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それぞれの悪巧み編
episode311
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「ああ、リッキー、どうしよう…」
「早く医者に、ヴィヒトリ先生をっ」
ベルトルドとアルカネットは、気を失ったキュッリッキをソファに寝かせ、みっともないほど狼狽えていた。部下たちが見たら、不安しか覚えないほどに。
そこへ、宰相府で仕事を終えてきたリュリュが戻ってきた。
「なーにやってんのよ、あーたたち? 将軍との会見は終わったのかしらん」
ベソでもかきそうな顔の2人を胡乱げに見ながら、リュリュはキュッリッキを指さす。
「どうしたのよ? 小娘」
「アルカネットの豹変に驚きすぎて、ひきつけを起こしてしまったんだ」
「え、私のせいなんですか!?」
身に覚えがないと言わんばかりに、アルカネットは声を荒らげた。
「当たり前だっ!! お前の豹変は極端すぎて怖いぞ! 自覚しろ自覚っ」
「そうね。小娘には『優しいアルカネットさん』なのに、ベルにはあの怖い顔が普通に出てくるからねえ。――目の前に小娘居ても」
「失礼ですね2人とも。いつもと変わらないですよ、私は」
本気でムッとした顔をするアルカネットに、ベルトルドとリュリュはあんぐりと口を開けた。
「無意識にああなるな、マジで怖すぎる…」
「あーたのドSは心臓に悪いのよン」
「あなた方のドSぶりを棚に上げて言わないでください」
ライオン傭兵団の面々が聞いたら、抗議デモでも起こしそうな、自覚のないドSトリオだった。
「さて、小娘はアタシが送ってくるわ。ヴィヒトリちゃんを屋敷に寄越すように、連絡しておいてちょうだい」
「ええええ」
ベルトルドとアルカネットが、揃って不服を剥き出しにして口を尖らせる。
「ベルもアルもお仕事いっぱいあるデショ! とくにアルカネット、あんまりヘイディちゃんを困らせないでちょうだい。あのコ、アタシのお友達なんだから」
「困らせた覚えはありませんよ。彼女が勝手に困っているだけです」
「ヘイディちゃんが聞いたら、涙の海で溺れ死んじゃうわね…」
リュリュはキュッリッキを腕に抱き、捨て犬みたいな顔をする2人をキッと睨みつけた。
「早くお仕事に戻りなさいっ!」
リュリュのスキル〈才能〉もサイ《超能力》だが、ベルトルドのように空間転移は使えないため、総帥本部の地下から専用馬車に乗り込んだ。
意識のないキュッリッキの顔を見つめ、リュリュは悲しげな雰囲気を漂わせながらも、優しく微笑む。
「あーたも毎日大変よね。大怪我したり、環境が一変したり、初めて恋しちゃったり、お勉強も始めたり、良いも悪いも新しいこと尽くめで。それに、ベルとアルから本気と書いてマジと読むってくらい惚れられちゃって…」
リュリュは視線を窓の外に向ける。
「これも運命、ってやつなのかしら?」
独り言というより、ここには居ない誰かに呟くように、リュリュは声を潜めた。
「どうか、幸薄いこのコを守ってあげてね、おねえちゃん」
「早く医者に、ヴィヒトリ先生をっ」
ベルトルドとアルカネットは、気を失ったキュッリッキをソファに寝かせ、みっともないほど狼狽えていた。部下たちが見たら、不安しか覚えないほどに。
そこへ、宰相府で仕事を終えてきたリュリュが戻ってきた。
「なーにやってんのよ、あーたたち? 将軍との会見は終わったのかしらん」
ベソでもかきそうな顔の2人を胡乱げに見ながら、リュリュはキュッリッキを指さす。
「どうしたのよ? 小娘」
「アルカネットの豹変に驚きすぎて、ひきつけを起こしてしまったんだ」
「え、私のせいなんですか!?」
身に覚えがないと言わんばかりに、アルカネットは声を荒らげた。
「当たり前だっ!! お前の豹変は極端すぎて怖いぞ! 自覚しろ自覚っ」
「そうね。小娘には『優しいアルカネットさん』なのに、ベルにはあの怖い顔が普通に出てくるからねえ。――目の前に小娘居ても」
「失礼ですね2人とも。いつもと変わらないですよ、私は」
本気でムッとした顔をするアルカネットに、ベルトルドとリュリュはあんぐりと口を開けた。
「無意識にああなるな、マジで怖すぎる…」
「あーたのドSは心臓に悪いのよン」
「あなた方のドSぶりを棚に上げて言わないでください」
ライオン傭兵団の面々が聞いたら、抗議デモでも起こしそうな、自覚のないドSトリオだった。
「さて、小娘はアタシが送ってくるわ。ヴィヒトリちゃんを屋敷に寄越すように、連絡しておいてちょうだい」
「ええええ」
ベルトルドとアルカネットが、揃って不服を剥き出しにして口を尖らせる。
「ベルもアルもお仕事いっぱいあるデショ! とくにアルカネット、あんまりヘイディちゃんを困らせないでちょうだい。あのコ、アタシのお友達なんだから」
「困らせた覚えはありませんよ。彼女が勝手に困っているだけです」
「ヘイディちゃんが聞いたら、涙の海で溺れ死んじゃうわね…」
リュリュはキュッリッキを腕に抱き、捨て犬みたいな顔をする2人をキッと睨みつけた。
「早くお仕事に戻りなさいっ!」
リュリュのスキル〈才能〉もサイ《超能力》だが、ベルトルドのように空間転移は使えないため、総帥本部の地下から専用馬車に乗り込んだ。
意識のないキュッリッキの顔を見つめ、リュリュは悲しげな雰囲気を漂わせながらも、優しく微笑む。
「あーたも毎日大変よね。大怪我したり、環境が一変したり、初めて恋しちゃったり、お勉強も始めたり、良いも悪いも新しいこと尽くめで。それに、ベルとアルから本気と書いてマジと読むってくらい惚れられちゃって…」
リュリュは視線を窓の外に向ける。
「これも運命、ってやつなのかしら?」
独り言というより、ここには居ない誰かに呟くように、リュリュは声を潜めた。
「どうか、幸薄いこのコを守ってあげてね、おねえちゃん」
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