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それぞれの悪巧み編
episode304
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「ねえ、あの人たちなあに?」
急におとなしくなった男たちは押し黙ると、すごすごと部屋の中に戻ってどんよりと凹んでいた。その様子を見て、キュッリッキは不思議そうに目を瞬かせた。
「ベルトルドさんとアルカネットさんの名前って、ライオン傭兵団員以外にも脅し効果があるんだね~」
あの2人は本当に凄い人たちなんだと、キュッリッキは妙に感心してしまった。
「軍や国政に携わる連中には、神よりも絶大な効果がある存在だからなあ、あの御仁たちは。――あいつらはオレのもと同僚たちだ。期間限定で再度同僚になったがな」
ベルトルドの命令で、ライオン傭兵団員のほとんどは、ハワドウレ皇国の正規部隊に一時徴兵されている。元々ギャリーは正規部隊の出身で、以前所属していた古巣に編入されていた。
「しっかしよ、何しに来たんだ? おめかししてこんなとこまでよ」
キュッリッキの姿をつくづくと見て、ギャリーは内心眉をひそめた。
可愛いし、とてもよく似合っている。どこから見ても、お貴族のご令嬢様だ。しかし明らかにベルトルドとアルカネットの趣味に染まってしまっている。
女の子だから綺麗でお洒落な格好をしているほうがいいだろう。でもアジトにいたときは、いつもラフな服装をしていた。その姿に見慣れていたので、こんなフリフリビラビラな格好を見ると、違和感を感じてしまう。
「アルカネットさんに呼ばれたの。お話があるから来てくださいって」
「アルカネットに?」
ギャリーは軽くため息をつくと、廊下の窓の外を指さした。
「ほら、こっから見える、あの白い建物がアルカネットのいる魔法部隊(ビリエル)の本部だ。判るか?」
ギャリーの横に立って窓の外を覗き込み、指し示す方を辿り、キュッリッキはガッカリと肩を落とした。全然違う場所だった。
「ここも白い建物なのにぃ…」
「外観はドコも似ているからな、知らねー奴は勘違いする。デカイ看板がついてるわけじゃねーからな」
ムスっと顔を歪めるキュッリッキを見て、ギャリーはにやりと口の端を上げた。
「素直にセヴェリさんに案内してもらうんだったあ」
途中までは、ベルトルド邸の執事代理をしているセヴェリに連れてきてもらった。
「よーし! これは探検しなくっちゃ!」
初めて降り立つ場所に興味津々のキュッリッキは、一人でも大丈夫だと意気込んで無理矢理別れた。それなのに探検どころか、しっかり迷子である。
「この建物は、オレら正規部隊の本部の一つだ。この辺りにゃ似たような建物が多いから、間違ってもしょうがねぇ」
ギャリーは大きな掌で、キュッリッキの頭をポンポンッと軽く叩く。
「よし、魔法部隊(ビリエル)本部まで送ってやるから、ちょっと待ってろ」
「うんっ」
小躍りして喜ぶキュッリッキをその場に残し、ギャリーは先ほどの部屋に向かう。
「ちょっとウチのお嬢を送ってくらぁ」
入口から中へ大声で言いながら、同僚たちと2,3やり取りをして、ギャリーはキュッリッキを連れて魔法部隊(ビリエル)の本部に向かった。
急におとなしくなった男たちは押し黙ると、すごすごと部屋の中に戻ってどんよりと凹んでいた。その様子を見て、キュッリッキは不思議そうに目を瞬かせた。
「ベルトルドさんとアルカネットさんの名前って、ライオン傭兵団員以外にも脅し効果があるんだね~」
あの2人は本当に凄い人たちなんだと、キュッリッキは妙に感心してしまった。
「軍や国政に携わる連中には、神よりも絶大な効果がある存在だからなあ、あの御仁たちは。――あいつらはオレのもと同僚たちだ。期間限定で再度同僚になったがな」
ベルトルドの命令で、ライオン傭兵団員のほとんどは、ハワドウレ皇国の正規部隊に一時徴兵されている。元々ギャリーは正規部隊の出身で、以前所属していた古巣に編入されていた。
「しっかしよ、何しに来たんだ? おめかししてこんなとこまでよ」
キュッリッキの姿をつくづくと見て、ギャリーは内心眉をひそめた。
可愛いし、とてもよく似合っている。どこから見ても、お貴族のご令嬢様だ。しかし明らかにベルトルドとアルカネットの趣味に染まってしまっている。
女の子だから綺麗でお洒落な格好をしているほうがいいだろう。でもアジトにいたときは、いつもラフな服装をしていた。その姿に見慣れていたので、こんなフリフリビラビラな格好を見ると、違和感を感じてしまう。
「アルカネットさんに呼ばれたの。お話があるから来てくださいって」
「アルカネットに?」
ギャリーは軽くため息をつくと、廊下の窓の外を指さした。
「ほら、こっから見える、あの白い建物がアルカネットのいる魔法部隊(ビリエル)の本部だ。判るか?」
ギャリーの横に立って窓の外を覗き込み、指し示す方を辿り、キュッリッキはガッカリと肩を落とした。全然違う場所だった。
「ここも白い建物なのにぃ…」
「外観はドコも似ているからな、知らねー奴は勘違いする。デカイ看板がついてるわけじゃねーからな」
ムスっと顔を歪めるキュッリッキを見て、ギャリーはにやりと口の端を上げた。
「素直にセヴェリさんに案内してもらうんだったあ」
途中までは、ベルトルド邸の執事代理をしているセヴェリに連れてきてもらった。
「よーし! これは探検しなくっちゃ!」
初めて降り立つ場所に興味津々のキュッリッキは、一人でも大丈夫だと意気込んで無理矢理別れた。それなのに探検どころか、しっかり迷子である。
「この建物は、オレら正規部隊の本部の一つだ。この辺りにゃ似たような建物が多いから、間違ってもしょうがねぇ」
ギャリーは大きな掌で、キュッリッキの頭をポンポンッと軽く叩く。
「よし、魔法部隊(ビリエル)本部まで送ってやるから、ちょっと待ってろ」
「うんっ」
小躍りして喜ぶキュッリッキをその場に残し、ギャリーは先ほどの部屋に向かう。
「ちょっとウチのお嬢を送ってくらぁ」
入口から中へ大声で言いながら、同僚たちと2,3やり取りをして、ギャリーはキュッリッキを連れて魔法部隊(ビリエル)の本部に向かった。
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