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それぞれの悪巧み編
episode295
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「フンッ、化けの皮が剥がれただけさ」
メリロット王に向ける人々の反応を、そうベルトルドは一笑に付した。
皇国建国記念のパーティーで、皇都イララクスに招かれたメリロット王に一度だけベルトルドはまみえた事がある。その時に受けたメリロット王への率直な感想は、
「食えないジジイ」
だった。
憚るどころか敵意を目に込め、それを隠しもしない。ああいうタイプはいつか何かをやらかすだろう、そう予感していたのだ。
「見事に的中した。俺は予言スキル〈才能〉もあるのかもな」
新聞を広げながら、ベルトルドは愉快そうに笑った。
アルカネットは苦笑のみで応じて、手元の書類に視線を落とす。
「調子に乗って大々的に世界中に宣戦布告を発したようです。おそらく連合に引き込むために、他の国々を煽動しているのでしょう」
「モナルダ大陸にあるベルマン公国、エクダル国、ボクルンド王国が連合に加わっているな。 シェフレラ群島のヤルトステット国が、怪しい動きを見せているようだが」
「怪しいどころか資金を流していますね。表立って動いてはいませんが、傭兵ギルドに圧力をかけて、ソレル王国に兵力を流しているところもあるようです。もっとも、くすぶっていた傭兵たちは、千載一遇のチャンスとばかりに、喜び勇んで駆けつけているようですが」
ちらりとベルトルドを見ると、椅子に深くもたれかかり、腕を組んでニヤニヤしている。ああいう表情(かお)をする時は、何かとんでもない悪戯を思い浮かべているということを、アルカネットはよく知っていた。子供の頃からそうなのだ。
「満を持しての宣戦布告を投げつけられた身としては、どうなさいます?」
「ふふ~ん。失礼がないように、いっちょ派手に手袋を投げ返してやる」
そう言ってベルトルドは、子供のように無邪気な笑みを浮かべた。
「宣戦布告をされた皇国としては、挙兵に対しての大義名分については問題ありません。しかし、あのことからジャーナリストや世間の目を逸らせるためには、些かパフォーマンスが弱いですね」
「それに、兵力も大して必要ない、と幹部連中も思うだろうな」
小国がいくつか結託しているとはいえ、ハワドウレ皇国の軍事力を全て投入するほどのことではない。
「全軍を投入するためには、軍や国民の心を、もっと激しく鼓舞する材料が必要になるな」
ベルトルドは目を窓の外へと向ける。今日も快晴で空は雲もなく、鮮やかな青に染まっていた。
「あの食えないジジイのせいで、派手な演出が必要になった。軍を全て動かす必要があるから、こちらとしても、最強の切り札を出すしかない」
「まさか…」
「ウン」
ベルトルドは一息ついて、神妙な顔で腕を組む。
「リッキーに手伝ってもらう」
「…」
渋面で俯き、アルカネットは目を外らせる。いつもなら、即反対するところだが、今回はベルトルドの提案を受け入れた。
「ナルバ山で負った怪我はソレル王国の非道によるものであり、恐れ多くも召喚士を害そうとする、神に背く悪逆非道な王だ。という嘘八百を、軍にも国民にも信じてもらい、支持を高めてもらわねばならない」
「身に覚えがないと喚いたところで、証拠もないことですしね」
「それに、リッキーは本物の召喚スキル〈才能〉を持っている。召喚士は神の力を操れる存在だ。力の一端を見せれば皆興奮するだろう。完璧さ」
「…見世物にするのは、正直気が引けます」
「ああ、そうだな…」
メリロット王に向ける人々の反応を、そうベルトルドは一笑に付した。
皇国建国記念のパーティーで、皇都イララクスに招かれたメリロット王に一度だけベルトルドはまみえた事がある。その時に受けたメリロット王への率直な感想は、
「食えないジジイ」
だった。
憚るどころか敵意を目に込め、それを隠しもしない。ああいうタイプはいつか何かをやらかすだろう、そう予感していたのだ。
「見事に的中した。俺は予言スキル〈才能〉もあるのかもな」
新聞を広げながら、ベルトルドは愉快そうに笑った。
アルカネットは苦笑のみで応じて、手元の書類に視線を落とす。
「調子に乗って大々的に世界中に宣戦布告を発したようです。おそらく連合に引き込むために、他の国々を煽動しているのでしょう」
「モナルダ大陸にあるベルマン公国、エクダル国、ボクルンド王国が連合に加わっているな。 シェフレラ群島のヤルトステット国が、怪しい動きを見せているようだが」
「怪しいどころか資金を流していますね。表立って動いてはいませんが、傭兵ギルドに圧力をかけて、ソレル王国に兵力を流しているところもあるようです。もっとも、くすぶっていた傭兵たちは、千載一遇のチャンスとばかりに、喜び勇んで駆けつけているようですが」
ちらりとベルトルドを見ると、椅子に深くもたれかかり、腕を組んでニヤニヤしている。ああいう表情(かお)をする時は、何かとんでもない悪戯を思い浮かべているということを、アルカネットはよく知っていた。子供の頃からそうなのだ。
「満を持しての宣戦布告を投げつけられた身としては、どうなさいます?」
「ふふ~ん。失礼がないように、いっちょ派手に手袋を投げ返してやる」
そう言ってベルトルドは、子供のように無邪気な笑みを浮かべた。
「宣戦布告をされた皇国としては、挙兵に対しての大義名分については問題ありません。しかし、あのことからジャーナリストや世間の目を逸らせるためには、些かパフォーマンスが弱いですね」
「それに、兵力も大して必要ない、と幹部連中も思うだろうな」
小国がいくつか結託しているとはいえ、ハワドウレ皇国の軍事力を全て投入するほどのことではない。
「全軍を投入するためには、軍や国民の心を、もっと激しく鼓舞する材料が必要になるな」
ベルトルドは目を窓の外へと向ける。今日も快晴で空は雲もなく、鮮やかな青に染まっていた。
「あの食えないジジイのせいで、派手な演出が必要になった。軍を全て動かす必要があるから、こちらとしても、最強の切り札を出すしかない」
「まさか…」
「ウン」
ベルトルドは一息ついて、神妙な顔で腕を組む。
「リッキーに手伝ってもらう」
「…」
渋面で俯き、アルカネットは目を外らせる。いつもなら、即反対するところだが、今回はベルトルドの提案を受け入れた。
「ナルバ山で負った怪我はソレル王国の非道によるものであり、恐れ多くも召喚士を害そうとする、神に背く悪逆非道な王だ。という嘘八百を、軍にも国民にも信じてもらい、支持を高めてもらわねばならない」
「身に覚えがないと喚いたところで、証拠もないことですしね」
「それに、リッキーは本物の召喚スキル〈才能〉を持っている。召喚士は神の力を操れる存在だ。力の一端を見せれば皆興奮するだろう。完璧さ」
「…見世物にするのは、正直気が引けます」
「ああ、そうだな…」
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