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それぞれの悪巧み編
episode307
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キュッリッキはこれ以上にないほど、瞳をキラキラ輝かせていた。アルケラを視ているわけでもないのに、瞳にまといつく光彩も煌いている。
一方、キュッリッキに好奇の目を向けられている男は、困ったようにキュッリッキをみおろしていた。
(なぜこのような場所に、このような令嬢がいるのだろう?)
見るからに貴族の姫君だ。男はわずかに首をかしげたが、
「かわいいいい!!」
黄色い悲鳴をあげると、キュッリッキは何かが弾けたように男に飛びついた。脅威の跳躍力を発揮して、男の首のあたりに抱きつく。
「毛皮すべすべ~」
スリスリスリスリ……キュッリッキは男に何度も何度も頬ずりする。つるつるとした毛並みが肌に気持ちがイイ。
次に男は足元から何かが軍服に爪を立てて、這い登ってくる感触に気づいて視線を下へ向ける。
白銀色の毛並みの仔犬が、器用に登ってくるのだ。
男は飛びついてきた少女と仔犬を抱きかかえると、どうしたものかと廊下で硬直してしまった。
「で、リッキーとはぐれたのか?」
「………ええ」
アルカネットは憮然と、明後日の方を向いてごにょりと呟いた。
「確かに総帥本部は無駄に広いがな、ここまでくるのに、何故リッキーとはぐれて、お前だけがここにいる?」
トン、トン、トンッとデスクを人差し指で叩いて、ベルトルドはアルカネットを睨みつける。それに対し「ごもっとも」とは胸中で呟くアルカネットだった。
「無駄に探しまわるよりも、あなたに探してもらったほうが早いと思いまして」
「居直って他力本願か」
デスクにふんぞり返りながら、ベルトルドは目を細めた。アルカネットにしては、珍しく困り果てている。魔法で探索すれば見つけられるだろうに、そんなことも頭から抜けてしまうほど狼狽えているのだ。
魔法部隊(ビリエル)の本部から、一度も離すことなくキュッリッキの手を引いて総帥本部までやってきたのだが、トイレに行きたいというキュッリッキを案内して外で待っていた。そこへ知り合いが声をかけてきたので、出入り口から目を逸らして挨拶を交わすこと1,2分。キュッリッキはトイレから出てこず、失礼を承知で中に入ったがキュッリッキはいなかった。
「……なんてことです」
呆然となると、自分が魔法使いであることも忘れ、慌ててベルトルドに泣きついたのだった。
「全くしょうがないやつだな……」
大仰に溜め息を吐き出すと、ベルトルドは意識をこらした。その時扉がノックされ、衛兵が来客を告げる。
「ブルーベル将軍がお見えになりました!」
「ああ…もうそんな時間か。すぐお通ししろ」
「はっ!」
衛兵ふたりがかりで重厚な扉を左右に開く。
「失礼しますよ」
入ってきた将軍を見て、ベルトルドとアルカネットは目を見張って、ついで口をぽかんと開けて挨拶も忘れて固まった。
将軍の腕には、キュッリッキとフェンリルが、しっかりと抱かれていたからだ。
一方、キュッリッキに好奇の目を向けられている男は、困ったようにキュッリッキをみおろしていた。
(なぜこのような場所に、このような令嬢がいるのだろう?)
見るからに貴族の姫君だ。男はわずかに首をかしげたが、
「かわいいいい!!」
黄色い悲鳴をあげると、キュッリッキは何かが弾けたように男に飛びついた。脅威の跳躍力を発揮して、男の首のあたりに抱きつく。
「毛皮すべすべ~」
スリスリスリスリ……キュッリッキは男に何度も何度も頬ずりする。つるつるとした毛並みが肌に気持ちがイイ。
次に男は足元から何かが軍服に爪を立てて、這い登ってくる感触に気づいて視線を下へ向ける。
白銀色の毛並みの仔犬が、器用に登ってくるのだ。
男は飛びついてきた少女と仔犬を抱きかかえると、どうしたものかと廊下で硬直してしまった。
「で、リッキーとはぐれたのか?」
「………ええ」
アルカネットは憮然と、明後日の方を向いてごにょりと呟いた。
「確かに総帥本部は無駄に広いがな、ここまでくるのに、何故リッキーとはぐれて、お前だけがここにいる?」
トン、トン、トンッとデスクを人差し指で叩いて、ベルトルドはアルカネットを睨みつける。それに対し「ごもっとも」とは胸中で呟くアルカネットだった。
「無駄に探しまわるよりも、あなたに探してもらったほうが早いと思いまして」
「居直って他力本願か」
デスクにふんぞり返りながら、ベルトルドは目を細めた。アルカネットにしては、珍しく困り果てている。魔法で探索すれば見つけられるだろうに、そんなことも頭から抜けてしまうほど狼狽えているのだ。
魔法部隊(ビリエル)の本部から、一度も離すことなくキュッリッキの手を引いて総帥本部までやってきたのだが、トイレに行きたいというキュッリッキを案内して外で待っていた。そこへ知り合いが声をかけてきたので、出入り口から目を逸らして挨拶を交わすこと1,2分。キュッリッキはトイレから出てこず、失礼を承知で中に入ったがキュッリッキはいなかった。
「……なんてことです」
呆然となると、自分が魔法使いであることも忘れ、慌ててベルトルドに泣きついたのだった。
「全くしょうがないやつだな……」
大仰に溜め息を吐き出すと、ベルトルドは意識をこらした。その時扉がノックされ、衛兵が来客を告げる。
「ブルーベル将軍がお見えになりました!」
「ああ…もうそんな時間か。すぐお通ししろ」
「はっ!」
衛兵ふたりがかりで重厚な扉を左右に開く。
「失礼しますよ」
入ってきた将軍を見て、ベルトルドとアルカネットは目を見張って、ついで口をぽかんと開けて挨拶も忘れて固まった。
将軍の腕には、キュッリッキとフェンリルが、しっかりと抱かれていたからだ。
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