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番外編1
クリスマス準備・3
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クリスマスのパーティーづくしを思い浮かべ、キュッリッキはひとりニコニコとテーブルに頬杖をついている。正面の席に座っているメルヴィンは、その様子を苦笑気味に見ていたが、あることを思い出して身を乗り出した。
「リッキーさん、プレゼントのことは聞いていますか?」
「うん? プレゼントって?」
顔を上げて、不思議そうに首をかしげる。
「毎年クリスマスには、このアジトを管理して、我々をお世話してくれるキリ夫妻に、各自プレゼントを用意してお渡しするんです」
「えっ、そうなんだ」
「日頃の感謝の気持ちを込めて。予算とか大丈夫ですか? そこまで高価なものを用意しなくてもいいんですが」
「お金は平気。でもアタシ、プレゼントなんて選んだことない」
プレゼントをもらった経験は、19歳の誕生日を祝ってくれたベルトルドや、傭兵団のみんなからもらったのが初めてのことで、贈った経験など当然ない。
本気で困り果てた様子のキュッリッキに、メルヴィンは優しく微笑んだ。
「これから一緒に買いに行きませんか? オレもまだ用意してないから」
「行く!」
パッと顔を明るくしたキュッリッキは嬉しそうに頷くと、財布とコートを取りに2階へ駆け出していった。
「そういうことで、ちょっと出かけてきますね。夕飯までには戻ります」
「おう、ゆっくりいってらー」
仲間たちに声をかけると、ルーファスがにこやかに手を振って送り出す。
食堂を出て行くメルヴィンを目で追いながら、「オレも行くかな」とザカリーが腰を浮かせたところで、後ろに座っていたガエルに頭を掴まれ椅子に押し戻された。
「あにすんだよっ」
「無粋なことをするな。2人っきりにしてやれ」
「オレだってキューリと2人っきりになりてーんだよ!」
「まあまあ、酒でも飲もうぜ」
ザカリーの前にビール瓶を置くと、ギャリーはにんまり笑って、手にしていたビール瓶を窓の向こうへかざした。
食堂の窓の向こうには、コートを羽織ったキュッリッキとメルヴィンの2人が、並んで歩いていく姿が通り過ぎていった。
「だああああああっ!! くそがっ」
ザカリーはワシャワシャと頭をかきむしって喚くと、目の前のビール瓶を乱暴に手に取って口に入れた。
エルダー街に隣接するブローリン街は、ごく一般家庭向けのお店が並ぶ繁華街だった。この街の一角にある広場では、毎年クリスマスシーズンが来ると、特別なマーケットが開かれる。
このマーケットには、色とりどりのペンキの塗りたくられたユニークで可愛い仮設小屋が立ち並び、中には綺麗な布を張ったテントや、クリスマス装飾で飾り立てて賑やかな小屋もいっぱいある。長方形に区切られた大きな広場には、雰囲気を盛り上げるためのクリスマス装飾もふんだんに飾られ、街路樹には僅かではあるが電飾も巻きつけられていた。夜には点灯され、人々の目を楽しませるだろう。
みっちり並ぶ棚には、クリスマス用の室内室外飾りや、おもちゃ、プレゼント向けの品々、お菓子や珍しい食材などが並び、美味しそうな匂いを漂わせる露天もいっぱい軒を並べていた。
マーケット広場の入口に立って、キュッリッキは目をキラキラさせた。
「こんな場所があったんだね」
「ええ。見て歩くだけでも、結構楽しいですよ」
「リッキーさん、プレゼントのことは聞いていますか?」
「うん? プレゼントって?」
顔を上げて、不思議そうに首をかしげる。
「毎年クリスマスには、このアジトを管理して、我々をお世話してくれるキリ夫妻に、各自プレゼントを用意してお渡しするんです」
「えっ、そうなんだ」
「日頃の感謝の気持ちを込めて。予算とか大丈夫ですか? そこまで高価なものを用意しなくてもいいんですが」
「お金は平気。でもアタシ、プレゼントなんて選んだことない」
プレゼントをもらった経験は、19歳の誕生日を祝ってくれたベルトルドや、傭兵団のみんなからもらったのが初めてのことで、贈った経験など当然ない。
本気で困り果てた様子のキュッリッキに、メルヴィンは優しく微笑んだ。
「これから一緒に買いに行きませんか? オレもまだ用意してないから」
「行く!」
パッと顔を明るくしたキュッリッキは嬉しそうに頷くと、財布とコートを取りに2階へ駆け出していった。
「そういうことで、ちょっと出かけてきますね。夕飯までには戻ります」
「おう、ゆっくりいってらー」
仲間たちに声をかけると、ルーファスがにこやかに手を振って送り出す。
食堂を出て行くメルヴィンを目で追いながら、「オレも行くかな」とザカリーが腰を浮かせたところで、後ろに座っていたガエルに頭を掴まれ椅子に押し戻された。
「あにすんだよっ」
「無粋なことをするな。2人っきりにしてやれ」
「オレだってキューリと2人っきりになりてーんだよ!」
「まあまあ、酒でも飲もうぜ」
ザカリーの前にビール瓶を置くと、ギャリーはにんまり笑って、手にしていたビール瓶を窓の向こうへかざした。
食堂の窓の向こうには、コートを羽織ったキュッリッキとメルヴィンの2人が、並んで歩いていく姿が通り過ぎていった。
「だああああああっ!! くそがっ」
ザカリーはワシャワシャと頭をかきむしって喚くと、目の前のビール瓶を乱暴に手に取って口に入れた。
エルダー街に隣接するブローリン街は、ごく一般家庭向けのお店が並ぶ繁華街だった。この街の一角にある広場では、毎年クリスマスシーズンが来ると、特別なマーケットが開かれる。
このマーケットには、色とりどりのペンキの塗りたくられたユニークで可愛い仮設小屋が立ち並び、中には綺麗な布を張ったテントや、クリスマス装飾で飾り立てて賑やかな小屋もいっぱいある。長方形に区切られた大きな広場には、雰囲気を盛り上げるためのクリスマス装飾もふんだんに飾られ、街路樹には僅かではあるが電飾も巻きつけられていた。夜には点灯され、人々の目を楽しませるだろう。
みっちり並ぶ棚には、クリスマス用の室内室外飾りや、おもちゃ、プレゼント向けの品々、お菓子や珍しい食材などが並び、美味しそうな匂いを漂わせる露天もいっぱい軒を並べていた。
マーケット広場の入口に立って、キュッリッキは目をキラキラさせた。
「こんな場所があったんだね」
「ええ。見て歩くだけでも、結構楽しいですよ」
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