ベルトルドやアルカネットが絡むと、異常に反応するヴァルトなだけに、キュッリッキの好奇心はますます掻き立てられた。
「……話してくれたら、今日呼び出された内容のこと、喋っちゃってもいいかも~」
キュッリッキが強気に出ると、みんな「うっ」という表情を浮かべた。
「しょうがないですねえ…。――3年前、我々は今はもうないコッコラ王国から、破格の報酬で雇われたことがあります」
たっぷりと間を置いたあと、カーティスがそう切り出し、みんな悪夢にうなされたように渋面を浮かべた。
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