片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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番外編1

メルヴィンの女・2

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「おいおい、そんな泣かなくてもいいだろうがっ」

 ギャリーは慌てて椅子から立ち上がると、キュッリッキの顔を覗き込んで頭を撫でる。

「ザカリーがあ~んナコト言うからぁ~」

「ちょっ、オレが泣かせたのかよ!」

 含みがあるようマリオンに言われ、ザカリーは焦って立ち上がる。

「ルーファス、どんな様子です?」

 しっかりのぞき見をしているルーファスに、カーティスが声を顰めて聞くと、ルーファスはぺろっと舌を出す。

「楽しそうに雑談してる」

(楽しそう!?)

 その言葉に弾かれたように、キュッリッキは大きくしゃくり上げると、心配そうに足元で見上げてくるフェンリルを容赦なく踏みつけて、談話室を飛び出していった。

「おい、キューリ!」

 ぺしゃっと潰れたフェンリルを拾い、ギャリーは急いであとを追う。

 キュッリッキは自分の部屋に飛び込むと、タンスから服を引っ張り出し、手提げかばんに詰め込むと、

「出て行くんだから!!」

 そう叫び、止めようとしたギャリーの手を振り払って、アジトを飛び出してしまった。

「おいヤベーぞ! キューリが出ていっちまった」

 なんだってええ!!! とアジトが震えるくらいの叫び声が轟いた。

「どうしたんですか?」

 皆の大騒ぎに、メルヴィンが客間を飛び出してきた。

「こんなことがバレてみろ、オレら御大に消されちまうぞ」

「おっさんのとこへ行ったのかな?」

「ンなことしたら、アルカネットにもバレちまうだろ。マジ殺されるぞオレら…」

「メルヴィンが昔のカノジョとヨリを戻すんじゃないかー、なんてぇザカリーが言うから、キューリちゃん家出しちゃったぁ~」

「だからっ、なんでオレのせいっ!」

「え?」

 蚊帳の外のメルヴィンは、訳がわからないといった表情で佇んでいた。客間を出てきていたカーリーは、苦笑を浮かべてメルヴィンの腕を軽く引っ張った。

「私が連れ戻してくるわ」

「え? だって」

「私があなたを訪ねてきてこうなったんだし、責任はとらなくちゃ」

「ていうか、オレ、訳が判ってないんだけど……」

 そんなメルヴィンに、カーリーは困ったように笑った。

「本当に鈍いところは、あなたちっとも変わってないわね」



 キュッリッキはアジトから20分ほどの距離にある倉庫街の一角で、服を詰め込んだだけの鞄を抱き締めて泣いていた。

 涙は枯れることなく、後から後から溢れてくる。

 悲しくて、切なくてしょうがない。

 こんなにもメルヴィンが大好きで、大好きでたまらないのだと再認識する。同時に、昔の恋人とヨリを戻すんだと思うと、心が痛くて引き裂かれそうだった。そして、自分はメルヴィンに何とも思われてないんだと、寂しくて悲しくて余計に涙が溢れた。

 もうライオン傭兵団にはいられない。戻りたくもないし、なにより消えてしまいたかった。

「メルヴィン…、メルヴィン…」

 メルヴィンの名前をしゃくりながら呟いていると、人の気配を感じて涙に濡れる顔をあげた。

「こんにちは」

 目の前に立つのは、メルヴィンの昔の恋人カーリーだった。

 何故彼女がこんなところに? と、キュッリッキはびっくりしたように目を見開いた。

「私のスキル〈才能〉はね、サイ《超能力》なの。だからすぐ見つけられたのよ」

 カーリーはにっこり微笑むと、肩にかけていたショルダーバッグからハンカチを取り出して、キュッリッキの涙を優しく拭ってくれた。

「ごめんなさいね。私が訪ねてきたばっかりに、あなたを不安にさせてしまって。でも心配しないで、私はメルヴィンとヨリを戻しにきたんじゃないのよ」

「え?」
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